[ヨーロッパ−近代]
ナポレオンのイベリア半島侵攻に端を発した戦争。
スペインではスペイン独立戦争或いはフランス戦争、
ポルトガルやイギリスでは半島戦争と呼ばれる。
ナポレオンの没落や南米諸国の独立の切っ掛けとなった戦争である。
ナポレオンが大陸封鎖令を発した際、
スウェーデンとポルトガルは中立を維持するため拒否し、
スウェーデンはロシア、ポルトガルはフランスが攻撃することとなった。
当初はスペインの協力もあってポルトガルを速やかに攻略し、
女王や摂政王子は植民地に逃れた。
ナポレオンは占領を維持するためスペイン各地にも軍を派遣したが、
これがスペイン人の離反を招き、
政変が生じて親フランスであった国王カルロス4世が退位、
首相ゴドイは失脚し、
フェルナンド王子が即位して反フランス政権が誕生した。
これに対しナポレオンはブルボン王政を廃止し、
自分の兄ジョゼフをスペイン王ホセ1世にしてフランスによる統治を目論んだ。
そのため反発する民衆蜂起がスペイン全土で発生し、
泥沼の戦いへと発展していった。
フランスはスペイン正規軍は撃破したものの、
各地のゲリラ蜂起に悩まされ、
ポルトガルの援軍として派遣された
アーサー=ウェルズリー率いるイギリス軍と一進一退の戦いを繰り広げた。
フランス軍は徐々に劣勢に立たされていたが、
ロシア遠征の失敗が決定打となり、
増援の望みが絶たれたフランス軍は敗北を繰り返し、
終にイベリア半島から撤退した。
この一連の戦いは消耗戦となり当事者である
フランス・スペイン・ポルトガルの国力を大いに損ねることとなった。
フランスではロシア遠征と共にナポレオン没落の切っ掛けとなり、
スペイン・ポルトガルでは南米植民地独立の切っ掛けとなった。
さらにスペインでは新王フェルナンド7世の悪政もあって国内が混乱し、
後の内乱(カルリスタ戦争)でさらに国土を荒廃させることになってしまった。