エンリケ航海王子(エンリケこうかいおうじ)

[ヨーロッパ−中世]

ポルトガルの王子であり、大航海時代の基礎を築いた人物。 父王に従って北アフリカのセウタを攻略し、 その功績でヴェセウ公となった。 その地でイスラム教徒のサハラ交易の実態を知り、 それに対抗するためアフリカ航路の開拓、 さらにインド交易路の開拓に思い至った。 これを実現するためポルトガル南西部、 現在のサグレスを拠点として航海者の育成や支援を行った。 その間同じ北アフリカのタンジールに出兵したが、 こちらは失敗して弟王子が捕らえられるなど散々な結果に終わった。 以降軍事的評価を落したエンリケは内政と探検事業に専念した。 エンリケが没するまでに探検隊は現在のシエラレオネにまで達し、 後の喜望峰到達・インド航路開拓の先駆けとなった。
エンリケ王子は探検事業を支援し大航海時代の礎を築いたため 「航海王子」と呼ばれる。 ただしエンリケ自身は船酔いが酷く自分で航海はできなかった。 また探検の動機はキリスト騎士団の一員としてイスラムに対抗するためであり、 その点はセウタやタンジール遠征と同じである。 また探検の成果として最も収益を上げたのは奴隷貿易であった。 この辺りの倫理観は後世の残虐な征服者達とあまり変わらない。 タンジール遠征は散々な結果に終わったが、 探検事業は後の大航海時代においてポルトガルが他国に先んじ、 インド交易で発展する基となった。 彼もまた時代を切り開いた善悪併せ持った英雄と言えよう。

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