−「新特許戦略の構想」−

特許戦略を考え直す・・。


最近思うのですが、豊富な財源を持つ企業を優遇し、低所得者層の個人発明家を冷遇する日本の特許制度に疑問を感じています。

低所得層の個人発明家が特許を取得するには厚い壁があるのです。

まず、申請手続きの困難さが挙げられます。高い出願手数料を払って弁理士に明細書の作成依頼をしなければなりません。 個人出願だと、記載不備等で折角の発明も台無しになる可能性が高いからです。 そして、この明細書作成費用と出願手続き代行料と出願費用が馬鹿になりません。 特許法では、低所得者層のために手数料の減免措置が規定されていますが、わずかな額です。 また、拒絶理由等の中間処理手続きにも国からの援助はありません。 全て弁理士任せにするには膨大な費用が掛かるのです。 弁理士会による支援制度があるようですが、手続きが複雑で、良く分かりません。

そこで、弁理士に特許出願を依頼せずに個人出願する場合を考えますが、これにももっと大きな壁があるのです。 明細書等を作成してオンライン出願しようと思えば、その手数料。書面出願する場合は、電子化手数料が掛かります。 そして出願費用。電子出願の当初は、CD出願も認められていたのですが、オンライン出願になってからは、CD出願は認められません。 オンライン出願ができなければ、書面で出せというのです。そして、書面を電子化する費用を負担させるのです。 なんか、電子出願制度と矛盾していて個人出願を馬鹿にしていますよね。

また、定められた様式に従って明細書等を作成する手間や出願後の中間手続き等も個人で対応しなければなりません。 これらの手続きは、専門的知識がないと無理です。

また、致命的欠陥は、外国出願の援助制度がないことです。

折角、高度の発明をしても、日本の特許制度が認めるのは、日本出願の手数料減免と国内での特許取得だけ。 外国出願しようと思えば、翻訳料と出願費用等で膨大な出費が必要です。 これらの出費と手続きは、低所得者層の個人発明家には無理です。

外国出願ができなければ、その特許権の効力は日本国内にしか及ばないので、 どんな大発明であっても、日本国内の企業からしか特許収入を得ることしかできず、その費用回収額はほとほとです。 出願もしない外国に、無償で発明の開示と利用を提供するようなものです。 それは、日本国民の知的創作を保護しないのと同義です。折角、発明を開示しても、保護されない。 そんな矛盾を包含しているのです。これは、知的財産立国を標榜する日本国の経済政策の致命的欠陥です。

今、資本主義経済が飽和し、投下した資本を効果的に回収できない企業での雇用促進は困難な状況です。 個人が独立して起業することが求められる時代です。 そのような状況下にあって、経済的資産がある企業の特許を優遇し、 個人を冷遇する日本国の特許戦略は明らかに欠陥的要素を抱えているのです。それに気づかない国家の目は節穴です。

今、時代は、個人にこそ向けられるべきだと思うのです。そのための特許戦略が立案されなければならないと思うのです。



− 2010/08/08 written by kazkaz −