奴隷解放宣言(どれいかいほうせんげん)

[北米−近代]

南北戦争中にアメリカ合衆国大統領リンカーンによって出された 連合国(南軍)支配地域にいる奴隷の解放を命じた宣言。 合衆国(北軍)側に留まった奴隷州と北軍占領地域は宣言の対象外とされた。 南北戦争の開戦後に北軍が確保した南軍の奴隷について、 合衆国の法(逃亡奴隷法)では南軍に明け渡さなければならなかったが、 政府は奴隷の明け渡しを禁止し、逃亡奴隷法を無効とした。 次いでリンカーンは奴隷を解放し志願者を北軍に組み込むことを検討したが、 大統領の権限を越えてしまうこと・ 北軍に留まった奴隷州の離反を招きかねないことが問題であった。 そのため閣僚たちと協議して対象を南軍支配地域に限定し、 また苦し紛れと思われないようアンティータムの戦いで勝利した直後に 予備宣言を出して内容を周知させ、翌年に本宣言を発布した。 この宣言によって北軍の目的は当初の南軍の離脱阻止に奴隷解放が加わった。 このことは南軍内の奴隷を離反を促し、 またヨーロッパの世論を動かし南軍に対する支援を打ち切らせることになった。
奴隷解放宣言では対象が南軍に限定され、 また戦時に限定される軍事司令であることから、 リンカーンは全奴隷を解放できるよう憲法修正条項案の成立に取り組んだ。 戦争中の選挙に勝利し大統領に再選されたリンカーンは議会に修正条項案を承認させ、 各州の議会に提出した。 この修正案はリンカーン暗殺後に必要数の州で批准されて発行され、 アメリカの奴隷制廃止が実現した。

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