ある日を境に雲が姿を見せなくなった。
予兆はあった。
朝ごはんを食べに来ない日が増え、猫広場に姿を見せない日が次第に増えていた。
「あの子、どこかでごはん食べさせてもらってるのかしら」
世話人のお母さんがそう訝しんでいるうちに、しばらくすると夕方にも姿を見せなくなり、やがてぷっつりと消息が途絶えた。一週間経っても半月経っても雲は広場にやってこない。
悪い想像が皆の心をよぎる。
ただ、白猫が轢かれたとか死体を見たという話はなかった。やがてある家の窓の中にそれらしい猫の姿を見たという噂を聞いた。
それが雲なのかどうかは今もわからない。
ただ、私もお母さんも「雲ちゃんは家猫になったんだよ」と無理やり思い込もうとしていた。
雲がいなくなって猫広場は4匹に。
それでも、私と空の毎週末の散歩はいつもと変わらず続いていた。
ただ、雲がいなくなったせいか、以前にも増して空は私に甘えるようになってきた。
やがて季節は夏からゆっくりと秋へ。
公園の木の葉が色づくころには空は再び冬毛をまとい丸々とした姿に。
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