イスラム教(イスラムきょう)

[全世界−中世以降]

ムハンマド (マホメット、マホメドなどとも言う) により創設された宗教。 今では世界3大宗教の一つになっている。 中国ではウイグル族 (回[骨鳥]) 経由で輸入されたので、回教と呼ばれる (ひたすらグルグル回る宗派もあるが、回教の名とは関係無い)。 開祖ムハンマドはアラビア半島のメッカの商人であったが、 40歳位の頃に天使ジブリール (ガブリエル・受胎告知の天使) の声を聞き、 アラーの教えに「目覚めた」。 当初は多神教に押されて故郷を追われメディナに避難したりもした (ヒジュラ・ヒジュラ暦の起源) が、 この地で信徒を獲得して勢力を蓄え、メッカを征服した。 最初から随分攻撃的である。 ムハンマドの死までにアラビア半島をほとんど征服し、その死後も順調に勢力を伸ばした。 当初は宗教組織がそのまま1つの国家であったが、 異民族にイスラム教が広まり、多数の国家に分裂するようになると、 国家の枠組みを超えて広まっていった。 現在東はインドネシアから西は北アフリカまで、イスラム教を主としている国は多い。 イスラム教はユダヤ教と同じく元来砂漠の宗教である。 その戒律は厳しく、飲酒は禁止、1日5回礼拝が必要、豚の食用禁止、 女性が肌を見せるのも禁止などである。 だが、現実主義の宗教でもある。 キリスト教のように、教義を柔軟に解釈することで異教徒にも受け入れられ、 現在の勢力を有するまでに至った。 ユダヤ教やキリスト教も、コーラン以前の啓典として認めている。 現在イスラム教に対する誤解を振り撒いているテロリストも、 イスラム教徒の大多数からみれば、単なる犯罪者である。
イスラム教にも多くの宗派が存在するが、大きくは2つに分かれる。 圧倒的多数が所属するのがスンニ派 (正統派) である。 また、現在イラン及びイラク南部で主流となっているのがシーア派である。 シーアとは「党派」のことで、元々派閥争いの意味合いが強い。 シーア派はムハンマドの娘婿アリーの党派であったが (ムハンマドに息子はいなかったため、アリーの党派は血統重視の一派である)、 その後もいろいろな人を担いで分裂し、 中にはアサッシン派という今のテロ組織並みに過激な分派もあった。 今のシーア派の地域はサファヴィー朝時代に定着した。
イスラム教は当初はアラブ人の支配の道具であったが、 アッバース革命以降、平等の宗教として定着した。 実際イスラム教の歴史では、被支配民族の活躍が目立つ。 中世以降の歴史で中心となったのは、武ではトルコ人、文ではペルシャ人であったし、 オスマン朝で活躍したのはスルタン以外ではギリシア系の人間が多かった。 元々奴隷であったマムルークがエジプトとインドで建国したし、 オスマン朝の最精鋭部隊「イェニチェリ」は 強制徴収されたバルカン半島のキリスト教徒の子供を教育してつくられた部隊である。 インドでも歴代のイスラム政権はヒンズー教徒も差別しなかった (そうしないと少数派の政権を保てなかった)。 現在各地でイスラム勢力が紛争の当事者となっているが、 それはイスラム教とは分けて考えるべきものである。

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