世界における魚食文化について


      久保 紀子 下中 麻里 武田有紀恵 西川 要子 橋本 晴美 古川 博義
      松本香代子 皆川 花純 山本 貢司 吉岡 真也 若林 依子

      指導教官 北村 新藏

 【目的】
     一時、魚離れが問題となっていましたが、最近になって、魚を食べる日本人
    には心筋梗塞や狭心症といつた成人病が比較的少ないことや、魚油中に含まれ
    ている高度不飽和脂肪酸の降コレステロール作用が注目されるにおよんで改め
    て魚食が見直されています。
     また、魚介類は、世界各地で広く食用されていますが、その調理法において
    は様々であり、嗜好や民族や地域や宗教等によっても異なっています。
     本研究では、世界の魚介料理の資料を基にして、栄養面を含めて魚食文化を
    調理方法面から考察したい。

 【方法】
     資料は、タイムライフ刊「世界の料理」と中央公論社刊「韓国の家庭料理」
    を用い、掲載されている魚介料理をすべて選び出し、その特徴および栄養面ま
    た、調理法を魚と肉の種類、ソースの種類、香辛料・調味料の種類から考察し
    ました。
     また、魚食文化については、長崎福三著「肉食文化と魚食文化」(農村漁村
    文化協会刊)を、栄養・科学面では、成瀬宇平著「魚料理のサイエンス」(新
    潮社刊)を参考としました。

 【結果および考察】
     魚介類は、種類も多く筋肉中の成分にしても他の獣肉類とはかなりの違いが見
    られます。
     その中でも多価不飽和脂肪酸、特に、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA
    (ドコサヘキサエン酸)やタウリンが顕著に含まれてい入ることが分かります。
     EAPやDHAは、頭の働きや老化防止に役だった生理活性効果やLDLの減
    少が報告されています。
     また、タウリンは肝臓の働きを盛んにし、疲労回復や視力増進に効果があると
    言われています。
     このように、魚介類には、他の食品群とは少し異なった、しかし、我々人間に
    とっての健康に必要な栄養素を多く含んでいることが分かります。
     私たちは、世界6か国(日本、東南アジア、インド、スペイン、スカンジナビ
    ア、韓国)の魚食文化について調べたところ、それぞれの国によって魚食文化に
    特徴があるという結果が得られました。
     まず、日本とよく似た魚食文化を持つ国という点からみると韓国が挙げられま
    す。
     これは、゛刺身゛という調理法からそのように言えると思われます。
     ゛刺身゛という調理方法は、日本と韓国を除いた他の4か国では見られない独
    特の調理方法です。素材の中に含まれている栄養分をそのまま体内に取り入れる
    ことができる調理方法は、できる限り受け継いでいかなければならないと考えら
    れます。
     他の4か国をみてみると、必ず共通している食材料として、多種類の香辛料が
    認められます。
     しかし、日本では、香辛料を用いた調理法があまり用いられていないことが分
    かります。
     これは、大陸と異なり、国際的な貿易港を持たなかった島国(他の4か国は歴
    史上で貿易港として有名な港がある)と言う点と四季のある比較的温暖なモンス
    ーン気候との差異等が考えられます。
     また、日本では、゛塩焼き゛料理が多いのに対して、東南アジアを含めて他の
    国々では、゛揚げる゛、゛炒める゛、゛蒸す゛といった調理法が多く、また、デ
    ンプンを用いたソースでこってりした味をだしている場合が多いようです。
     しかし、国々よって、調理法、魚介類の種類や味付け等に違いがあっても、"魚"
    料理における栄養という面から考えると、特に違いはないと思われます。
     現在、雑食文化であると言われて久しく、その中で、地域に根ざした魚食文化
    を守っていくと言うことも、「文化」ということを考え合わせる上で、重要では
    ないかと思われました。

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