北アルプス単独縦走
2011年9月6日(火)〜8日(木)

昨年初めて経験した北アルプスの素晴らしさが忘れられず、輪番集中休暇を利用して今回は単独登山を実施した。
今回は単独登山ということもあり、とにかく無理をせず、柔軟に日程を変更することを心がけた。
行動計画を立てたが、あくまでも槍ヶ岳登頂を目的とし、歩くことを基本に、走れる所は無理せず走ることを基本とした。
結果的に、行動を一日短縮した。
体力の限界だった。判断は正しかった。
【装備】
グレゴリ-のISOのザックを担ぎ、ハイドレ−ション2リットル、ペットボトル0.5リットル、行動食としては、ドライフル−ツ、蜂蜜、チョコレ−ト、アミノ酸を持参。
雨具は、ゴアテックスの上下、防寒着として軽量のダウンジャケット、懐中電灯、予備の電池、着替えのシャツ1枚、山岳保険証、お金、胃薬、下痢止め、テ-ピング、地図、コンパス、ホイッスルと重量は6キロ程度である。一般の登山者の半分以下かも知れない。
ダブルストックにトレイルランシュ−ズといういでたち。
10月に開催されるハセツネCUP、そして、来年5月に開催されるUTMF(ウルトラトレイルマウント富士:100マイル)の練習の位置づけでもある。
なによりも、初秋の北アルプスの大自然を満喫することが最大の目的であった。
9月5日(月)
自宅を14時に車で出発し、新穂高温泉の登山者無料駐車場へ21時到着。
平日ということもあり、1/3程度の状況である。
生憎の雨模様であるが明日の午後あたりからは晴れそうだ。
車の中でシュラフに包まって寝る。夜中に何度か目が覚めるが、まずまず熟睡できた。
9月6日(火)
5時起床。6時に新穂高温泉を出発し、槍ヶ岳へ向かう。
気温は20℃。外は生憎の霧雨。晴れることを祈る。
(以下、クリックしても拡大しません。すみません。)



霧雨の中、右俣林道を登る。上流で工事をしているようで途中で大型車と何度もすれ違う。槍ヶ岳までに出会った登山者は3人程度。
周りには誰もいない。
穂高平避難小屋に到着(右)。体調はまずまず。早歩きで上り続ける。



林道の舗装路から山道に入る。白出沢出合を抜けて、滝谷避難小屋を通過。木の橋を渡り、槍平小屋へ到着。(9:18)



標高が2000メ−トル近くになる。まだ、森林限界ではなく、たくさんの花に見とれる。
FirstAidが設置されていた。救急セット、食料等入っているようだ。登山の厳しさを噛み締める。
前後左右誰もいない。薄くなる空気を吸い込み、必死で一歩ずつ踏み出す。かなりキツイ。
山は自己責任。捻挫に注意しつつ槍に向けて上る。
天気は回復し雨も止んできたが、霧で槍ヶ岳は見えない。



森林限界を超えた。もう、ここの上は樹木は生育できない厳しい環境だ。飛騨乗越に到着(中央)。
憧れの槍ヶ岳が姿を現した(右)
天気が回復し青空が見えてきた。100歩前進し1分息を整える。これを何度も何度も繰り返す。
上を見ず、ひたすら次の赤い目印を目指す。
上りは、とにかく心拍数を150以下に抑えること。
あくまでも体感として150を超えるようであれば、立ち止まって心拍数を下げるのが良いことが今回わかった。
無理して150以上の心拍数で動き続けると乳酸が足に溜まり、1日で足が終わってしまう。
ハセツネCUPは24時間の長丁場なので、今年はこの作戦でいきたい。
何度も練習を積み重ねると、きっと心拍数150以内で早くラクに動ける体が出来てくるかも知れない。
ちなみに、このル−トは、「孤高の人」の主人公である僕が尊敬する加藤文太郎が遭難した「伝説のル−ト」である。
加藤文太郎はこのル−トで冬の槍ヶ岳に登頂し、同行者と北鎌尾根で吹雪に合い遭難した。


槍ヶ岳山荘が見えてきた。テント場は崖にしがみつくように張っている。
100%の力で上ってしまい薄い空気でクラクラする。
そして遂に、槍ヶ岳山荘到着。(13:22)
槍ヶ岳山荘にチェクインし、荷物を預けて槍ヶ岳へ上る。
岩登りはさほど苦ではないが、上に二人登山者がおり、慣れていないようで、浮石に足をかけたりして、僕は落石が怖くて怖くて上ばかり向いていた。(下の写真)

途中で、交代してもらい、クサリ、梯子をよじ登る。
一歩踏み外すと、死の世界が待っている。手に汗握り慎重に上る。
【デ−タ】
2010年 登頂者数:約50,000人
最年少:2歳、最年長:88歳。(槍ヶ岳山荘調べ:2011年8月12日現在)
標高:3,180m
ハシゴの階段数:上り:76段、下り:62段
クサリ場の数:上り:1箇所、下り:6箇所
槍ヶ岳山荘:収容可能人員:650人、料金:1泊2食付:9,000円
初登頂年:1828年
初登頂者:播隆上人
・・・それにしても・・・こんなところに1年で5万人の人が・・・!2歳の子供が・・!!
(親の顔をぜひ見てみたい。あっ、ついでに子供の顔も見てみたい。)
2006年1月1日から2010年10月23日までの北アルプス南部の遭難事故件数:239件
内死亡は約50件。
遭難事故は年々増加傾向にある。
2010年では、60〜64歳が全国で350人。
次いで、65〜69歳が340人と高齢者の事故が増加している。
2010年は過去最高。全国で2000人以上が山岳遭難事故に合っている。
内訳は、道迷い970、転滑落484、転倒309。
一日に7人が山で遭難しているという現実に愕然としつつ足を進める。
最大限の注意を払う。



遂に、念願の槍ヶ岳登頂。(14:00)
頂上は5人。それでも窮屈。みなさんと登頂を祝う。・・・といっても、今からもっと怖い下りが待っている。
怖くて足が震える。



部屋は二段ベットでとても綺麗でびっくり。
それにしても誰がどのようにしてこんな危なっかしいところに650人も宿泊できる小屋をどのようにして作ったのか?
不思議で仕方が無い。
朝から行動食以外何も食べていないので滅茶苦茶ハラペコ。カレ−ライスと生ビ−ルを戴く。・・・すこぶる美味しい!!


槍ヶ岳山荘に14:16に戻り、カレ−ライスとビ−ルを食べて夕食の時間までひたすら寝る。
夕食は17:00とのこと。とにかく疲れた。「毎日、物足りないくらいが丁度良いからね」という山屋の○山さんのアドバイス通りには行かない初日。
・・・・全力を出し切ってしまい反省。
夕食はかなり美味しい。寒くてだるまスト−ブも点灯する。
18:30と子供も起きている時間に就寝。よく寝てよく食べて疲労を回復させる。
いよいよ明日は、西鎌尾根が待っている。歩くのがやっとの状態。
9月7日(水)
快晴だ!!
4時起床。槍ヶ岳山荘では一番の早起きだった〜(笑)
とにかく、寝て寝て食べて食べて・・・・不思議と筋肉痛無し。疲労回復。
う〜ん、やはり、睡眠と食事だね〜。僕の得意な事は、いつでもどこでも寝れること。
海外出張延べ250回で鍛えてきたから・・・(笑)
風が強く寒い槍ヶ岳をモルゲンロ−トを見に行く。



天候に恵まれて、素晴らしい「モルゲンロ−ト」を堪能。
朝食はパスして、代わりに弁当を用意戴く。
僕は、朝早く目が覚めるので(毎日4時)、とにかく早く出発することを心がけている。
冬山ほどではないが、山は夜明けと共に風が吹き、雲が出、活発に動き始める。午後からは雷が発生しやすくなるという。
とにかく、山がおとなしいうちに、距離を稼ぎ、15:00までには山荘に入ることを心がけている。
・・・・ホント、山は怖い。
5:30 槍ヶ岳山荘を出発。風強く、気温が低く、手先がかじかんで痛くて仕方が無い。
指が出ている手袋をしてきたが、露出している指先が痛い。
・・・こんな時期に皮の手袋が必要だったとは・・・・(反省)
両手が痛くて仕方が無い中で、千丈乗越へ単独で向かう。



体調は良い。昨日、あそこまで限界に追い込んでも、しっかり快眠と食事をとった成果かもしれない。
西鎌尾根は、予想以上に厳しい。
とても走れる状況ではなく、緊張感と集中力で尾根を歩く。
クサリ場多々あり、対岸には、加藤文太郎が遭難した北鎌尾根が見える(中央)。
途中でハラペコになり弁当を戴く。(右)


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西鎌尾根を進み振り返ると槍ヶ岳が遥かかなたに・・・(中央)
たくさんの高山植物に囲まれて、樅沢岳(もみさわだけ)(2754に到着。(9:15)



双六小屋が見えてきた。途中、10名ほどの登山客とすれ違う。
「いったい何時に槍を出たのですか?」ときまって聞かれる。
トレイルランの装備は軽くて山屋の人達よりも半分はラクしているかも。。
今回は、全員、すれ違った人に挨拶をした。
双六小屋へ到着。(10:27)。西鎌尾根、山越えあり予想よりもかなりキツイ。
しかも集中力を持続させるのが辛い。
双六小屋でラ−メンとビ−ルを食す。
とにかく腹へって仕方が無い。これも内臓の調子が良い兆候だと思い込む。



双六小屋から三俣峠に向けて歩く。
かなりキツイアップダウンが続く。「巻き道」と書いてあるので、高尾山-陣馬山の巻き道を想像したがとんでもなかった。
とにかく北アルプスは全体的に岩の世界。勘弁してほしい急な上り下りもあった。
槍ヶ岳は遥か彼方。雪渓?も見える。



三俣蓮華岳へ上る。かなりキツイ上りを喘ぐ。昨日から両足はほぼ限界。予定を変更して三俣山荘へ向かう。(右)
三俣山荘へ到着。(13:44)。へたりこむ。・・・・・・・・・・・・・・・・

ここは、アットホ−ムで最高。
若い大学生らしき人が2名、あとは、60歳以上の中高年の人達が約30名。
ただし、ここまで来るということは、かなりの体力と脚力の持ち主ばかりで、高尾山にいるような一般のハイカ−は皆無だった。
二段ベットの上でとにかく食べて寝る。18:30 泥のように眠ってしまう。(たぶん山荘では一番早い)
9月8日(木)
4時起床。
目の前の鷲羽岳にも双六岳にも黒部五郎岳にも上りたかったけど、体力が限界。
二日続けて8時間の行動はかダメ−ジあり、予定を一日早めて下山することにした。
いつものように、朝ごはんは弁当にしてもらい、5:30早立ちする。
モルゲンロ−ト。右上が槍ヶ岳。昨日は、あの先っぽに自分が立ったのだ。
素晴らしい大好きな一瞬だ。



三俣小屋では湧き水が美味しい。双六小屋へはゆっくりと歩く。(かなり厳しい岩との戦いがある。)
双六小屋付近では、何か建物を建築中みたいでヘリが何度も旋回している。



双六小屋に到着 9:16。弁当とコ−ヒ−を戴く。
三俣山荘の弁当は最高。双六小屋のコ−ヒ−も本格的で最高でした。



双六小屋をスタ−トし、新穂高へ向けて歩いたり走ったりする。
槍ヶ岳が姿を現す(右)






鏡平山荘到着。(12:58)
生ビ−ルを頂き、わさび平小屋に向けて下山する。



なんだか小池新道はかなりキツイ。岩だらけで、こんなところを老夫婦が4時間かけて上ってくるのは信じがたい。
「こんにちわ〜!!」と声をかけるが、ほとんどの人は声も出せない状況。
なんなんですかね〜?
足を乗せる岩を集中して探しつつ歩くのはかなり目と神経が疲れる。
奥多摩の金比羅尾根のなだらかな道とは全く異なる。
下りでも岩歩きの連続でなんとか「わさび平小屋に到着」(14:40)

鏡平から見た風景。美しい鏡池に感動する。
いつかは挑戦したい山々がじっと待っていてくれる。素晴らしい自然。



ホント、きつかった。下山を一日早めて正解。
山は甘くないね・・・・・。
わさび平小屋で生ビ−ルとカレ−ライスを戴き、下りの道はいっきに走る。
登山じゃなくトレイルランしにきたんだからね。。。。
ゲ−トを通過して、ホテルニュ−ホタカで500円温泉に入る。
至福至福。。。。。。。。。。。。。。。。。。最高でした〜。なんか申し訳ない。
貸切でした。
髯もそらず、顔も洗わず、歯も磨かず、下着も代えずの三日間の汚れをスッキリと洗い流し、自宅へ戻りました。
う〜ん、何故か、体重が2キロも増えている。。。。。。。
【まとめ】
日程の一日短縮は結果的に良かった。
一日8時間平均の行動を続けると、やはり疲労が蓄積する。
特に、僕のレベルは底辺なのでこれが今の限界と思う。
物足りないで感じで終わる一日、くらいが丁度良いというのがわかった。
初日に飛ばしすぎて、体力の限界を感じたけど、よく寝てよく食べると回復するんですね。51歳ですが。。。。
ホント、単独で北アルプスというのは、捻挫、道迷いだけでも命を落とす危険があり、こうして3日間、体と対話し、柔軟に日程を調整し、
大袈裟かもしれないけど、無事、生きて帰れたのは本当に嬉しい。
行動食は、ドライフル−ツが自分に合っていることがわかる。
防寒対策は、ほぼOK。手袋だけ。
ウェア−もシュ−ズもOKだった。
こうして、軽装備でトレイルランする人に対する山屋の人からの反感は今回も感じたけど、全員に笑顔で挨拶しました。
今回も、一人で山を歩き回る若い女性もたくさんいました。(ナンパはしていません(笑))
自然は人が入ってこそ自然の魅力を体感できる。日本にはたくさんの素晴らしい山、海がある。
みんな、どんどん自然と振れあってほしい。それが日本の活力に繋がると信じる。
タイムとかスピ−ドじゃなくて、まったりと花や蝶と戯れてみませんか?
【実施結果】
| 【2011年9月 北アルプス単独縦走実施結果】 | |||||||||
| 出発 | 出発地点 | 到着 | 到着地点 | 所要標準時間 | 実施結果 | 備考 | |||
| 9月5日 | 月 | 14:00 | 自宅を車で出発 | 21:00 | 新穂高温泉到着 | 7:00 | 7:00 | 自動車の中で寝る | |
| 9月6日 | 火 | 6:00 | 新穂高温泉 | 9;18 | 槍平小屋 | 4:30 | 3:18 | ||
| 9:30 | 槍平小屋 | 13:02 | 槍ヶ岳山荘 | 5:40 | 3:32 | 宿泊手続き:20分 | |||
| 13:22 | 槍ヶ岳山荘 | 13:40 | 槍ヶ岳山頂 | 0"30 | 0:18 | 槍ヶ岳登頂(3180) | |||
| 14:00 | 槍ヶ岳山頂 | 14:16 | 槍ヶ岳山荘 | 0"30 | 0:16 | 槍ヶ岳山荘泊 | |||
| 合計 | 12:10 | 7:26 | |||||||
| 9月7日 | 水 | 5:30 | 槍ヶ岳山荘 | 9:15 | 西鎌尾根〜双六小屋 | 3:30 | 3:15 | 途中、弁当30分 | |
| 9:15 | 縦沢岳 | 9:47 | 双六小屋 | 0:20 | 0:32 | ラ−メン、ビールで40分 | |||
| 10:27 | 双六小屋 | 12:22 | 三俣峠 | 1:50 | 1:55 | 休憩10分 | |||
| 12:32 | 三俣峠 | 12:41 | 三俣蓮華岳 | 0:15 | 0:09 | 三俣蓮華岳登頂(2841) 、休憩10分 | |||
| 13:01 | 三俣蓮華岳 | 13:44 | 三股山荘 | 0:40 | 0:43 | ||||
| 合計 | 6:35 | 6:32 | |||||||
| 9月8日 | 木 | 5:30 | 三股山荘 | 7:51 | 双六小屋 | 2:20 | 2:21 | 弁当、コ−ヒ− | |
| 8:31 | 双六小屋 | 9:16 | 弓折乗越 | 1:10 | 0:45 | ||||
| 9:26 | 弓折乗越 | 9:55 | 鏡平山荘 | 0:30 | 0:29 | ビ−ル、50分休憩 | |||
| 10:45 | 鏡平山荘 | 12:58 | わさび平小屋 | 2:40 | 2:13 | ビ−ル、40分休憩 | |||
| 13:38 | わさび平小屋 | 14:09 | 新穂高温泉ゲ−ト | 1:05 | 0:31 | 走りました!! | |||
| 合計 | 7:45 | 6:19 | |||||||
【今回の縦走ル−ト(赤)】
