重商主義

[ヨーロッパ−近世・東アジア]

国家による貴金属や貨幣の蓄積を重視する経済政策。 西欧の絶対主義国家に見られ、 また東アジアでも農業重視の農本主義と対峙する考えとしてしばしば見られた。 西欧では大航海時代以降の植民地拡大により莫大な金銀が流入し、 その富を独占しようとしたスペイン・ポルトガルにより始められた。 後にフランスの財務総監コルベールによって大々的に進められ、 ルイ14世の絶対王政を支える基盤となった。 この頃は富として貴金属を重視したため重金主義と呼ばれる。 後に輸出の促進と輸入の抑制による差額の蓄積を重視する貿易差額主義がイギリスに登場し、 イギリスの基本政策となった。 後にアダム=スミスは「国富論」でこの考えを否定し、自由貿易を主張した。
一方東アジアにおいても伝統的な農本主義に対し、 商工業振興や金銭の蓄積を重視する政策も見られ、 実際の経済政策は両者のせめぎ合いの中で行われた。 中国では貿易の重要度が低いため貿易差額主義は発展せず、内需政策が中心であった。 伝統的に塩と鉄が国家専売とされ、 専らこれらを重視するのが中国における重商主義の中心であり、 他には貨幣増産などがあった。 また日本では江戸幕府の老中田沼意次が先駆者として知られる。

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