[ヨーロッパ−近世・近代]
スウェーデンの貴族。
フランス王妃マリー=アントワネットの愛人として知られる。
フランス贔屓な侯爵の息子として生まれ、
ヨーロッパ遊学後パリの社交界にデビューする。
そこで王太子妃であったマリーと出会い、親密になっていった。
マリーが王妃となるとスキャンダルを恐れて一旦帰国し、
その後はアメリカ独立戦争やロシアとの戦争に軍人として参加しつつ、
フランスに戻って愛人関係を続けてもいた。
しかしマリーに肩入れし過ぎてスウェーデンの国策と合致しなくなり、
国王の信頼が薄れるようになった。
フランス革命が勃発すると革命阻止のためスパイとして派遣され、
スウェーデン本国の支援を受けてフランス王家を助けるようになった。
フランス王に亡命を勧め、フェルセンが脱出の手配を差配したが、
外国人であることもあって親国王派の協力がほとんど得られなかった。
加えてマリーのわがままのため計画は遅れ、
さらに王が同行を拒否したためパリ郊外でマリーら国王一家と別れることとなった。
ちなみにフランス王ルイはフェルセンがマリーの愛人であると知っていたが、
フェルセンの王家への献身も知っていたため責めるようなことは無かったという。
その後国王一家はヴァレンヌで発見されて亡命に失敗し、
テュイルリー宮殿に幽閉された。
フェルセンは宮殿に忍び込み再度亡命を勧めたが、
フランス王に拒否された。
その後もフランス王家のために奔走したが、
スウェーデン王グスタフ3世が暗殺されると本国の方針が転換され、
革命から手を引くと同時にフェルセンは失脚した。
そしてマリーが処刑されると、
失意のフェルセンは暗く憎悪に凝り固まった人間に変貌したと言われる。
新王のグスタフ4世が親政を始めるとフェルセンは復権し、
元帥にまで上り詰めたが、
民衆に不信感を抱き高圧的な振る舞いをしたため、多くのものに憎まれた。
グスタフ4世がクーデターで廃位された後も地位を保ったが、
新王カール13世の王太子が事故死すると、
フェルセンによる暗殺であるという噂が立った。
王はフェルセンに葬儀の執行を命じたが、その最中暴動が起こり、
フェルセンは群衆によって惨殺された。
現場にいた近衛連隊はあえてこの暴動を放置し、
フェルセンの死骸は裸で側溝に捨てられる憂き目にあった。
フェルセンは本来社交的で有能な貴族であったが、
マリーに熱を上げ過ぎたため
マリーの死と共に彼の人生は事実上終わってしまうこととなった。
その後は立ち直ることなく、余生は憎悪に塗り固められたかのようになり、
最期は彼が憎んだ民衆によって惨殺された。