アル=カーミル

[中東−中世]

アイユーブ朝のスルタン。 建国者サラディンの甥で先代アル=アーディルの息子。 その名は「完全」を意味する。 父が健在の時から副王としてエジプトを統治していた。 十字軍の侵攻中に父が急死すると、当初は十字軍との和睦を図るが、 拒絶されると一転して反撃し、勝利する。 スルタンとなるものの、ダマスカスとアレッポの総督が独立を謀り、 内乱に苦しめられる。 そこで神聖ローマ皇帝兼両シチリア王のフリードリヒ2世と和睦し、 幾つかの条件をつけてエルサレムを譲り渡す。 これが一戦も交えず最大の成果を挙げたフリードリヒの十字軍である。 そのため全力を挙げて内乱を鎮圧できたが、 エルサレムを明け渡したことに対する国内の反発も大きかった。 彼が健在の間聖地に平和は保たれたが、 その死の直後、ヨーロッパの内乱で聖地の管理が疎かになっていたこともあり、 甥アル=ナーシルによってエルサレムは再び奪回された。

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