ブラッシングとコートの役割
キキはかわいいコートをたくさん持っています。これはベストのようなデザインではなくて、4つのそでがついていて、ちゃんと4本の手足をとおすようになっています。コートはおしゃれや防寒のためではなく、ちゃんとした目的があります。
また、毎朝のブラッシングも、美人になるためだけでなく、盲導犬としてのマナーを守るためにしています。
『盲導犬の使用者となって、朝目覚めていちばんにする仕事は、キキのブラッシングとなった。朝のブラッシング、これを人間に例えると「朝シャン?」である。
まずはラバーブラシを使って短い毛をブラッシング。次は長い毛用の櫛形金属ブラシ、両目グシ。豚毛ブラシで艶を出して、ノコギリブラシで毛を整える。最後に熱いタオルで全身をふいてやり、ブラッシング終了。シャンプーは一か月に一回。アトピーキキは十日に1回から一週間に1回、風呂場でシャンプーする。毛ができるだけ落ちないように、清潔な身体であるようにと努める。
毛が落ちないようにと努力できるもう一つの方法として、コートを着せる。盲導犬はペットの入室が許可されていない多くの場所で入室を許可されている。衛生上気をつけなければいけない病院やレストランに入室する際、ホテルに宿泊する際には、必ずコートを着せる。乗車後、毛が残ってしまうタクシーでも、必ずコートを着せる。
盲導犬を理解し、入室を許可してくれているところに、できるだけ迷惑をかけないように、私たち盲導犬のユーザーは、できる努力をしなければならない。講演の機会があるときも、もちろんコートを着せ、このコートの意味を話している。
コートを着せることにはしっかりとした目的がある。けれどどうせコートを着せるのなら、不釣合いなものより似合うものを、ドン臭いものよりおしゃれなものをと、愛情をこめてボランティアの方が作ってくれる。
コートを着せていると「まあ、かわいい」の声がいちばん多い。コートがみなさんの盲導犬に対する好感度をアップさせているということも、コートの果してくれている大きな役割だ。
目立ちたがり屋のキキは、ボランティアのみなさんの愛情を知ってか知らずか、通行人の注目度をアップさせることに快感を覚えているらしい。』
「盲導犬キキ 風のように光のように」(かもがわ出版)より
撮影 上野美都江