[ローマ帝国]
五賢帝の一人。本名マルクス=ウルピウス=トラヤヌス。「最良の皇帝」の異名を持つ。
ヒスパニア(スペイン)のコローニア(植民都市)の出身で、属州出身の最初の皇帝でもある。
軍功を重ねドミティアヌスに見出されて上ゲルマニア総督となり、
さらにその軍事力からネルヴァに後継者に指名されて皇帝に即位した。
彼は歴代皇帝の中でも最も精力的な皇帝の一人で、公共事業や外征を積極的に行い、
ローマを大いに発展させた。
ドナウ川国境を脅かしていたダキアを除くため、
ローマ帝国歴代の方針を転換してドナウ川を超え、
ダキアを征服して属州とした。
また晩年パルティア遠征を企て、首都クテシフォンまで攻略したが、
征服地で内乱が頻発、鎮圧と再侵攻のため進軍中に陣中で没した。
彼の代にローマ帝国領は最大となったが、
次のハドリアヌスの代には新規獲得領を捨てざるを得ず、
帝国の安定もハドリアヌスに委ねられた。
最後のパルティア遠征は失敗に終わったため「最良」の皇帝というのは疑問が残るが、
「偉大」な皇帝であったのは間違いない。
彼は外征も積極的であったが、内政も疎かにせず、
総督への訴えが頻発したビティニアの総督に小プリニウスを抜擢し、
問題解決に努めた様子が書簡に残っている。