[ヨーロッパ・全世界−近世・近代]
近代に起こった技術の進歩に端を発した産業構造・社会構造の変革。
最初は18世紀のイギリスにおいて織物生産の機械化から始まった。
元々イギリスでは毛織物生産が盛んであり、
半完成品をドーバー海峡を渡ったフランドル地方に輸出していた。
フランドルを領有するスペインとの関係が悪化すると自前で生産するようになり、
専らギルドの規制を受けにくい農村において
問屋が農民に資材を提供して行う問屋制制家内工業と呼ばれる形で生産された。
一部ではこれが大規模化し工場制手工業へと発展することもあった。
また農業生産性が向上して農民が余ったり、
フランスとの植民地戦争に勝利して広大な植民地を手に入れ、
大資本が育ったことも産業革命に適した条件となった。
そんな中最初の革新として織物を織る道具である飛び杼の発明、
さらにそれを用いた紡績機が生まれ、生産の機械化が始まった。
製鉄においては当時木炭を使用していたためイギリスでは木材不足に悩まされたが、
石炭を蒸し焼きにしたコークスを用いるコークス製鉄法が普及して改善された。
その次には石炭採掘時に生じる地下水の処理が問題となり
排水ポンプの動力が求められたが、
このために蒸気機関が生み出された。
最初はニューコメンによって発明されたが、
これは効率が悪く産出された石炭の1/3が使われるという代物であった。
この蒸気機関をワットが改良し、
効率の大幅向上と回転運動への出力変換によって
ポンプ以外にも様々な用途に使われることとなった。
これによって機械化はさらに進み、
工場の機械や船・鉄道といった交通機関が蒸気の力で動くこととなった。
この影響は社会構造の変化をももたらし、
農業の機械化でさらに余った農民の多くが鉱工業に従事する労働者となり、
第2次産業が大幅に成長した一方、
大規模な工場が増えて資本の集中が起こり、
資本家層と労働者層を生み出すこととなった。
イギリスで産業革命が一通り完了すると海外にも波及するようになり、
ベルギー・フランス・アメリカ、次いでドイツで革命が始まった。
その後他のヨーロッパ諸国及び明治維新を迎えた日本へと広がっていった。
対して中国やインドはイギリスに屈服させられて工業化に失敗し、
産業革命が成功し工業化を成し遂げた国に水を開けられることとなった。