−読書感想文の書き方(所感)−
『車輪の下』を題材に・・。
ヘルマン・ヘッセ著「車輪の下」は行間が広い作品です。どこに的を絞って感想文を書くかは、非常に難しいものです。しかし、よく読みこんでみると、各章各章に重要な描写があることに気づくと思います。
例えば、第一章の神学校への受験の描写です。
郷里の期待を一身に背負った少年(ハンス)は、難関の州試験に臨みます。そこでハンスは、隣の受験生に妨害されて、試験に失敗したと思い、自暴自棄になります。
意気消沈したハンスは、試験終了後、次のように落胆します。
『ハンスは、三十分ほど窓枠に腰をかけて、磨いたばかりの床板をじっと見つめながら、もしほんとうに神学校も、高等学校 も大学もだめだとしたら、どうなるんだろうと想像した。そうなったら、チーズ屋の小僧か、事務所の見習いにやられるだろう。そしたら 一生涯、自分は軽蔑し、どんなことがあってもそんなものにはなりたくない。あんなくだらないあわれな連中のひとりになってしまうじゃ ないか。ハンスのととのった、利口そうな少年らしい顔が怒りと苦しみにゆがんだ。』(40頁2行目乃至7行目)
ここでは、試験に失敗したかと思う切羽詰った少年(ハンス)の受験心理が読み取れます。結局、ハンスは2番で州試験に合格して安堵するわけですが、このような受験心理を自分と重ね合わせて考察するだけでも立派な 感想文が書けると思います。
要は、どれだけ本を読み込み、自分と共感する部分を見つけ出すか、批判的となる部分を見つけ出すかにかかっていると思います。
よく、感想文の書き方を紹介するサイトでは、本を読んで自分の感じたことをそのまま書けばよいとアドバイスしているのをみかけます。しかし、 本全体を読んでも、そのまま感じたことを書くのは無理です。本をじっくり読み込んで、自分が共感した部分を抽出する作業が最も重要なのです。
そして、その部分を何回も読み返してみる。そうしてみることで、おのずと感想文が書けると思います。
結局、州試験に合格し、無事神学校に進学したハンスも、受験の燃え尽き症候群で神学校を中退し、死という破局を迎えることとなるのですが・・。悲しい結末です。こういうような 境遇に陥ったハンスをどう見るか、『車輪の下』の意味するものは何かを考える。これが全体像の考察になります。
このように、重要な部分を抽出することができれば、感想文はどのようにも書くことができます。それは、どの本にも共通することなのです。 読書中に気になった部分は、鉛筆で線を引いておきましょう。そこで、読み返す部分が分りやすくなります。あとは、その部分を繰り返し読んで、 構想を煮詰めていくだけです。
感想文は難しくないと思って頂けたでしょうか。皆様の一助となることを願って・・。