アルブレヒト=フォン=ヴァレンシュタイン

[ヨーロッパ−近世]

三十年戦争の頃の皇帝側の傭兵隊長。 ボヘミアのプロテスタントの小貴族の出身であったが、 カトリックに改宗しパドヴァ大学に遊学した。 しかし暴力沙汰で退学し、傭兵に転身した。 その後裕福な未亡人と結婚し、その資金を元手に金融などで成功し、 大傭兵隊長となった。 三十年戦争が始まるとその兵力と自身の軍略で勝利を重ね、 同時に敵領地の没収や買い漁りで大貴族へとのし上がった。 さらに占領地に対して略奪をしない代わりに徴税し、 近代的常備軍の先駆けとなった。 一方この徴税は批判も招き、 ヴァレンシュタインが「成り上がり」であることもあって諸侯の反発を招いた。 そうした大貴族の反発に加え、派兵を拒否して皇帝にも不信を持たれたため、 司令官を解任され領地へと戻った。 その後皇帝軍は司令官のティリー伯がスウェーデン相手に敗死して追い詰められ、 再びヴァレンシュタインが起用された。 しかしこのとき率いたのは自身の兵ではなく皇帝軍であったこともあり、 以前のような大活躍とは行かなかった。 スウェーデンとのリュッツェンの戦いではグスタフ=アドルフ王を戦死させたものの、 戦いには敗北した。 その後独自に和平しようとしたことから反逆を疑われ、 皇帝の命令で暗殺された。
ヴァレンシュタインは軍事面もさることながら 略奪に代わる徴税システムを編み出し、 これが後の常備軍の先駆けとなった。 その手腕は皇帝軍随一でグスタフ=アドルフに対抗できるほとんど唯一の将軍だったが、 成り上がりであるだけでなく野心家で独断専行なのが災いし、 大貴族や皇帝に危機感を抱かせ暗殺という形で世を去った。 どことなく中国の呉起や商鞅を彷彿とさせられる。

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