ねこたび日記

2022年5月23日(月) 曇り時々晴れ 青島 
朝5時20分にホテルにタクシーを呼びました。この時間、まだ市電もバスも動いていません。
大街道からJR松山駅までは歩いていくのはちょっと無理。松山駅近くのホテルにすればこんなことはしなくて済むんですが、松山で三泊…ずっとシャワーというのも空しい。(^^;
道後温泉行けないとなれば、せめて大浴場に、ということで天然温泉のあるホテルを探したらそれが大街道だったというワケ。
まあ夜の食事場所には不自由しなかったですけど。
青島最寄り駅の伊予長浜に行く一番列車宇和島行きは5:51発。
三年ご無沙汰している間にこの列車の発車時刻は10分以上も早まっていました。でも車両は以前と同じ特急「宇和海」の間合い運用。運賃だけで特急車両に乗れるちょっとオトク感が。(^^;

発車して車内で朝食。松山駅のコンビニは5:45にならないと開かないので前夜仕入れたおにぎりを。
途中、伊予市と伊予上灘でそれぞれ長時間停車をしながら列車はのんびり西へ。向井原で内子線と分かれ、高野川を過ぎると車窓に伊予灘が広がります。
今日はちょっと曇りがちのお天気。海上もやや霞んでいて沖合の青島はぼんやり見えるだけ。でも波はほとんどない。無事に船は出そうですね。
7:16、伊予長浜着。歩いて3分で長浜港。
定期船「あおしま」が待っていました。

この青島航路もつい先日までは島内関係者以外は乗船できなかったんですよね。渡航自粛要請が解除されたのはつい1カ月前。

このキップを再び手にすることが出来る日が来るとは思いませんでした。いろいろな意味で…。

乗客は15人。うち釣り人3人、工事関係者3人。猫目当てと思われる乗客は私を含めて9人だけ。
かつては平日でも朝の便は20人くらい乗ったものですが、コロナ禍の影響が尾を引いているのか減りましたね…。

8:00出航。
青島までは35分。海は穏やかですが視界はよくないですね。薄い靄が立ち込めている感じ。風がなくて気温が高いということでしょうね。今日の天気予報は曇りだけど予想最高気温は24℃だから。

青島の港へ。三年ぶりに見る風景。

船を下りて陸に上がって…。
一目でわかるのは、やはり猫の数は減ったなぁということ。

ご存じの通り4年前に一斉TNR(避妊去勢)が行われた青島。かつては150匹いた猫ですが、それ以来自然減で現在は60~70匹ほどでしょうか。

減ったのは猫だけではありません。7年前15人いた島民は私が前回訪れたときにすでに9人に減っていましたが、現在はわずか5人。
この島民数の減少がTNRのきっかけになったのですが。このままでは猫を世話する人がいなくなってしまう。これまでのように仔猫が生まれて猫の数がずっと維持されていても世話をする人がいなくなってしまえばこの猫たちは…そこで一代限りのさくら猫にしようというのが苦渋の決断でした。
だから…船が着いた時も3年前は20~30匹の猫たちが桟橋に寄ってきていたものですが、今日桟橋で見たのはわずかに6~7匹。
ちょっと寂しい気もしました。でも仕方ないですよね。
新たに仔猫が生まれることもないですから、猫たちも全体に高齢化が進んでいます。

コロナ禍の影響もあって、桟橋から向かって右手の集落には規制線(黄色と黒のバー)が設けられ、島民以外の人は進入禁止になっています。現在、残った5人の島民の方々は皆この規制線の内側にある東側の集落で暮らしておられます。ということは、西側の集落は無人になってしまったということ。3年前はまだ西側集落で暮らしてる方もおられたのですが。
この島は高齢者ばかり。三年の間に入院を余儀なくされて四国本土に移られた方、ご家族の下に引き取られた方、亡くなられた方…予想されていたことではありましたが、もうこの島が無人島になるのもそう遠い将来のことではないかもしれない。漁船の数も減ったように思えますね。

桟橋から左側に歩くと港を見下ろしながら徒歩1分で着く広場。ここが「ネコエサ場」として島の外から来た人が猫に餌をあげてもいい場所、とされています。
ここ以外の場所で餌やりをしてはいけません。

そこには20匹近い猫が集まってきました。でも以前に比べれば少ない。

馴染みの顔を探したんですが…少なくなりました。フォトジェニックだったユズ君も懐っこかったみーたんももういなかった。もっとも立ち入り禁止になっている東側集落にいたのかもしれないですが、二匹とももともと西側をメインに歩き回っていた子でしたから。青島の猫たちの平均寿命は6~7年。そう考えると3年のブランクは大きいな…。

でも、この子はいました!

ドキンちゃん。

この子は仔猫の頃から知ってます!キミは元気だったんだね。
確かもう9歳になるはず…恐らく今のこの島の猫たちの中では長老の部類に入るんでしょう。見た目、さほど「老い」を感じさせる姿ではなく昔のままのお顔を見せてくれました。

青島のスターでしたものね、ドキンちゃん。フォトジェニックなのも以前のまま。ちょっと嬉しかった♪

かつて「住民15人・猫150匹」と言われ、TVなどで紹介されて一躍有名になった青島。
朝夕二便の定期船には土日ともなれば乗り切れないほどの人が長浜の桟橋に押し寄せ、この静かな島が喧騒に包まれた時期がありました。本来観光地でもなんでもない島。宿や商店はおろか自動販売機もない漁業の島。そんな島が「猫の楽園」と言われてマスコミに取り上げられさまざまな有名人まで訪れるようになる…。
しかし正直言って、島の方々にとっては迷惑だったと思いますよ。
朝の船で来て帰りの船は8時間後。当然昼食も飲み物も事前に本土で買って持ち込まなければならないのはわかるはずですが、ロクロク下調べもせずに渡ってきて「なんで自動販売機のひとつもないんだよ!」とか「食べ物売ってるところないの?信じらんな~い!」などと騒ぐバカ男やアホ女。さらには猫を追って民家の敷地内に勝手に入り込んで写真を撮ろうとするバカップル。
持ってきた弁当の空き箱や空き缶・ペットボトルを島のあちこちに捨てて帰る非常識オジサン・傍若無人オバサン。
同じく島の外から来ている身として、肩身狭かったですよ…。

でも救いはそういうミーハーな連中は一度この島を訪れるとその不便さに辟易して再び来ることはほとんどない。リピーターにはならない、ということでしたが。

マスコミ、とりわけテレビの影響というのはすごいですね。
でもマスコミもこの島の本当の姿をもっと正確に伝えていてくれれば、と思いますよ。
「猫の楽園」。
マスコミがこぞってこの島につけた名前です。罪な呼び名をつけたものです。
どこが楽園か…確かに島の人たちから面倒は見てもらえる。でも彼らの本当の生き様を見たうえでそう言っているとは思えない。マスコミというのはいかに無知蒙昧な人間の集まりかと思ってしまいますよ。いや実際そうなんだろうな。ディーゼルカーを平気で「電車」とマイクで紹介するくらいだから。アーパーだね。それで大学出てるんかい!
猫150匹。その数だけ見ればたくさんの猫が楽しそうに暮らしていると思うかもしれません。素人がそう思うのは仕方ない。でも報道の正確さを要求される彼らがそんな素人判断をしていいのかどうか。
毎年仔猫がたくさん生まれている。それなのに猫の数が爆発的に増えてしまわないのはなぜか、ということを考えないのでしょうかね??

これは青島に限ったことではないでしょうけど、春から夏にかけて生まれる仔猫の実に80%近くが冬を越せずに死んでしまうのです。
その原因はさまざまです。カラスなどの天敵に襲われたり、猫風邪などの病気にかかったり、親猫が死んでしまったり、親離れしたあと寒さをしのぐ術を知らずに衰弱死したり。
そして大人の雄猫に殺されたり。これはご存じの方も多いかもしれないですが、青島のように狭い地域に多数の猫が多く集まるところでは雄猫は自分の子孫を残そうとするあまり、他の雄が産ませた仔猫を食い殺して改めて雌を発情させて交尾しようとすることがあります。そしてもし雄と雌の数のバランスが均衡を失い、雌の方が少なくなったりするとそれは頻繁に起こるそうで。
青島ではそうした悲劇が多発していたのです。
猫の世話をしている島民の方々にとっては、朝掃除のために歩いてみたら食い殺された仔猫の死骸がカラスに突かれているという光景を見るのは非常につらいことであったといいます。
無知蒙昧なマスコミいやマスゴミの諸君、これでも青島を「猫の楽園」であると言い切ることができますか?
「猫好きの楽園」ではあるかもしれない。でも猫たちにとって決して楽園ではないのですよ。
もし猫にとって「楽園」というものがあるとしたら、優しい飼い主に守られた暖かい家の中だけだと私は思っています。
そして全頭の避妊去勢が行われるきっかけになったのも、もちろん島民の数が減ってしまって将来面倒を見てあげることができなくなるという危機感が第一義でしたが、もう一つはそうした悲劇を島民の方々がもう見るに忍びないと思われているということがあったためなのです。
このことはほとんどのマスコミは伝えなかった…「猫の楽園」と呼ばれた島の真実を。
私は折に触れ、以前の旅日記の中でも書いてきたことですが、「わ~、たくさんいる~。かわいい~」とはしゃぐ観光客の感覚で記事を書いて欲しくないんですよ。今でもそれは直ってないですね、マスコミ各社。特にTVに至っては視聴率稼げればなんでもアリ的なやり方ですから。日本の民放各局ってアメリカのイエローペーパー並みに程度が低い。ノータリンの寄り合い所帯。

この島の猫たちに遺された寿命はおそらく長い子でも7~8年といったところでしょう。
おそらく4~5年後には猫の数は今の半分以下、20~30匹程度になってしまっているでしょう。いやもっと少なくなっているかもしれない。でもそれでいいのです。
中には四国本土に引き取られていく子もいることでしょう。そうやって家猫として暮らせれば本当の「楽園」にたどり着くことができるでしょうから。
青島の猫を支援する人たちは今、そうした里親探しに奔走しています。

そしていつかこの島は人も猫もいない無人島になるでしょう。
それはそれで仕方のないことなのですよね。そうなるまで私はまだ何度か訪れて彼らの姿を記録していきたいと思っています。

この島の猫たちは飼い猫ではありません。でも首輪や鈴をつけられている子が多い。首輪や鈴をつけさせてくれるということはそれだけ人間を信頼している証拠です。だから我々外の人間が近づいても逃げるということはほとんどない。つまり、家猫として引き取るためのハードルは低いんですよ。もし、引き取ってもいいと思われる方々(できるだけ愛媛県近傍の方がいい)がおられたら名乗り出ていただきたいですね。

こんなに懐っこいんですから。(^^;

青島の船着場から西側の広場まではわずか100m弱。私たちが歩ける範囲は非常に狭いものです。でも猫たちの姿を見ているといろんな仕草を見せてくれて飽きることがありません。
ある意味、狭い範囲だからこそじっくりと彼らの姿を追えます。

港に舫われた漁船の合間を歩き回っている猫たち。
入れ替わり立ち替わりいろんな猫が船に向かって行くのを見ているだけでも飽きません。

もちろんゆっくりマッタリしている姿も。

この日私と同じ船でやってきた人たちも純粋に猫が好きだという人たち。ミーハーな人はいません。
だから猫たちにむりやりポーズを要求したり、いたずらに餌をバラまいたりはしません。猫たちのペースに合わせてカメラを構えます。

ある意味8時間も時間があるというのは心の余裕もできますしね。

時間がゆっくり過ぎていく…。

青島神社の鳥居の前にある灯篭。ここはときどき猫たちが暑さしのぎに入り込みます。一匹が出るとまた一匹が入って。(^^;

なかなか面白いです。

誰かが面白半分にその前に千円札を置いてみたんですが…。

ガッシリ抱えてしまいました。(^^;

こうなると返してちょうだいとは言えないですよね。(^^;
猫神様へのお賽銭ということで♪

この青島神社の鳥居のあたりはいろんな猫たちが上り下りすることがあるので、けっこういい写真が撮れますよ。
ただこの日はずっと上空曇りがちで青空が見えなかったのは残念でしたが。

こうやって見ると始終シャッター押してるように見えるかもしれないですが、実は撮影してる時間ってトータルしても1時間半ないんじゃないかな?それよりも猫と一緒にマッタリしたり遊んだりしてる時間のほうが長いです。猫の傍らでアグラかいて猫の背中撫でてたりね。ときどき思いついたらカメラを持つ、そんな感じかな。

写真、とくに動物写真ってそれが一番いいと思うんですよ。人間のペースに猫は合わせてくれない。だからこっちが猫のペースに合わせる。
それが一番いいように思うし、そうしたほうがいい写真が撮れているように思えます。
時間はたっぷりあるんだから…。

今日も風は穏やか。水辺はやっぱりいくらか涼しい。

船の上で作業をするKさんに甘える子。
この方は昔からずっと先頭に立って猫たちの面倒を見て来られた方ですが「この子たちが皆天寿を全うするまで島に留まりたい」と仰っています。

夕方の船が着きました。
夕方の2便は、15:05に青島に着きます。折り返しで長浜に向かうのは16:15。私もそれに乗って帰るわけですが青島に1時間10分留まるため、この夕方便でこの島を訪れる人もいます。見ると5~6人の人が下りたような。ちなみに夕方便に乗るときは注意が必要で、この船は34名が乗客定員。朝乗った人は島民以外は夕方便で折り返してくるわけですから夕方の船に乗れる人数は定員の34人から朝の船に乗って行った人の数を引いた分だけ。つまり朝の便で20人乗って行ったとすると夕方の便に乗れるのは34-20=14人ということになります。ひところ、土日は朝の便で定数一杯の34人が乗ってしまって夕方の便は誰も乗れないということがあったそうな…。
私は西の防波堤へ。

かつて西側の集落にも人が住んでいた頃はこの防波堤付近もたくさんの猫がいたものですが、こちら側の集落が無人になってしまってからあまり猫たちが来ることはなくなってしまいました。
でもこの時は、さっき広場でジャラシで遊んでくれた茶トラ君が後をついてきてくれて…。

モデルをしてくれました。

ハマヒルガオが咲き乱れる防波堤。
かつてここではたくさんのいい写真を撮らせてもらいました。6年前にユズ君にモデルになってもらった写真は今もって最高傑作だと自負していますが、彼はもういない…。

結局今日は一日白い雲が空を覆ったままでしたね。時折陽は差したけど青空は見えなかった。
そのおかげでさほど暑くはなかったけど。まあ、影ができない分写真撮るのは楽でしたけどね。(^^;

16:00になりました。
そろそろ船に向かいましょうか。

ちょっと名残を惜しんで猫たちをスナップ。

定期船「あおしま」が待っています。

「そろそろ出すよう~!」
船長さんの声。
一日ゆったりと猫たちと過ごせた青島。
この島の猫たちに会えるのはあと何年なのか…それは私にはわからないけれど、船が通い、猫たちが健在な限りはまた訪れたいと思っています。
それまで元気で、青島の猫たち、そして島民の皆さん!



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