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さくらの危機
さくらの危機

「太平洋と日本海を桜でつなごう」という佐藤良二さんの悲願は達成されています。
生涯に2000本の桜を植えられたのですが、その場所や存在は総て明らかではありません。
私が、その話を知ったのは亡くなって七年後のNHKのTV放送「桜紀行ーもう一つの旅」だった事は既に書きました。
平成五年、新装出版された「さくら道(初版)」の記述を辿って、名古屋から岐阜県境(木曽川)までの「佐藤桜」を探しました。編著者の中村儀朋さんは、TV放送三年後の昭和六十二年に初版を出されているようですが、その「初版はしがき」が、この本には紹介されています。
TV放送に出てきた、第1号桜は、名古屋市千種区の中央線「千種駅」にあった国鉄バス名古屋営業所で咲いていました。
民営化により「JR東海バス」としての営業となり現在は中川区小本に会社があります。
かっての臨港線「あおなみ線(名古屋臨海高速鉄道)」小本駅の近くで高架を走る電車から建物・バスが見えます。
記念すべき「1号桜」は、千種から現在地へ移植されたのですが、土との折り合いが悪かったのか活着せず枯れてしまいました。現在の桜は良二さんの姉、尾藤てるさんが改めて白鳥から二世として持参した「桜」と「荘川桜の実生木」が植樹され職員の皆さんの手入れで立派に成長しています。
「ウルトラマラソン270K」は、そこがスタートで、最終時には300人を超えるランナーとサポーターが号砲で出発しました。「JRバス」は、荘川桜チェックポイントで、止む無くリタイアしたランナーを金沢まで送り届けました。
本に出てくる多くの桜は、なかなか見付かりませんでした。1000本目の「名古屋城八重桜」は西北隅櫓の近く御深井丸(おふけまる)にあります。私が最初に行った時は、手書き文字で高札が建っていました。この木は周囲に大きな木が有り年数の割には大きくありません。当時は、その辺りがイベント地域でしたが、今はお城の東「二之丸」にイベントは移転し、あまり人は行きませんが樹林の庭園整備は行き届いています。一時、高札が無くなりましたが、今はプリント文字の新しい物が建っています。近くに白鳥中学校生徒の桜が植樹されています。
この一帯は「本丸御殿」の作業場になるので一部立ち入り規制になります。
学校の校庭に植えたというのは「枇杷島小学校」です。旧22号線沿いの西枇杷島小学校を訪ねましたが、そこではなく名古屋市西区の学校でした。校舎北に「ソメイヨシノ」が数本大きく育っています。
稲沢市「赤池の八重桜」は既に紹介しました。本にある「機関区」に植えたというのは稲沢機関区だと思いますが訊ねていません。
「一宮裁判所枝垂れ桜」は、本にはありませんが、NHKの放送には「太平洋と日本海をつなぐ会」という佐藤さん手書きの標柱が撮影されています。「山桜」には触れていませんが、裁判所を訪ねた時、植樹に立ち会った庶務課長さんが同時に植えたと話されました。
向かい側のお旅所境内も「何本かはそうではないか」と言う事でしたので、永年、町内会長をやっておられる人に聞いた所「二人の人が植えさせて欲しい」と行って来られたので「適当にどうぞ」と言ったというのですが、佐藤良二・高三さんだったかの確証は有りません。
木曽川町はTV放送では「クラボウの桜」が出てきます。「交番」というのは黒田(消滅)で、近所の人の証言がありました。「クラボウ桜」は、大型ショッピングセンター開業で消滅のピンチでしたが「紡績敷地内に沢山ある緑を出来るだけ保存しよう」という要望で移植されました。保存に関わられた方を存じていますので近くお話を伺います。
木曽川黒田交番の「ソメイヨシノ」は、交番新築の為切られました。
稲沢赤池「八重桜」は初めて見た時、既に大きな枝が折れていましたが、高さ3メートル程あり沢山花を咲かせていました。本の「地蔵様」というのはここです。「赤池古蹟」の由来を記述した碑が建っています。旧22号線開通時に池は消滅したとの記述があります。地元の方の管理地のようで四月に祭事が行われます。すぐ近くに油田という「真清田祭神降臨地」という古墳があります。その関連もあるかもしれませんが詳細は不明です。道路側に植えられた木が生長し立ち入りの妨げになったのか奥に植え替えられました。時期が悪かったのか、根が少なかったのか、枯れが進み、主木は枯死したと思われましたが新しい枝が発生、まだ1メートルにも達しませんが十輪ほどの花を付けるまでに復活しました。時間を掛ければ大きく成長するでしょう。
「裁判所枝垂れ桜」が枯死の危機になっています。2007年に大きな活性作業が行われました。「裁判所桜大手術」として紹介しました。木は半分になりましたが活性化したと思われました。2008年になって再び枝枯れが大きく進行厳しい状態になっています。
「一宮裁判所」は昨年来、庁舎が新築され四月完成しました。
「佐藤桜」は、旧庁舎正面にありますが旧庁舎撤去が五月から始まり秋までには更地になります。
東海財務局管理地であり跡地利用に伴ない「桜」がどうなるか微妙な事になっています。
まだハッキリしないので申し上げられませんが情報では「山桜」は保存。「枝垂れ桜」は跡地が全面駐車場になるか一部建物が出来るかによって状況が変わる立場になっています。
木の状態は芳しくないですが、樹木医の診断では数年掛ければ復活の可能性ありというカルテだそうです。

五月十九日「枝垂れ桜」は残念ながら枯れたようです。新しい葉が少し出ましたがそれも枯れました。樹体そのものが枯死したと思われます。根元から伸びている「ひこばえ」は「台木(山桜)から発生したものだろう」というプロの方の話です。「枝垂れ桜」は見事な花を見せてくれましたが三十年で姿を消します。
多くの写真やビデオに姿を残しウルトラランナーには新緑の姿の前で憩いの思い出を脳裏に残しました。
「山桜」は残ります。跡地の状況によっては代わりをという事になれば「荘川桜(実生)」という可能性の期待も考えられます。


今年(2009)三月に読売TV系でドラマ「さくら道」が放送されました。緒方直人、薬師丸ひろ子の佐藤良二夫妻で製作され関連番組も放送されました。
放送後、反響があり、このHPに「佐藤桜」の問い合わせがありました。稲沢の樹木のプロの方からの問いに状況をお知らせしました。「今まであまり関心はなかったが出来る範囲で見守りたい」という有り難い連絡がありました。マラソンランナーは関心はあっても全国バラバラの人達ですから地元の人達が観察の目を持って頂けることは心強い事です。
「赤池桜」は大丈夫と思います。「お旅所桜」は、管理者により、年一度除虫作業はされますが、施肥・土壌の手入れはされていません。枯れた木・枝を切除しますが衰弱・枯死が進行しています。
地球温暖化、経済不況が大きくいわれるこの頃、使い捨ての消費経済を振り返り、自然環境、人間関係を大切にして心豊かに日々を過ごす気持ちを持ちたいと思います。

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