[ヨーロッパ−近代]
フランス革命期の政治家。
南仏のフレジュスで徴税人の子として生まれ、
長じて父親の勧めで聖職者となった。
そのためアベ=シエイエス(聖職者シエイエスの意)と呼ばれる。
革命直前にオルレアン州で聖職者階級の議員となり、
また「第三身分とは何か」を刊行して身分制度を批判した。
革命初期には国民議会設立の中心となるなど活躍したが、
革命が過激化すると距離を置くようになり、
ジャコバン派独裁政権では逼塞してやり過ごした。
このことから「革命のモグラ」と揶揄された。
テルミドールのクーデター後に公安委員として政界に復帰したが、
総裁政府には当初加わらず、大使としてプロイセンに赴いた。
帰国後に総裁に就任したが、政権安定のためには権力の強化が必要と考え、
憲法改正を図った。
しかし議会を通すのは無理と判断し、
エジプトから帰国したばかりのナポレオンと手を組み
ブリュメールのクーデターを引き起こした。
クーデターはシエイエスが主導したが、
その後成立した統領政府ではナポレオンに実権を握られ、
お飾りの元老院議長となった。
それでもナポレオン政権ではそれなりの待遇が与えられていたが、
王政復古すると国外追放となりオランダに亡命した。
その後七月革命によって帰国し88歳の長寿を全うした。
シエイエスは「第三身分とは何か」の発刊によって革命勃発に関わり、
ブリュメールのクーデターの主導により革命の終焉にも関わることとなった。
シエイエス自身は理想家肌ではあるもののそれなりの政治家であったが、
ナポレオンと張り合えるほどではなかった。
ただし程々の能力だったおかげで危険視されることもなく
長生きできたのかもしれない。