ジェファーソン=デイヴィス

[北米−近代]

アメリカの政治家で、アメリカ連合国の大統領を分離独立から敗戦まで務めた。 南北戦争で敵対した合衆国大統領リンカーンと同じケンタッキー州で生まれ、 これまたリンカーン同様一家は引っ越しを繰り返し ルイジアナ州を経てミシシッピ州に移り住んで父は農場主となった。 長じて陸軍士官学校に入り、卒業後軍人となった。 軍の除隊後元上官テイラー大佐の娘と駆け落ち同然の結婚をしたが、 新妻がマラリアで早世したため以後世捨て人のように暮らした。 隠遁生活の間歴史と政治の勉学に励み、 兄と共に民主党に入党してミシシッピ州の下院議員となった。 米墨戦争が始まると議員を辞職して義勇兵となり、 軍務経験を買われて大佐として連隊を指揮した。 その際元妻の父テイラーの指揮下に入ったが、 勇猛果敢な戦いぶりでテイラーを唸らせた。 戦後政界に復帰し、陸軍長官や上院議員を歴任した。 南北対立が深まった際にデイヴィスは南部の分離には反対していたが、 リンカーン大統領に反発して南部諸州が分離すると郷土を優先して 議員を辞職し連合国に加わった。 デイヴィス自身は奴隷制擁護者でも分離独立派でもなかったが、 ミシシッピ州の代表的立場にいたことから連合国大統領に選出された。 大統領となったデイヴィスは合衆国からの平和的離脱を模索したが、 結局ボーリガード将軍のサムター要塞武力接収の提案を承認し 南北戦争の引き金を引いた。 戦争中デイヴィスは国家元首として連合国軍(=南軍)を率いたが、 神経質で人望が無くリー将軍らと比べ国民の人気が無かった。 また人事面では能力より個人的感情を優先したと言われ、 リー将軍以外ではボーリガード将軍やジョンストン将軍を遠ざけ ブラッグ将軍やフッド将軍を重用したが、 この人事は後世評判が良くない。 結局劣勢を覆すことは出来ず首都リッチモンドが陥落し、 デイヴィスは逃亡するも再起を断念して合衆国に逮捕された。 戦後国家反逆罪で収監されていたが、 保釈金を払って保釈され、後に起訴を取り下げられて自由の身となった。 その後は連合国の大義を世に訴え続けて北部に反感を持つ南部で人気となり、 大統領であった頃よりも南部の民衆に慕われた。 最期はニューオリンズで死去したが、 葬儀は大規模なものとなり多くの参列者が訪れた。
デイヴィスはリー同様奴隷制擁護者では無かったが、 郷土愛から南軍に加わり指導者となった。 リーと異なり人当たりが悪く人々に好かれなかったが、 皮肉にも戦後連合国の正当性を訴え続けたことで南部 (の懐古論者)の人気を集め(あるいは集めてしまい)、 南部人種差別の象徴となった(なってしまった)。

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