元首政(げんしゅせい)

[ローマ帝国]

ローマ帝政初期の政治形態に対する呼び名。ラテン語プリンキパトゥスの訳。 初期とは言ってもオクタヴィアヌスによる帝政開始から ディオクレティアヌスによる専制君主政の導入までの300年続いた。 オクタヴィアヌスはカエサルと後継者としてローマの天下を統一したが、 カエサルが暗殺されたことから、自分の目指す政治形態である帝政への変革は慎重に行った。 そのため、名よりも実を取り、共和政の建前を残しながら事実上の皇帝となった。 具体的には、護民官に認められていた如何なる危害も加えられない特権、 最高神祗官や祝福されたアウグストゥスの称号の名誉、度々の執政官就任、 何よりも軍の最高司令官を兼任することで、 独裁官にもならずに権力の集中に成功した。 また、全国の属州を2分し、元老院には比較的裕福な属州を任せ、 自分には辺境の属州の統治を認めさせた。 無論本音は辺境のローマ軍団を押さえることであったが、 軍団の維持のため、元老院属州の財源確保にも成功している。 このように権力は事実上の皇帝へ集中させたが、あくまでも表面上は共和政を保ち、 オクタヴィアヌスも国家元首としては質素な生活を送った。 彼の死後もローマは元首政を存続させる道を選び、 五賢帝時代までは皇帝と元老院のバランスを保っていたが、 軍人皇帝時代に皇帝が軍団によって擁立されるようになると有名無実化し、 混乱を収拾させたディオクレティアヌスが専制君主政を導入したことで終わりを迎えた。

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