電装品の故障対応では、私もしばしば下記のようなトラブルに巻き込まれます。(特に保証期間が過ぎた車のお客様)
ケース1
昨日車検したばかりなのに、今日ヘッドランプの球が点かない。なぜ?昨日車検で点検した筈じゃなかったの?
ケース2
一ヶ月前に定期点検したばかりなのに今日バッテリーがあがってエンジンがかからない。おかしいなぁ、
一ヶ月前までは「バッテリーは正常です」ってメカニックが言っていたのに・・・
ケース3
今月で5年目の車検を迎えたが、私はいつも半年毎にディーラーで定期点検整備をしている。なのにナビが壊れた、
今までは何も言われなかったし納得できない。しかもナビの点検と修理見積もりは有料だって?おかしいんじゃない?
ケース4
今年で7年目の車検を迎えるが、突然走行中にエンストした。車はあまり距離を乗らないし、2ヶ月前に定期点検を
受けたばかりだった。なのにディーラーで診てもらったら「燃料ポンプを取り替える必要があります」だって。なんで
点検の時分からなかったんだ。
ケース5
ある日突然電装品が壊れてしまう。事前に点検してもその良否判定がつかないのも知っている。でもディーラーなら
ある程度の電装品の寿命がわかるはずだ。なぜそういったアドバイスが無いんだろう。
ケース6
定期点検を受けても電装品の良否判定や予測寿命が分からないんじゃ、定期点検整備を受けなくてもいいんじゃ
ないの?
他にも電装品の故障に関してのトラブルは沢山経験しましたが、どれもお客様の立場に立って考えてみますと
確かに仰る通りだと思いますし、私がお客様でそういう状況になったら私もいい気はしません。しかし、今後も十分に
起こりうるケースですので、きちっとした説明をした上でいづれもの場合もご理解をいただかなければならないと考えて
おります。従って、すでに上記ケースのようなトラブルを経験されたお客様も、まだ経験した事は無いけどこんな事って
なんであるの?と思われた方の為にこういう場を設けました。
@定期点検(車検含む)で点検した結果、事前に残り寿命があらかじめ確認できる範囲について・・・
定期点検にてあらかじめ消耗状態や残り寿命が確認ができる物は、
・ブレーキの残量やタイヤの残量等の目視にて残り残量がパーセンテージで把握できるもの。
・ワイパーのゴムの状態や、各ダストブーツ(ゴミが入らないようにする為の目的で取り付けてあるゴムのカバーの事)
の亀裂の有無,ファンベルト,ゴムホース等のゴムで出来ている消耗品の亀裂の有無や、柔軟性(硬く硬化してないか
否か)が目視や触感で確認でき、判断基準に基づいて合否判定できるもの。
・エアフィルター等のゴミや不純物による目詰まりの状態が目視で確認でき、判断基準に基づいて合否判定できるもの。
・各部品の取り付け状態(緩み、ガタ、損傷、欠落の有無)が目視や触感、工具よよりで確認でき、判断基準に基づいて
合否判定できるもの。
・各オイル類や水類の汚れ具合や、滲み,漏れの有無の確認と、それに伴い各オイル類や水類の量が規定量あるか
どうかの判断が目視で確認でき、判断基準に基づいて合否判定できるもの。
A定期点検(車検含む)で点検した結果、現在の状態がOKかNGかの判定ができるが、今以降どこまで寿命がもつかの
判定が出来ない箇所はどういったところか。
点検した今その時どうなのかは確認は出来るが、「今後いつ頃くらいまでに交換をお勧めします」と断言できない物は、
・各ランプ類の電球(家庭の電球だって明日切れるものが、前日に「明日切れるぞ」なんてわかりません。)
・コンピューター等の電装品全般(オーディオ,燃料ポンプ,ダイナモ,セルモーター等の状態は点検項目にも該当しない)
・マフラーの錆(一応目視で確認できるのですが、「錆の発生が進んできているので、もしかしたらそろそろ交換です」とは
アドバイス出来ますが、「いつ頃くらいまでもちますよ」とははっきり言えません。穴がなければとりあえずOKです。)
・バッテリーの状態(最近のバッテリーは性能も良く、ぎりぎりまで性能を維持する事もあります。加えて季節の変化等での
外気温の変化も極めて影響を受けやすいですし、測定時直前まで走っていたのかどうかでも点検結果に影響してきます
ので、少しでもエンジンの始動性やヘッドランプの明るさ等に不安を感じられたら、バッテリーの点検をお勧めします。)
B電装品の寿命が予測つかないんじゃあ定期点検を受ける意味が無いんじゃないの?
受ける意味の無い点検が、法律で義務付けられている訳がありません。
では仮に上記@の項目全てが交換基準に達していたとしても、その状態で運転しているだけでは「うん、あの部品が
今これだけ消耗しているからそろそろ危険だ」 なんてプロのメカニックですら分解して点検しないと分からない事が
ほとんどです。しかもたった一日で変化するものではなく徐々に消耗していくのですから、例えば運転者が「あっ、これは
おかしいな」と感じる時は、既に手遅れとなっている事のほうが多いです。そうならないようにする為の点検ですから
法律で義務付けられ必要とされているのです。
Cなんでオーディオやナビの点検や修理見積もりをするのにお金がかかるの?
そもそも不具合の点検をしたり、その結果の修理見積もりをするのは全て有料です。無料なのは保証対象部品が
原因であり保証期間中であった場合のみです。しかしそうは言っても「普段ディーラーでは車の不具合の点検をしたり、
その結果の修理見積もりは無料でしてもらっているよ」と仰られるお客様もいらっしゃいます。私どもでもよほどの
難解不具合(点検,診断に時間を費やしたり、点検するのに分解作業をともなったり、診断をするのに部品を購入して
使わなければならない場合や、専門の高度診断機や専門知識が必要とされる場合の点検)以外はある程度の点検や
見積もりなら無料で行っている事も少なくはないです。しかしその場合であっても、そのお客様との関係が築かれていて
信用もあり、その後私どもで見積もった修理を当店で任せていただけると判断した場合や、いつも確実に定期点検を
行っていただいているお客様に対してでありますので、どんなお客様に対してもどんな場合でも無料という訳では
ございません。もちろん他メーカーのディーラーさんや他の自動車整備工場さんからの点検見積もり依頼は全て有料で
行っております。これは当店に限らずの事で、他社さんでも同じ事だと思います。
実は、オーディオやナビの単体点検や見積もりというのは、ディーラーでは行えません。ディーラーでは、配線の接続
状態をみて電源供給等の車両側の点検や、部品の取り外し取り付けは出来ますが、それ以降の単体点検(内部点検)
は、そのオーディオやナビのメーカーへ、取り外して送って点検や見積もりをしていただきます。点検だけでも見積もり
だけでもお金がかかってしまうのは、この時に送料や点検見積もり料がかかってしまうからなのです。この場合でも
決してこの部分から手数料を上乗せして儲けをとるなんて事はしていません。ディーラーで代金を頂戴するのは、
取り外しと取り付け工賃くらいで、それに先程の送料と点検見積もり料の実際にかかった分だけです。
それでも納得いかないと仰られる場合には、無料で行ってもらえるところを他に探していただいた方が良いでしょう。
D電装品のおおよその寿命はデータとしてあるんじゃないの?そのデータをもとに交換時期をあらかじめ教えて下さいよ!
車には沢山の電子部品が使われております。(センサー,ユニット,アクチュエーター等々)各々の部品のメーカー
は、全てが同一ではありません。例え同じような働きを持つ部品であったとしても、車種が違えば部品の構造も
メーカーもほとんど違います。それは同じメーカーの車同士であってもです。車の使われ方によっても部品の寿命は
異なってきます。車の使われ方や使用環境はそれこそお客様の数ほど違ってくるでしょう。
私どもメーカーディーラーであっても、それぞれの車種のそれぞれの部品の故障に起因する細かいデータ
(様々な不具合現象ごとの故障原因と故障箇所ごとの不具合発生時期を、使用環境ごとに分けたデータ)
を持っておりません。
あきらかに設計の段階や製造の過程に不具合があった場合なら、それこそ使用環境を問わず最終的には
同じ故障原因で同じような不具合現象が多く発生する可能性が大きいでしょう。しかしそのような事があった場合には
自動車メーカーが、国に対してリコールや改善対策の届出を行い、お客様に告知した上で無償にて部品の交換等を
実施させて頂く事になります。しかしその場合であっても不具合の発生時期はまちまちです。
しかも一度も予測される不具合に至らなかった車のほうが多いくらいです。
部品メーカーにも、公式に「この部品はこんな使い方をするとこのぐらいの時期に、この部分が○%の確率で消耗します。
ただし使用環境が◇◇の場合です。△△の場合は○%の確率になります。」という完全な裏付けのあるデータが存在
するとは思えません。なぜなら部品メーカーさんも自動車メーカーやディーラーに対して「不具合が発生した車のお客様
全員に対し、どの様な使い方をしていたか、どの様な使用環境だったのかを細かくアンケートを取って下さい。交換した
不具合部品は保証の期間内外を問わず全品回収して下さい」
なんて私どもディーラーにも要求してきませんし、
お客様だってそんな事を要求されたらいい気にはならないと思います。
ですので部品メーカーでもそのようなデータの公表はしていませんし、第一そのようなデータが実際にあるとは思えません。
(保証整備で交換した部品は、今後の品質改善の為に全品回収して自動車メーカーが原因を調べますが、
有償整備の場合は交換した部品もお客様の物であり、本来なら全てお客様にお返しするのが原則となってます。)
私は大切なお客様に対して、整備経験だけの少なくて不確かな情報だけで、
「その部品はいついつ故障するかもしれませんので、その頃には実際に壊れなくとも部品の交換をして下さい。」なんて
無闇やたらに部品の交換を促進させたり、不安をあおらせたりするような事は出来ません。
それでも自動車ディーラーがそういった取り組みをする事を望むお客様が大勢いらっしゃるのだとすれば、
今すぐにでも実施を考えなくてはならないと思います。しかしその場合は自動車メーカー単位での取り組みとなる為、
私が出来る事として下記のようなアンケートから取っていかなくてはなりません。
例えば「Aのメーカーの製品と、Bのメーカーの製品ではどちらが欲しいでしょうか?」と言う具合のアンケートが
あったとしたらどちらをえらびますか?
A・推奨使用環境が事細かに指定されていて、しかもその使用状態を常にセンサーが細かく監視。少しでもメーカー
指定の使用頻度や使用環境・状況から外れたら場合、新車の保証期間内であっても、故障した際には全て有償
修理となります。でもその部品には細かいデータの裏づけから推定使用限界が公表されていて、そのデータから○%
の誤差で使用限界を下回った場合には新車保証期間は関係なく無償にて修理します。しかしそのデータを取る為に
20年かかりましたので、開発は20年前に行われた製品となっております。
B・最先端の技術が使われていますが、上記Aのようなデータはないです。しかし新車保証期間中は万一壊れても
無償にて修理します。でも新車の説明書の「ご使用の注意」に記載されてる「誤った使い方」だけはしないで下さい。
私ならBを選びます。新車のメーカー保証期間って、家電製品の一年間保証から比べたらかなり長いんです。しかも
車は、家電製品の「ご注意」に記載されている「振動」「高温」等に常にさらされている事を考えればなおさらの事。
もしかしたら他のメーカーさんやそのメーカーのディーラーさんではそういう事を一生懸命に取り組んでいるところ
があるのかもしれません。私が知らないだけなのかも知れないです。しかしそういった事を真剣に現在取り組んでいる
自動車メーカーが現在実際にあるのだとしたら、その事実をお客様が確認し把握していた上で私どもにも
同じ事を要求されるのでしたら、大変悔しくて残念ですが、そのメーカーのメーカーディーラーさんと今後お取引して
いただいた方がお客様の為には良いと思います。なぜなら、そのような高いレベルの要求に対し、今すぐに万全な体制で
お応えするという事が難しいからです。
しかしこういった意見や要望がある以上、私が出来る事として、お客様からの貴重なご意見・ご要望はメーカーに
今後も報告させていただきます。
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