勤評反対訴訟が新たな出発

新勤評反対訴訟を拡大しよう!
教育の国家支配を許さない3.25集会報告

325集会

3月25日、約160名の参加者を得て、「新勤評反対訴訟を拡大しよう!教育の国家支配を許さない3.25大阪集会」が開催されました。改悪教育基本法の具体化である教育関連三法案が国会上程されるなか、かつ第2回法廷を4月3日に控えるという緊迫した状況の中で今集会は開かれました。

裁判勝利に向け、原告団の結集と拡大を

訴訟団団長が最初に、参加者への日頃の支援を感謝し、裁判は準備の段階から白黒を決する段階に入ったこと、またすでに裁判に提出した陳述書はいずれも評価・育成システムの反動性を指摘するものであることを指摘し、原告団の新たな結集と拡大を目指すとの力強い挨拶をしました。

大内裕和氏講演--教基法改悪以後初めての再闘争宣言

大内裕和氏

ついで今集会のメイン・イベントである大内裕和氏の講演が行われました。題して「教員政策の動向と教育の国家支配」。講演の詳細は後日の講演録等に譲るとして、かいつまんだ報告をします。

大内氏はまずこの講演が自分にとっては教基法改悪後の最初のものであり、再闘争宣言であると力強く述べた後、改悪教育基本法の問題として、「個人の価値の尊重」が「国家にとって有用な人材育成」に改悪された事等を指摘しました。

教育再生会議第一次報告批判

さらに本日の論議はここから始まる、として「教育再生会議第一次報告」の批判から入りました。まず今回の報告が五つの特徴を持つことを暴露しました。第一に、新自由主義教育プランの一環としての「ゆとり教育」から学力向上へと、新自由主義のいわば第二ステージに入ったこと、次に「いじめ対策」が子どもの排除につながること、第三に「教員の質の向上」なるものが教員の序列化と排除を促進するものであること、第四に、学校・教育委員会に新自由主義を貫徹させることによって、教育システムの「改革」をなすこと、第五に社会全体で子どもを統治する、ということです。

大内氏はことに一点目と二点目を、今4月末に実施されようとしている全国学力テスト、さらに再生会議のいじめ問題に対する対応を問題にしながら批判しました。かつての勤評の後で全国学力テストが実施されたことを例に引きながら、生徒に差別と選別をもたらす事態を生み出すために、まさに教員にも差別と選別と排除をもたらす「評価・育成システム」、免許更新制が導入されることを暴露しました。

教職員評価・育成システム批判--「国民の教育権論」を超えた新たな対抗理論を

このシステムは改悪教育基本法と教育再生会議第一次報告の具体化であり、学校を「経営体」へ転換するものです。これには従来と異なる新しい対抗理論が必要です。ことに教科書裁判を通じて獲得された教育論はいわゆる「国民の教育理論」というものでした。ある時期この理論は有効性を持ちましたが、この論では「教職員の権力性」を問題にでき得ず、臨教審以降展開した「国民」の階層差・格差を問題にできません。「国家からの自由」という論では新自由主義にも対抗でき得ません。

「どうしたらよいか」。大内氏は、よりよい教育実践を可能とする条件としての「教育行政からの自由」を主張します。評価・育成システムとリンクした「教育実践」がダメであることは言うまでもありません。次に生徒を評価する存在としての教職員の「権力性を踏まえた上での教育実践、教育運動の積み重ね」を唱え、すべての人々に開かれたものとしての「学校、教育の公共性」から新自由主義を批判し、「低階層に意義ある存在としての公立学校」の意義を強調します。

「格差と改憲」を争点とした闘いの構築を

臨教審(1984)以降1995年の日経連による「新時代の『日本的経営』」での長期雇用をなくすとの提言を経た1990年代後半以降の「ゆとりと個性」の教育改革とは、日本に格差社会をもたらし、「自衛軍」に入らざるを得ない若者、派兵要員を作り出そうとするものでした。

それでは今後の闘いはどのようなものとなるか。大内氏はまさに「格差と憲法」を巡るものだと言います。それは、「改憲」を党内部で問題にしたくない小沢民主党が言う「格差是正」でもなく、「格差」を問題にしたくない安倍内閣の「改憲」でもありません。両者のいずれかではなく、まさに「格差と改憲」こそを問題にしなければならないということです。

闘争の実践・理論両面に及ぶ質問と回答

以上のような講演に対し、現実の国会政治に対してどういう対応を取るべきか、全国学力テストの生活・家庭環境調査、また親の教育権をどう考えるか、兼子仁氏以降の教育論の発展はいかに、選挙闘争と裁判闘争にどう取り組めるか、全国連絡会をどう継承させていくか、教員評価の客観性をどう考えるか、といった質問がなされました。大内氏はこれらを包括して、教育の専門性とか保護者の教育権とか、ある条件のみで捉えるのではなく、どういう教育権を制限するのか、どれも大事で何かが絶対であるというのではないこと、財界による安倍政権下の改憲プログラムが明らかな今、積極的に「格差と改憲」への反対を立論すべきだと答えました。

☆2次提訴に向けた裁判参加への呼びかけ・今後の方向性

次に事務局長から、私たちがどうして裁判と言う形でシステムに対する問題提起をなしたのか、まず経過が語られました。ついで組合、職場、社会全体に訴訟を明らかにし、教職員があきらめることなく何ができるのか、教職員の参加者・支援者を増やすことが第一であり、そのためどの組合に所属するかの有無はなく第2次提訴の原告になってほしいこと、民事提訴を6月、7月に考えること、そしてリーフ5万人発送へのカンパが訴えられました。

職場のリアルな問題から新たな理論、実質審理へ

次いで冠木弁護士から、訴状は兼子仁氏の論に基づいているが、さらに今の職場状況のリアルな問題の中でシステムが悪いのだ、権利の侵害だ、を明らかにする。そのため陳述書を書くのに苦しんでほしい。リアルな問題の中でどうしていけないのかのこちらの主張を早く出して、実質の審理を進めたいとの提起がありました。

裁判闘争の前進のために多様な議論

最後に討論の時間で計10人の方から発言がなされました。それぞれ素晴らしいものでしたが、逐一は紙幅の都合で書けません。容赦下さい。発言の要旨のみ紹介します。

--評価システムそのものを問うことをしたい(小学校)

--子どもを派兵要員にさせるな。職場の一番「弱い」立場の人々と一緒に闘いたい(中学校)

--気付かぬ所でシステムが機能してきている。裁判闘争を力強く進めよう(高校退職者)

--上にへつらう校長。新任は段々やる気をなくす。勤評の歴史的教訓に学ぼう(小学校)

--弁護士会から府教委に要望書が出ました。同じ行動をしていても成績が悪かったら別のマイナス評価になるという、学力テストの評価方法に驚く(中学校)

--ただでさえ手一杯の職場に、システムが導入されるのは教職員をむち打つもの。提出している人も校長に不信感を持っているのがわかった。若い人に希望を持たせないシステムをつぶしたい(中学校)

--保護者、市民を加えるような枠組みの裁判に出来ないものか。全国学テで大阪市と交渉。市教委は学校が結果を公表するのは止められないとしている。個人別もどうなるか。無理矢理やらせる評価システムをつぶしたい(小学校)

--開示面談の結果について。Aを付けすぎた校長は研修でAをあまり付けるなと言われたとか。去年のようにAを付けると大阪府の財政が破綻するなどという。同じ仕事をしていても縁の下の力持ちの人はB。定時に帰るのと遅いのと一緒にできない、などと無茶苦茶。未提出者はいるのに大っぴらに議論できない雰囲気。裁判に小中の人が加わってほしい(中学校)

--ゆとりのなさの中で参加してきた。学級崩壊を起こした人はC評価。タイムスケジュール通りに出す人はB。不提出で来たが、教頭、校長、教頭としつこい説得、職務命令を出すとのニュアンスに一旦負けて出した。しかし、どうせなら、のびのびと「自己犠牲」を払いたいから、今は出したくない(中学校)

--自分はNOの会に所属している。日教組大阪狭山支部は熱心に勉強しているが、反対訴訟のことはあまり知らないようだった。知らせると資料を受け取りに来た人も一部いた。訴訟を広げたい(中学校)

集会は以上のように2次提訴に向け、新たな問題提起と決意が漲るものでした。