真夏の第一橋梁 

 8月。
 ここ数年は昼間35℃を超すことも珍しくなくなり、明らかに地球温暖化の影響が現れているような…。少なくとも私たちが小学生だった昭和40年代には夏休みの暑い日といってもせいぜいが31〜32℃止まりだったような気がするのですが。20年先にはいったいどうなってしまうのか…。
 それはともかく、この真夏。学校が夏休みということもあって各地で蒸機列車の運転は花盛りになります。ところが何分脅(狂?)威的に気温が高いこの時期、撮影する側からみるとまずもって煙が期待できない時期でもあります。雨でも降ってくれない限り…。
 まあ山口線のC571だけは暑かろうが寒かろうが年中無休(?)で爆煙が見られますが、アレは例外中の例外。(かつてのC623もそうだったんですが…)
 大井川鐵道の蒸機列車もこの時期は連日2往復、3往復運転になり、各列車ともお客満載になりますが、それでもほとんど煙が見られない区間が多いのが実態。これが春や秋ならばそこはかとない煙がなびいて見える場所でも、時に気温36℃にもなんなんとするこの季節は、煙突から出てくるのは透明の「正直者にしか見えない煙」(見えるかっ!!)です。(^^;
 そんな中でもこの第一橋梁だけは、真夏の暑い時期でも比較的煙がよく見られる場所です。もちろん笹間渡詰に川根温泉があるため、温泉客へのサービス・アピールということもあるのでしょうが…。ただ、川根温泉ができる前からこの橋梁上だけは真夏の晴れた暑い日でも煙がよく見られる場所ではありました。
 というのも、大井川鐵道の線形をご存知の方ならばおわかりでしょうが、第一橋梁を渡ると8‰で笹間渡駅へ下り、その直後地名に向かって連続20‰の上り勾配と急曲線が続いていきます。その心臓破りの上り坂に向かう手前の最後の助走路がこの第一橋梁から笹間渡駅ということになります。ですから乗務員によって多少タイミングの差があるものの、この橋梁上は思い切りくべこんでいく列車が多いようで…。
 真夏に煙を見たければ第一橋梁、というのが無難ではあります。撮ったあとすぐに冷たいビールも飲めるし…って、これはこっちのハナシ。(^^;
 ただ、この第一橋梁というのは、写真を撮る側からするとなかなかクセモノの場所でもあります。なぜかというと、ここは季節を問わず風の通り道。春は強い東風が笹間渡の山から吹き降ろし、夏は大井川下流から南風が橋梁を横切り、秋になると抜里側からの風が煙を立たせ、冬は大井川上流からの北風が煙を倒す…。もし無風の日にここで撮影できた方がおられるとすれば、それは大変ラッキーかもしれません。フシギなもので、川岸に立っていると無風のように感じる日でも、なぜか橋梁中央部のあたりは中空を風が通っていることがあって、「今日は無風!」と喜んでいたらなぜか橋梁中央部で煙が倒されてる、というメに遭ったことはこれまで何十回あったことか。(-_-;)

 そしてこの真夏の時期、上で述べたように橋梁上は南風が下流から上流に横切るため、煙が上流側に倒されることが多くなります。従って煙に客車が隠されないように写真を撮ろうと思うと下流側から狙うのがベスト、ということになります。
 ところがドッコイ、下流側にはちょうど列車の高さにケーブルが…。
 これが目立つんですよね〜〜。(^^;
 特に早い時間帯の1001レあたりだと背後の林もまだいくらか光を受けて明るいんでモロにこのケーブルが目立って…。なかなか機関車が目立つような接近中望遠アングルは敬遠してしまいたくなるんですが…。
 窮余の一策としては、太陽が高くなりトップライトの光線状態になった101レを、ケーブルの位置がちょうど機関車のランボードと客車の窓下あたりの高さにくるような立ち位置を選んで、しかもモノクロで撮る…ということになります。それが↑の写真。それでもゴマカシきれてませんが。(^^ゞ
 この写真、一見C5644の煙が立っているように見えますけど、よ〜くご覧いただければお分かりの通り、橋梁渡り初めのこの位置でもう煙が向こう側(上流側)に倒れ始めているのが見て取れると思います。この直後、橋梁中央部あたりでは、こちらから見て橋梁桁の下にまで煙が躍り出るほど煙が倒れまくっていました。
 そんな写真撮影にはちょっと苦労する季節ですが、せっかくの2往復・3往復運転、ゆっくりと乗車してみるのもいいものです。朝一番の1001レに乗車して、後の1本または2本は撮影に回る、というのも大井川鐵道ならではですから。そして、気温35℃を超える日であっても、開け放した窓から入ってくる大井川の川風は不思議に心地よく、暑さを忘れさせてくれます。そして…旧型客車に揺られながら飲む冷たいビールは最高にウマイです。これは間違いなく保証いたしますよ〜〜。(^^;
 余談ながらこの橋梁下流側のケーブル、遠景から撮る分にはほとんど気になりませんが、最近は河原に生えたカワヤナギの背が伸びてところどころ橋梁を隠すようになってしまいましたね。
(1994年8月 大井川鐵道 抜里〜笹間渡)