年が明けてまもなく年老いた雄猫が姿を消し、猫広場は5匹になった。
猫は自らの死期を悟ると静かに人前から姿を消すと昔から言われている。
三日、一週間、半月待ってもその猫は広場に戻ることはなかった。
やりきれない淋しさとあきらめの気持ちに心が重くなる一方で、空は日を重なるごとに私との距離を縮めていく。
ある日、帰宅しようとすると後をついてくる空。
我が家は小鳥がいるので家に連れ帰るわけにはいかない。「困ったな」と思いつつ、広場を出て小道をぐるりと一周してまた広場に戻る。そんなことを何日か繰り返した。
そうしているうちに、空は散歩に連れて行ってくれているとでも思ったのだろうか。猫広場でひとしきり遊んでじゃれた後は、私の顏を見上げて「行こうよ」という顏をする。
やがて早朝の空との「お散歩」は毎週末のお決まりの日課となっていった。
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