京都栄養士専門学校 栄養士科 第26期生 児玉裕士朗 戸沢 幸徳 西山 大樹 池森 恵 鵜飼真千子 奥田 素 ○小林 由佳 杉本久美子 中西 瞳 鰐渕 早紀 指導教官 北村新藏
【目的】 食品は生命を維持していくうえで、必要とするものであり、次のようなことが大切である。 @美味しいこと。 A安全であること。 B栄養価があること。 C扱い易いこと。 D安価であること。 E嫌悪感がないこと。 特に、AとBが生命維持という本質のためには重要である。 この食品が、可食性を失って変質(腐敗)して、@、A、BやEが損なわれては重大な問題である。 そこに、食品を「保存する」ということの意義がある。 本研究は、食品の「保存」に焦点をあて、その原理からその対策としてどのような方法があるのかを調べることを目的 とした。 【方法】 食品を変質させる主な原因は腐敗、変敗にあり、その主な原因は微生物にあるため、食品の保存法とは結局、微生物の 活動を止める方法となる。 したがって、われわれは、主に食品衛生学関連の成書および関連報文等から「食品の保存」についての項を中心にその 内容をまとめた。 【結果および考察】 変質は先にも述べたが、食品中の微生物、酵素、また酸素や光などの作用による。 そして、食品衛生において、実際的に最重要な実務は微生物による変質の防止管理である。 一般に、食品中に生菌数が食品1g中107以上、揮発性塩基窒素量が30mg%以上になると初期腐敗段 階に達したという。食品の変質を防止するための諸々の手段と原理を表−1に示した。 表−1から食品の変質を防止するためには、変質の原因となっている微生物の繁殖をできるだけ抑えることが重要である ことがわかる。 そのために、微生物を食品に付着させないこと、付着してもその発育を阻止することが、その原理となっている。 その具体的な手段として、表−2に示したような物理的方法や化学的方法およびその併用が用いられている。
表-1:腐敗の防止と保存の原理 内 容 原 理 保存方法の例 T.殺菌または除菌 存在する微生物の消去
または除去・加熱による殺菌、滅菌
・紫外線、放射線の照射
・ガス殺菌、物理的殺菌
・膜技術の応用U.生物活性の低下 微生物の生育を不能に
する・乾燥、冷凍冷蔵
・塩蔵、糖蔵、酸添加
・保存料、殺菌剤の添加
・ガス置換、薫煙
・虐待試験V.隔離 微生物を食品から分離
する・缶詰、ビン詰
・紙、アルミのパックW.併用または新方
法論上記の原理の併用また
は新技術の採用・濃縮、塩乾、練り物
・発酵
・物質移動論の応用
・その他食品の保存、すなわち腐敗を防止する一番良い方策は、腐敗の原因の微生物が全く付着していないのが理想であるが、 それは不可能である。 食品の水分活性の低下は、微生物の発育を遅らせ、または、ストップさせる働きをする。 従って、食品の保存とは、微生物が少し付着していても、食品の水分活性を低下させることが重要である。 その水分活性(Aw)は、次式で与えられる。
表−2:食品の変質防止の方法 方法 諸々の具体例 物理的方法 ○冷凍 ○冷蔵
○電磁波(紫外線、放射線)
○加熱(低高温)
○脱水(乾燥)化学的方法 ○食品添加物
○食塩 ○酸 ○砂糖その他 ○薫塩 ○缶詰、ビン詰
○真空包装
○脱酸素剤
Aw=P/P0
P :食品の水蒸気圧
P0:純水の水蒸気圧
実用される変質防止法は、表−1、2にまとめたように、冷蔵、冷凍、脱水(加熱乾燥)、紫外線・放射線照射射、塩 蔵、糖蔵や真空包装等である。 これらの諸方法は、水分活性、pH、浸透圧、ガス分圧、光線、放射線や化学物質の作用に基づくもので、これらを単 独あるいはその複合作用によって、食品の変質が防止されていることがわかる。 以上述べたように食品を最良の状態で保存するため、その原理を充分に理解し、取り扱っていくことが重要であると思 われる。