蒸気機関(じょうききかん)

[ヨーロッパ・全世界−近世〜現代]

蒸気の持つ熱エネルギーを機械的仕事に変換する機関である。 蒸気を熱する熱源と組み合わせて熱機関(外燃機関)を構成する。 ピストンを往復運動させる往復型と羽根車を回すタービン型があり、 特に往復型は産業革命を推し進める中核となった。 蒸気機関のアイディアは古代からあったが、 初めて実用的な機関を作ったのはイギリスのニューコメンである。 鉱山の水を汲み上げるポンプの動力として往復型が作られたが、 性能は低く熱効率は1%に満たないものであった。 同じイギリスのワットが復水器を設けた改良品を生み出し、 真に実用に耐えられるものとなった。 ワットはさらに往復運動を回転運動に変換する機構も生み出し、 ポンプ以外の紡績などの機械にも使えるようになり、 産業革命を推し進める原動力となった。 ワットは安全性のため高圧化に反対していたが、 その特許が切れると高圧蒸気機関が作られてさらに性能が向上し、 蒸気船・蒸気機関車が生み出され、 瞬く間に普及していった。 なお蒸気自動車も作られたが、 重い蒸気機関では実用性が低く、 実用的な自動車の普及は内燃機関が生まれた後のこととなった。 19世紀後半に蒸気タービンが実用化され、 発電や大型船などの大型機関はより効率の良いタービンに移行していった。 特に戦艦ドレッドノートに採用され、 それ以前の戦艦を悉く旧式へと追いやるほどの技術革新をもたらした。 一方より小型軽量化が可能な内燃機関の登場により、 小型の機関は(後には大型船などの比較的大型なものも)これに取って代わられていった。 現在往復型は観光列車などごく一部の用途に限られているが、 タービン型は外燃機関故に熱源を問わないこともあり発電や軍艦(原子力船)に今でも用いられている。 熱源は当初は石炭であったが、現在では化石燃料以外でも ガスタービンエンジン排熱(コンバインドサイクル)・原子力・地熱・太陽熱など様々なものが用いられている。

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