ジャンヌ=ダルク

[ヨーロッパ−中世]

百年戦争時のフランスの英雄にしてカトリックの聖人。 「ラ=ピュセル(乙女)」と呼ばれる。 活躍期間は短いものの、 女性ながら (寧ろ女性だからか) 百年戦争の代名詞と化すほどの知名度を誇る。 フランス東部ロレーヌ地方にあるドンレミ村の富農の娘として生まれ、 平凡な少女として育った。 しかし、ある日ジャンヌは「神の声」(或いは大天使ミカエルの声) を聞いた。 その声に従ってジャンヌは守備隊長を経由して王太子シャルルの下に赴き、 シャルルの王位の正当性を説いてシャルルに認められた。 当時王太子側はイングランドに押され気味で、 フランス中部の町オルレアンで食い止めていた。 ジャンヌはオルレアン救援軍に従軍し、 戦いの最中旗を持って兵達を鼓舞し勝利に貢献した。 オルレアン解放後さらに進軍を続け、シャルルをランスで戴冠させた。 (余談であるがランスもフランス東部でロレーヌ地方に近い。) フランス勝利の最大の貢献者は司令官のリッシュモン大元帥であるが、 ジャンヌの役割も大きかった。 しかしこれ以降ジャンヌの運命は暗転する。 ジャンヌはタカ派として武力によるフランス全土解放を主張したが、 即位したシャルルは既に外交による決着を決心しており、 ジャンヌはシャルルにとって厄介者と化していた。 ジャンヌはこれ以降も従軍するが、これらの事情から戦果も上がらず、 ついにイングランド側のブルゴーニュ公の軍に捕らえられた。 ジャンヌはそのままイングランドに引き渡され、 フランス北部のルーアンで異端審問にかけられた。 当時の捕虜は身代金を払えば解放される慣わしであったが、 シャルルは身代金を払わずジャンヌを見捨てた。 結果ジャンヌは異端者として破門され、火刑に処された。 その後シャルルがルーアンを奪還するとジャンヌ裁判のやり直しを命じ、 ジャンヌの名誉は回復された。 ジャンヌを捨てたシャルルであったが、 戴冠に異端の力を借りたとあっては不都合だったので、 死後の名誉は回復させたのである。
ジャンヌは活躍期間が短いこともあって 解放されたオルレアンなどを除くと知名度が低かったが、 ナポレオンがフランス救世主として評価して知名度が上がった。 一方敵であったイングランドでは長年魔女とされていたが、 結局フランス側の解釈が世界に広まり、20世紀になって聖人にまでなった。
実は当時ジャンヌのような神憑り的人物は他にも何人かいたのだが、 ナポレオンのおかげでジャンヌのみが有名になった。 その悲劇性故日本でも人気が高いが、 実際のジャンヌは (残念ながら) リュック=ベッソンの映画の困ったちゃんが一番近いと思われる。

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