[ヨーロッパ−近代]
イギリスの軍人。
トラファルガーの海戦でフランス艦隊を破った提督として有名である。
牧師の六男として生まれたが、
父が病気になり家計が苦しくなると、
戦列艦の艦長であった母方の叔父を頼って海軍に入隊した。
若くして昇進して艦長となり、赴任先の西インド諸島で知り合った未亡人と結婚した。
フランス革命戦争では地中海方面で参戦し、戦傷により右目の視力を失った。
さらに昇進して提督となったが、カナリア諸島の戦いで負傷して右腕を切断、
隻眼隻腕の提督となった。
地中海分遣艦隊を率いてナポレオン艦隊の封鎖任務に当たり、
当初はフランス艦隊を逃してナポレオンのエジプト上陸を許してしまったが、
後にこれを捕捉し、アブキール湾の海戦で殲滅に成功した。
この勝利によってナポレオンのエジプト遠征は頓挫し、
ネルソンはその名を轟かせることになった。
ナポレオンがイギリス本土進攻を目論むとネルソンは白色艦隊中将としてこれに対し、
フランス・スペイン艦隊が陸軍支援のため出撃したところを捕捉し、
トラファルガーの海戦においてこれを壊滅させた。
その際ネルソン=タッチと呼ばれる二列縦隊の突撃戦法を採用し、
数で劣勢であったにも関わらず敵艦隊の分断・撃破に成功した。
この圧倒的な勝利によりフランスのイギリス本土進攻はほぼ不可能となり、
ネルソンは文字通りの救国の英雄となった。
しかしネルソン自身は戦いの最中狙撃され、艦上で戦死した。
ネルソンはアブキール湾・トラファルガーの海戦での劇的な勝利と
勝利の中でのやはり劇的な戦死によって後世に名提督として名を残した。
ネルソン自身は艦隊決戦主義者で敵艦隊の撃滅に重きを置き、
その結果が華々しい勝利に繋がったが、
決して盲目的信奉者ではなく、
艦隊による圧力を重んじる現存艦隊主義も全否定はしなかった。
将兵への気配りによって慕われたが、
決して聖人君子ではなく人妻エマ=ハミルトンと不倫し娘も設けていた。
ネルソンは死の際にこの愛人を扶養するよう遺言を残したが、
これは無視されエマは酒に溺れ困窮の中死去した。
娘ホレイシアは普通に結婚し長寿を全うしたが、
幼い頃の苦労の所為かネルソンの子であることは否定し続けた。
そういった一面はあったものの、その実力と人望は本物であり、
名将と呼ばれるに相応しい人物ではあった。