アッバース朝(アッバースちょう)

[中東−中世]

ムハンマドの叔父アッバースの子孫である アブー=アル=アッバース (サッファーフ) によって建国された王朝。 俗にイスラム帝国とも呼ばれ、イスラム教の統一王朝の最盛期を築いた。 前政権のウマイヤ朝があまりにもアラブ人を優遇したため、 アラブ人以外のイスラム教徒や、ムハンマドの血縁者を指導者に望む一派が、 アッバース革命と呼ばれるクーデターを起こし、アッバース家の支配を打ち立てた。 サッファーフの弟マンスールの代に都バグダッドを建設し、 5代目ハールーン=アッラシードの頃に最盛期を迎えた。 東は中央アジアから西はジブラルタル海峡に至る大帝国であったが、 それ故に支配力が弱まると分裂し、多くの軍人による政権が乱立した。 しかし、カリフの権威は保持できたため、 実権を奪われても王朝の命脈は保った。 感覚としては日本の天皇に近かったらしい。 しかし、最後はカリフの権威が通用しないモンゴルによって滅ぼされた。 処刑された最後のカリフの縁者はエジプトのマムルーク朝に逃れ、 スルタンであったバイバルスの庇護を受けた。 以後イスラム教世界の中心はバグダッドからエジプトのカイロへと移った。 なお、アッバース朝以降、イスラム教勢力は国としての領域はそれ以上広がらなかったが、 イスラム教はさらに拡大し、インドや東南アジアに広まった。 その結果現在のパキスタン・バングラディシュ・インドネシアといった国々が生まれた。 アッバース朝以降、イスラム教がそれまでの宗教国家から 国を超えた宗教へと脱皮したと言えるだろう。

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