[ヨーロッパ−近世]
テューダー朝イングランドの政治家で、
エリザベス女王の「スパイマスター」と呼ばれる人物。
ワイン製造業者の息子として生まれたが、
父が没した後母が男爵と再婚し、連れ子として育った。
狂信的カトリックのメアリーが即位すると、
熱心なプロテスタントであったウォルシンガムは法学生としてイタリアへ留学し、
人脈を広げた。
エリザベスが即位すると帰国し、
その側近ウィリアム=セシルの支援を受けて庶民院議員となった。
その後はフランス大使として外交を担当しつつ、
裏でプロテスタントを支持し、
一連の宗教戦争にも関わった。
大きな成果は挙げられなかったが、
その情報で女王の信頼を勝ち得、大臣となった。
その後死去するまで閑職と言える玉璽尚書となったが、
やはり諜報機関の元締めとして女王のために情報収集を仕切っていた。
スコットランドの元女王メアリーが
エリザベス暗殺計画に関わっていることを察知し、
このことがメアリー処刑の決め手となった。
エリザベスを裏から支え対スペイン勝利の影の功労者となったウォルシンガムだが、
諜報機関に私財を投じていたため、
その死後には莫大な借金が残されていたという。
エリザベスの懐刀・忠臣と呼べるウォルシンガムだが、
その仕事の性質のためか冷酷とも言える手口のためか、
女王には悪党と思われあまり好かれていなかった。
女王が支援してくれなかったことも莫大な借金の理由の一つと言われている。
後世にもそのように捉えられることが多いようだが、
こういった人材も国家の発展には必要なものである。
ウォルシンガムは人に評価されにくい仕事を生涯やり遂げたと言えよう。