ラシード=ウッディーン=スィナーン

[中東−中世]

ニザール派のシリアでの指導者。 暗殺教団の「山の老人」のモデルとされる。 若い頃からのニザール派の信者で、 その中心地アラムートで教育を受けた。 シリアでの指導者没後の後継者争いが起こると、 アラムートより後継者として派遣された。 当初スンニ派であるザンギー朝のヌール=ウッディーンが最大の脅威であり、 スィナーンは対抗するため十字軍と同盟した。 ヌール=ウッディーンの死後、サラディンが脅威となると、 一転してザンギー朝と同盟してこれに対抗した。 サラディンの暗殺を2度図ったものの失敗し、 逆に討伐を受けた。 スィナーンはマスヤーフ城に篭って撤退に追い込んだ。 この際、密かに寝所に侵入してサラディンの枕元に警告として 毒入りケーキ・毒塗りの短剣・手紙を置き、 サラディンを震え上がらせたという伝説がある。 伝説の真偽は何れにせよ、直後にサラディンとは和解している。 第3回十字軍の折にはサラディンと同盟し共に戦った。 モンフェラート候コンラートはスィナーンの部下に暗殺されたと言われる。 没年は不明だが、サラディンとほぼ同時期に死去したらしい。
暗殺を多用するニザール派の中でも特に暗殺者・戦士である 「フィダーイー」の育成を重視し、 サラディンにも十字軍にも恐れられ、 半ば以上伝説的存在として名を残した。 ただ、何分裏稼業で優秀であるため、 実像は不明な点が多い人物である。

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