ねこたび日記

2022年5月19日(木)晴れ 佐柳島 一日目 
朝の多度津港。

宇多津8時前の列車に乗ってきました。多度津の駅から港までは歩き慣れた道。三年ぶりという感じがしませんでしたね。
船のキップを買います。
あれ?以前は往復券って売ってなかったと思うけど。

復路は往路から14日間有効だそうです。
ちなみに三年の間に船の会社名が変わっていました。以前は「三洋汽船」だったんですが…多度津~佐柳航路は分離して子会社化したようで「たどつ汽船」となっていました。三洋汽船というのは昨日真鍋島に行く時に乗った船がそうです。香川県側と岡山県側とで会社を分けたんですね。ちなみに土曜の午後だけ真鍋島本浦から佐柳島本浦に渡る船が出るんですが昨日は木曜。土曜だったら使ったんですけど。
「新なぎさ2」が来ました。久しぶりだなぁ~。

9:05出航。
今日は朝からけっこう暑いので船内ではなく船尾のオープンデッキで過ごすことにします。
港を出ていくと大きなクレーンと背の高い高圧線鉄塔。これももう、見慣れた風景。

今日も備讃瀬戸の海は穏やかです。船が切る合成風が心地いい。

途中高見島を経由して佐柳島へ。なんか、「帰って来たなぁ」という感じがしますよ。(^^;

佐柳本浦9:55着。下りたのは地元の方以外は私だけみたいな…平日でしたね、今日は。

さっそくお出迎えしてくれた子がいます。ゴロンゴロン♪

何も変わっていない…3年ぶりなんだけど、つい昨日までいたような不思議な感覚。

港を離れ本浦集落へ。歩いていくと何匹もの猫たちとすれ違います。集落の中では猫を見ない場所を探す方が難しい。

ここの子たちは人をあまり警戒しない。というか人を疑うということをほとんど知らない。それが佐柳島の猫たち。

と言って、餌欲しさにゾロゾロ寄って来るわけでもない。妙に観光地化された感じもない自然な姿なんですよね。

長年、島の優しい人たちと共存してきた佐柳島の猫たち。

この島、猫密度という点からいえば決して高くありません。島の人口は約70人。島全体で100匹ほどの猫がいて「人より猫が多い島」ではありますが、青島のように狭い場所に集まっているわけではなく互いに3kmほど離れた本浦と長崎の二つの集落に分かれていて、しかも両集落ともかなりな広さですから猫が密集している感じはなくてあっちに数匹、こっちに数匹というように散在しているので「猫だらけ」を想像してきた方にはちょっと物足りないようです。マスコミにあまり取り上げられないのもそんな「地味さ」からでしょうね。

でも私は、それでよかったと思っています。なまじマスコミで名を上げると本当の猫好きだけでなくただのミーハーが集まってくるから…。田代島のようにはっきり猫を観光の目玉と打ち出していてそれなりの受け入れ対策もしっかりしている場所は別ですが、そうでないところはミーハーが押し寄せて喧噪だけを残していく。島の人たちの静かな暮らしを乱し、ゴミは捨てていく、他人の家の庭に無断で入る、道の真ん中で猫の餌をばらまく…福岡の相島も愛媛の青島も一時期、そんな状態になってしまったことがあります。そういう意味ではコロナ禍で渡航自粛要請が出て冷却期間が置かれたのはよかったような。

本当に猫が好きな人ならば、そうした行為が猫たちにどんな形で跳ね返ってくるか心配になるから決してそんなことはしないはずですが。
ミーハーというのは「旅の恥はかき捨て」でやりたいことだけやって帰っていきますからね。救いはそういう連中はまずリピーターにはならないということですが、たった一度であっても来てもらいたくない。本当に「猫を愛する人」だけに来てほしい。

5月半ば。まだ花がきれいに咲いていました。
本浦集落南端にある乗蓮寺に残る埋め墓。向こうに見えるのは高見島です。
この佐柳島には、今は珍しくなった「両墓制」による墓地が本浦と長崎にあります。遺体を埋める「埋め墓」と供養のための「詣り墓」を別に建てるもので、かつては日本各地で見られましたが現存しているのはこの備讃瀬戸の島々くらいでしょうか。中でも現役に近い形で残っているのがこの佐柳島。埋め墓の墓碑には「平成」の年号が刻まれたものもあります。

境内にはこのような碑も。

幕末、アメリカに渡った咸臨丸の乗組員として二名の島民が選ばれていたんですよね。
本浦集落の北側にある八幡神社。ここは猫たちの憩いの場でもあります。

今日は上空薄雲がかかってはいるんだけど気温は高い。ひとたび雲の切れ間から陽が差すとかなり暑く感じます。

猫たちは居場所を見つけるのが上手ですね。
さて、正午になったので今日の宿泊先「ネコノシマホステル」へ。

ここは5年前、かつての佐柳小中学校の建物をそのまま利用して若いご夫妻が宿泊施設としてオープンさせたもので、昼間はランチのみの食事もできます。
また常時ホステル内には数匹の猫がいて、さらに生まれたばかりの仔猫なども成猫になるまで保護しています。
泊っていると夜中に猫の声が聞こえるという猫好きにはたまらない宿かも。
とりあえず昼食を。カレーライスです。ただ、一日二十食程度と提供数が限られるので予定がはっきりしている方は予め予約をしておいたほうが無難。

そして食後には「いちじくのアイスクリーム」。
これが美味しい♪

チェックインは15:00からなので、荷物だけを預けて再び八幡神社に足を向けてみると…ちょうど陽が差してきて。

猫たちはみんな日陰を選んでマッタリ。

寝てる子も。「ネコ・シエスタ」ですね。(^^;

しかし、猫ほど寝ている姿が似合う動物っていないでしょうね~。他の動物だと「なんだ寝てるのか」ということになるんですが、猫の場合寝てるだけでも充分絵になる♪
「ねこ」の語源が「寝る子」から来てるというのも納得です。

よく寝てる猫を起こして写真を撮ろうとする人いますが、それはやめてほしいですね~。彼らにとって眠りは重要ですから。寝てる姿をどう絵にするか、それも写真家の腕ですよ。

いいアクビだね~♪(岩合さんの口調で)
本浦集落は南北に細長い。そのそこかしこに花が咲いています。植えた花も野生の花もあって猫たちはその間を自然に行き来しています。だから花絡めの写真を撮るのに苦労するということはありません。半日この島をぶらついていれば必ず数枚は撮れます。

この子は…あれ?みるくっちさんとこのモカちゃんに似てるような。(^^;

民家の石垣。やはり瀬戸内独特の家の造りですね。長屋門を構えているお宅も数軒あります。

そんな風景にも猫はしっかり溶け込んで。そう、この島、黒猫もけっこう多いんですよ。

時間がゆっくり流れていく…座って猫と見つめ合っていたら…。

こっちもアクビが移ってしまいました。あ~~あ~。(^^;

いい陽気です♪
浜辺の堤防へ。今日は風もない穏やかな日和。

ちょっと空が白いから海の色が出ないのは残念だけど。

後に見えるのは高見島。あの島、本土の多度津側から見るとまるで富士山みたいな形に見えるんですよね。

ちょっと角度を変えると佐柳小島が入ります。ちなみに小島は無人島。「こじま」ではなく「おしま」と読みます。

ここは大天神社の登り口。「大天神社 おまいりみち」と書かれてます。
7年前初めて来た時に登ったことがあります。本当に景色のいい場所で…。

でも最近は参道にイノシシが出没するらしくて登るのは禁止だとか。

ここ数年またイノシシが増えてるらしいんですよね。最近は集落近くにも出るらしくてネコノシマホステルでも「日没から日の出の間は危ないので外出は控えてください」と呼びかけてます。あそこは集落と集落の間だものね…。
そろそろチェックインの時間なのでホステルに引き返しつつ、途中の道で会った子とジャラシで遊んでみたんですが、

この黒猫君、ちょっとトロくて。(^^;

見ていたお姉さま方に笑われていました。

ネコノシマホステルに戻り、チェックイン。この宿は前述した通り昔の学校の校舎をそのまま使っているのですが、今回私が泊るのは理科室。
ベッドが三つ置いてありますがエキストラベッドを入れれば4人まで宿泊可能。

棚にはビーカーやら試験管やらといった昔の実験器具などが並んでいます。
あ、理科室につきものの骨格標本はありません。アレ置いておくと夜怖がる人がいるそうで。(^^;

窓際には長椅子と机が置いてあります。部屋には鏡や洗面台はなくトイレとシャワー室は別棟ですが、これで充分。
実はこのホステルもコロナ禍のあおりをうけて、一昨年の夏から約二年間休業状態でした。というより佐柳島自体に外来者への渡航自粛要請が出ていたんですよね。高齢者の多い島ですから。しかし経営者のご夫妻はコロナ禍の中も島に留まり続けて島民の方々とともにずっと暮らしてこられました。
「ふるさとの島を蘇らせたい」
その決意で大阪から移住された若いご夫妻。生活のため一時的に島を離れる選択肢もあったはずです。でも、そうしなかった。

今年の春、渡航自粛要請が解除に。
「『佐柳島が好きだ』と言ってくれる人が一人でも増えてくれれば」
その想いを貫いて、ホステルの営業を再開。
島民の方々と、島猫たちと一緒に暖かく外の人たちを迎えてくれる…そんな島を応援したくならないはずがない!
さて日没までにはまだ時間があります。夕食は19:00。ちょうど日没時刻あたり。東京に比べると30分近く遅いんですよね。
部屋に荷物を移し、再びぶらぶら歩き。
この15:00過ぎという時間が一番暑かったような。(^^;
ゆるい海風のおかげでまだ心地良く感じますけど、27℃まで上がっていたんですよね。半袖でもいいかなと思うくらい。

最初はポーズ取ってくれていたこの子も…。

「もういいでしょ?」とばかりゴロンと。(^^;
そのすぐ横では…二匹。

天下泰平ですねえ♪

港でも。27℃という気温は猫にとっては昼寝にはちょうどいい気温なのかも。あちこちで皆マッタリしてました。(^^;

薄雲が広がっているんですけど、時折雲間から陽が差すとちょっと暑い。ちょっと凹んだ側溝はいくらか涼しいのかな??

ここでもアクビ。町だと外猫のアクビってそうそう見られるものじゃないんだけど、今日はいったい何回目か。(^^;
皆人に対する警戒心を解いている証拠です。

まだ恋の季節は続いています。

佐柳島ではTNRはごく一部の飼い猫にしか行っていません。だから毎年猫たちは恋をし新しい子供たちが生まれてくる。

それでも猫の数が爆発的に増えるということはありません。これは自然の法則かもしれないけど生まれた仔猫のうち翌年の春を迎えられるのは2割ちょっとなんですよね。結果的に生き残った仔猫の数が天寿を全うして死んでいく猫たちとちょうど相殺される感じでバランスが取れているんです。餌こそもらってはいても天敵や寒さそして病気から身を守ることまでは残念ながら島民の方々もサポートしきれません。天敵は…カラスやトビ。猫はいったん大人になってしまえば恐れるものはほとんどありませんが、生まれて1~2ヶ月の仔猫はよくカラスやトビに襲われます。命を落とす仔猫の5割はこのためですね。

ある意味、野生動物とその点は同じなのでしょう。猫にせよキツネにせよ、多胎性で一腹で4匹・5匹の子を産むのは自然界のそうした厳しさから種を守るためにそうなったと言っていいと思います。飼い猫のように病気になれば即病院へ、ということまではしてあげられないのです。こればかりはやむを得ない。
それでも、この島の猫たちは都市部で暮らす地域猫たちよりも格段に幸せだと言えると思います。
猫たちが覗き込んでいるのは…。

本浦集落の南側にある山路商店。ここのお母さんも猫たちの世話をされている佐柳島のたくさんの方のおひとり。
ここには朝と夕方、10匹近い猫たちが集まってきます。

お母さん、もう80歳を超えていますがまだまだお元気で。
船のつく時間になると乗船券の販売で港に出向くんですよ。船会社から委託されているんですよね。
「あら、久しぶりやね」
私のことを覚えていてくださいました♪
陽がかなり傾いてきたのでホステルへ戻ります。その道すがら、猫が集まっているところが何カ所か。

ちょうど晩ご飯の時間。島の方々があちこちで猫たちに餌をあげていました。

ホステルに戻ってまずシャワーを浴び、それから夕食。
一日歩き回ったんでお腹が空きました。
ん~、猫旅って健康的でいいなぁ。(^^;

食堂は学校の旧職員室。昔ながらの机について食べるも、ソファーに座って食べるも自由。場所が選べます。さっきのお昼もここで食べたんですけどね。

夕食はこんな感じでした。美味しかったですよ♪

箸置きが猫なのはすぐわかると思いますが、その上にある小魚を乗せた小鉢、実はこれも猫の形をしているんですよ。
窓の外からは猫の声が聞こえて。(^^;
食事を終えて、あとは部屋でゆっくり瀬戸内の灯を眺めて想いにふける…机があるので一応ネットもできます。
三年前よりもWi-fi繋がりやすくなりましたね。
本当なら夜は外で星の写真でも撮りたかったんだけど(ミニ三脚持ってきたんで)、「夜間はイノシシが出ると危ないんでホステルの外には出ないようにしてください」ということなので断念。まあゆったりと部屋で過ごすのもいいでしょう。
心地良い疲れと満足感で22:00前には眠りに就いていました。

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