「転職支援システムの提案」(労働教育改革案)

なぜ、転職は困難であるのか?


経済が縮小してリストラされる会社員(失業者)は増える一方である。 日本航空も経営再建のために大幅なリストラを断行しているが、リストラ対象者が転職するにも業種・専門・スキルのミスマッチで 容易に転職を行うことは困難な状況である。企業が転職斡旋業者を介して転職支援を行っても、上記の理由で支援効果は薄い。

このような現状を受けて、政府は、会社員の失業後の転職支援として、パソコンや簿記等の技能を専門学校や職業訓練校で 修得させる援助を行っている。しかし、失業者がこれらの技能を修得しても、やはり、経歴・スキル・年齢等のミスマッチは 埋めることが困難で、希望する職種の業種に就くことは難しい。 現実の有効な失業者対策としては効果的に機能していないのが現状である。

なぜ、企業や政府が行う転職斡旋対策が有効に機能しないのか,その原因を考察すると、それは企業内教育に欠陥があると考える。

即ち、企業は企業が求める人材を育成するために、従業員の個々人にその職種の専門に特化した教育を行うが、 それ以外の教育・研修は行われていない点に原因がある。つまり、企業は、その業種・職種の専門バカを養成するのに専念し、 万が一の解雇に備えての従業員の転職準備教育を行っていない点に原因があると推測する。

確かに、自己啓発のための教育を実践している企業もあるが、それは自己啓発に過ぎない。 資格取得を奨励しても、それも職種に関連したものしか認められない。 転職に備えての教育・スキルを身につけることはできないのである。ここに、専門バカ教育の欠点がある。

以上の点から考察すると、転職準備教育は、企業在職中に行われなければならないと思慮する。 失業後に技能教育を行っても遅いのである。

そこで、転職のための労働教育を改革する案を提案する。

まず、企業では企業内部で異職種ローテーションを促進する。

例えば、一定期間、設計部から知的財産部へ、知的財産部から営業部門へ、営業部門から品質保証部へ、 品質保証部から購買部・財務部等へと配置転換を行う。これで、職種のスキルは増加する。

勿論、パソコン・財務研修等の最低限の教育は企業内部で行われる。これは、全従業員に対して行われなければならない。

次に、一定期間、希望する従業員に対して、異業種体験訓練を許可する。

このためには、異業種企業間で、人材交流が実施されなければならない。これで、専門バカ問題は解消される。

これらは、例示であるが、労働基準法等で法定化されることが望ましい。

これらの企業教育が実践されれば、万が一に備えての失業者の転職は解消する方向に向かうと考える。

そして、政府は、これらの教育を行う企業を減税する。減税分の損失は、 失業後の技能訓練費等の補助金減少効果と転職の成功による失業者の減少効果でカバーできると考えられる。

勿論、このような施策を講じると、安易に転職を助長する欠点があるとの指摘もあるかもしれない。 しかし、従業員が多彩なスキルを持つことは、その企業にとっても専門バカ問題を解消し、 柔軟な発想を持った人材を育成する効果を奏するのであって、問題はないと考えられる。

なお、企業では、官僚の天下りとは異なり、定年後の再就職は自己責任である。これら施策は、定年後の再就職の機会を提供する意味でも意義があると思われる。

これらの施策は、企業・政府のリスク管理であり、国家・社会にとって重要であると考えられる。検討を求む。

ただし、この提案は大企業・準大手企業では成果があるかもしれないが、中小企業では機能しないという問題がある。 今後の検討課題である。



− 2011/03/03 written by kazkaz −