ケルト神話(ケルトしんわ)

[ヨーロッパ−古代以降]

ケルト人達が残した神話。 ガリア人とも呼ばれるヨーロッパ大陸のケルト人は殆ど資料を残していないので、 ケルト神話と言えば主に中世以降も文化を残したアイルランドの神話のことである。 ケルト人は独自の文字を持たず、 記録はドルイドと呼ばれる祭祀階級の口承に頼ったため、 このようなことになった。 アイルランドでは、古来多くの種族 (神々) が訪れ、支配権の交代があった。 最も重要な種族が最も神らしいダヌー神族である。 地母神ダヌーから生まれたこの種族は、主神ルーを始め、春の女神ブリギッド、 海神マナナン、戦争の女神モーリアンなど、ケルトの主要な神の殆どが属している。 また、ケルト最大の英雄クー=フーリン (ク=ホリン) も主神ルーの息子である。 このケルトの神々の最大の特徴は、既に「去った」神々であることである。 記録が残されたのが、キリスト教伝道以降であったことが最大の理由であろう。 似たような背景のゲルマン神話も、あいまいな形だが神々の終焉を伝えている。 ただし、農耕民族であるケルトの神話は狩猟民族であるゲルマンの神話より穏やかで、 神々はただ立ち去っただけであり、今も理想郷で暮らしているとされている。
尚、アーサー王伝説はケルト神話の影響が強く、 ケルト神話にキリスト教が混ざった変種であるとも言える。 聖杯探索などは明らかにキリスト教的だが、 ランスロットのモデルは主神ルーであるとも言われているし、 魔術師マーリンはドルイド的である。 また、最後にアーサー王が去っていく妖精の島アヴァロンも、 ダヌー神族の去った理想郷を思わせる。 この結末は、殺伐としたゲルマンのシグルド (ジークフリート) の物語とは対照的である。

見出しのページに戻る
歴史小事典+歴史世界地図に戻る