ここで猫たちの世話をしている人は数人いた。
その中心となっていた年配の女性は雨の日も風の日も一日も欠かさずに朝夕ここに通い、猫たちの食事と水の世話をしていた。猫たちが食事を終えると残り物を片付け、さらに駐輪場の中と周りをホウキで掃除をする。さらに隣接する空き地で猫たちのフンの後始末をしてから帰る。
ここにいる猫たちの避妊・去勢手術もすべてその方が自腹を切って行っていた。本当に頭の下がる思いだった。
いつしか私は親しくなったこのおばさんを「お母さん」、この駐輪場を「猫広場」と呼ぶようになっていた。
6匹の猫たち、大きな若い茶トラの雄は「モカちゃん」、やや長毛の三毛は「チャーミー」、そして二匹の仔猫の母親である片目の白猫には「愛ちゃん」という名前がついていたが、年老いた雄猫と二匹の仔猫にはまだ名前がなかった。
私は仔猫の雄の方に「空」、雌の方に「雲」という名前を付けた。
お母さんにそれを話すと「いいんじゃないの。そう呼ぼうよ」と言ってくれた。
やがて季節は秋から冬へ。
その頃には空の去勢手術も終わっていた。
空も雲も日増しに体が大きくなり、もうほとんど大人の猫と変わらぬ体型に。
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