[ヨーロッパ−中世]
フィレンツェの詩人ダンテの代表作。
しばしばルネサンスの先駆けとされる。
作品自体はキリスト教の世界観に従って地獄・煉獄・天国を巡る物語であるが、
地獄・煉獄の案内人が古代ローマの詩人ウェルギリウスであったり、
キリスト教徒ではないトラヤヌスを天国に置いたりと、
後のルネサンスに繋がる視点が見られる。
また、当時のイタリアの政治家や聖職者がダンテ視点で地獄や天国に配されており、
作品に生々しいリアリティを与えている。
後世への影響としてとりわけ大きいのが、
当時一般的であったラテン語ではなく、
フィレンツェを含むトスカーナ地方の言葉で書かれていたことである。
この言葉が現代イタリア語の基礎となり、「イタリア」に貢献した
(当時のイタリアは小国分立状態)。
また、作品に自分の母語を使うことが後世行われるようになり、
他国での国家意識の発生へも間接的に影響を与えた。
ちなみに当時のキリスト教徒の常としてムハンマドとアリーを地獄へ墜としたため、
イスラム圏では禁書である。