[ヨーロッパ−中世]
中世イタリアのフィレンツェ出身の詩人。
「神曲」の作者として知られる。
フィレンツェの小貴族の子として生まれ、
詳細は不明ながら貴族の子としてラテン語や修辞学などの教養を学んだ。
良く知られているのは、同い年の初恋の相手ベアトリーチェである。
結局二人は別々の相手と結婚したが、ベアトリーチェは夭折してしまった。
ダンテはこのベアトリーチェを生涯想い続けたようで、
「神曲」で天国の案内人として登場させた。
当時のフィレンツェはグエルフィ党 (教皇派) とギベリーニ党 (皇帝派)
の対立状態にあったが、ダンテはグエルフィ党側の一員として内乱に加わった。
グエルフィ党は内乱に勝利したが、その後内部分裂を起こし、
より教皇と結びつこうとする黒党とフィレンツェ自立を目指す白党に分裂した。
ダンテは白党に属して最高位の統領の一人にまでなったが、
黒党のクーデターにより地位を追われ、永久追放となった。
その後ダンテは北イタリア諸都市を放浪しながら再起を期したが、
結局そのまま生涯を終えた。
「神曲」はその放浪時代に書かれたものである。
以上のような経緯であるため、
「神曲」の中で自分を追放したフィレンツェの黒党は散々に扱き下ろしている。
逆に初恋のベアトリーチェや自分の尊敬する先人を理想化して登場させている。
また、理想の帝王の登場を仄めかしているが、
当時の皇帝ハインリヒ7世を強く支持していたことが知られている。
当初は反皇帝派であったダンテであるが、
有能で理想化肌でもある若き皇帝とは肌が合ったのかもしれない。
ただし、このハインリヒはイタリア内乱の泥沼に足をとられた上、
若くしてダンテよりも前に病死している。
ダンテは後世に大きな名を残したが、
その人生は決して幸福とは言い難いであろう。
自身の没落以上に、
希望が断ち切られる様を何度も見せ付けられるのは辛かったであろうから。