独裁官(どくさいかん)

[共和政ローマ]

共和政ローマにおいて、非常時に選出される最高責任者。 通常は独裁を防ぐため、行政の最高責任者は2人の執政官であるが、 国家存亡の時等制約の大きい執政官では対処しきれない場合、 半年の任期で独裁官が選出され、執政官を含む全ての政務官が指揮下に入った。 しかし、実際に独裁官が選出されたのは数えるほどしか無く、 イタリア半島統一後にはほぼ皆無であった。 独裁官が復活したのは遥かに時代が下り、スラの時代である。 しかも、スラは原則を曲げ、自ら無期限の終身独裁官となった。 この間スラは絶対的権力者として数々の改革を推し進め、 最後には自らその地位を降りた。 この共和政とは大きく矛盾する終身独裁官には もう1人、かのユリウス=カエサルがなっている。 カエサルはそのまま帝政に移行させるつもりであったが、 彼は暗殺され、未遂に終わった。 後継者のオクタヴィアヌスは、より(見た目は)穏健な方法を取ったため、 独裁官の存在しない帝政を築いた。 以後、帝政に入ると独裁官の存在そのものに意味が無くなり、自然消滅した。 尚、ラテン語のディクタトールは英語の独裁者の語源となっているが、 実際に独裁官になった人は、 危急存亡の時に国家の命運を任されるだけあって、 後世の愚かな独裁者とは大きくイメージの異なる人ばかりである (個人的にはスラは除外したいが)。

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