医療過誤について




             京都栄養士専門学校 医療秘書科 第16期生
               市野 麻衣  岩屋 裕子  金子 真弓  田中 裕美  玉鉾 祥子 ○福崎裕美子
               藤田 和美  布施 順子  前田 愛子  水沼 陽子  吉田 奈央  脇坂美奈子
             指導教官
               北村 新藏

 【目的】
    最近、病院や診療所といった医療機関で人命に関わるような医療ミスが新聞紙上をにぎわしている。
    ほんの一瞬の容器の取り違えや見落としといったことが原因して、あってはならないことが起こっている。
    そこで、本研究では、過去に発生した「医療過誤」の報告から、個々の事例を調べ、その原因と考えられる事柄を列挙し、その対策と
   してどのようにすれば、この「医療過誤」が未然に防げるかについて、将来、医療機関の事務部門に勤務する医療秘書の立場から、考察、
   検討をすることを目的とした。

 【方法】
    過去に新聞に掲載された過去1年間のできるだけ新しい医療事件、医療事故・医療問題に関する記事等を情報源とした。
    また、インターネット上に流れたホームページ(平成12年11月現在)からも資料を収集した(表)。

表:医療過誤の病例報告
診療科件数
産婦人科72
小児科20
外科27
麻酔科
整形外科11
美容科
耳鼻咽喉科11
内科47
眼科
皮膚科
 【結果および考察】     「医療事故」は、医療に関わる場所で、医療の全過程において医療従事者が被害者である場合も含み、発生する人身事故一切を包含す    る言葉として使われ、「過失のない医療事故」と「過失のある医療事故」に分けて考える必要がある。     「医療過誤」とは、医療の過程において医療従事者が当然払うべき業務上の注意義務を怠り、これによって患者に傷害を及ぼした場合    をいい、過失の有無については、事例によっては、必ずしも明確でない場合がある。     エラーの起こる状況について、F・H・ホーキンスは、「人間のエラーの確率を単純な作業で1/100、整備された環境での作業で    1/1000」と述べている。     医療過誤を防止するためには、医療行為に関わる個々の医療従事者の努力が重要であることはいうまでもないが、高度に細分化、複雑    化する医療の環境のなかでは、医療従事者個人の努力に依存した事故防止のみでは対応に限界があり、組織的な事故防止対策、いわゆる    「リスクマネージメント」の考えを導入することが必要である。    「リスクマネージメント」はもともと産業界で用いられた経営管理手法で、1970年代半ばに米国で医療分野に導入された。     日本では、平成10年に(社)日本医師会の医療安全対策委員会により取りまとめられた「医療におけるリスク・マネージメントにつ    いて」のなかで、その考え方が紹介されている。     そのなかで、医療施設内の様々な部門別の取り組みとして、医療施設の管理者、医師および看護職員については、つぎのようなことが    考えられる。     医療施設の管理者として、        (1)事故防止に関する理念を持っていること。        (2)事故防止に関するリスクマネージメント等の新しい知見を受け入れる柔軟性があること。        (3)事故防止に取り組む強い意思と実行力があること。     医師の取り組みとして、        (1)常に最新の知識・技術を身に付け、診療の過程で過誤がないように心掛けること。        (2)スタッフや患者が気軽に診療内容について確認できる雰囲気づくりに努めること。        (3)自分の担当する患者については、最終的な責任を負っていることを認識する。        (4)看護職員等に口頭のみでの指示を避け分かり易く正確に伝えること。     看護職員の取り組みとして、        (1)常に自分の行為に誤りが無いかどうかの意識を持つ。        (2)患者の観察やコミュニケーションに努め、異変等は直ちに医師に報告する。        (3)医師からの指示は、単に機械的にこなすのではなく、指示の意味や目的について考えながら行動する。(医師のミスは有り          得るということを念頭に置いておく。)     さらに、米国の合同医療施設評価機関(JCAHO)は1996年から、危険因子を事前に排除するセンチネル・イベント管理を提唱し    ている。     私たちは将来の医療秘書として、医師、看護職員と管理者間相互の連携が密になるように、また、患者との応対において、病院組織を    一つの有機体と捉え、その間隙を少しでも埋められるようレセプト作成、院内文書処理や病歴管理等の事務部門の中で、以上述べたこと    を念頭において頑張っていきたい。
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