Frozen garnet 














「今日はゆっくりと休むといい」
「有難う、ティエリア」

柔和な笑みを見せる青年――アレルヤに対峙していたティエリアはそれに頷いて見せる。ロックオン――ライル・ディランディは表情にこそ出さなかったが驚いていた。ぴりぴりしたように自分を罵っていたティエリアの、柔らかい笑顔を見たことで。笑ったらもっと可愛いだろうに、と揶揄混じりに思っていた笑顔は自分に向けてでは無かったが。

「行こう、ロックオン」
「あ……ああ」

ロックオンはティエリアに続いて部屋を出る。通路に出て、ドアが閉まる頃にはティエリアから笑顔は消えていた。引き結んだ口元を緩ませてみたくてロックオンは先を行く背中に声をかける。

「で、俺はどうすればいいんですか、教官殿?」
「……ケルディムのシミュレータに、先ほどの戦闘データを入れておこう」
「訓練しろ、って?」
「やることが一杯ある、という自覚は何処に行った?」

感情の乗らない口調に、僅かな苛立ちを覚えロックオンは呟いた。

「冷てーの。仮にも仲間に対してさあ、」
「……ふ、」

微かに洩らされた笑い声にロックオンは言葉を切り眉を寄せる。ゆっくりと振り返ったティエリアの唇は、美しい弧を描いていた。

「……仲間だと思っていないのは君の方だろう?」

その言葉に、ロックオンは思わず足を止める。深紅の瞳は笑みで細められている筈なのに凍えそうで、表情を取り繕えなかった。ティエリアはさっきと同様唇を引き結び、ロックオンを見据える。

「他のデータが必要ならば言うといい。直ぐに用意しよう」
「……了解」
「では失礼する」

再び向けられた細い背中を見送り、ロックオンはため息をついた。
……お見通し、って訳か。
未だ組織と
――カタロンと繋がっていることを示唆して言った言葉であることは間違いない。組織のためであるとは言え、CBに来てからというもの、居心地が悪くて仕方が無かった。兄の面影を重ねられていい気分になる訳は無い。

「ロックオン、ロックオン」

まとわりつくように足元を転がるハロの声に、ロックオンは無理矢理唇の両端を上げた。

「どうした、ハロ?」
「シミュレータノ準備完了、準備完了」
「……仕事速いねえ、教官殿は」

鉱物の、柘榴石そのものを嵌め込んだような瞳を思い出しながら、ハロを持ち上げる。

「じゃあ、やりますか」

ハロを小脇に抱えたロックオンは表情を引き締め、ケルディムの元へ向かった。











ライティエなどではなく、ティエリアVSライル。
三話後、「……仲間だと〜」のティエリアのセリフが浮かんで頭から離れなくて四話観て、三十分くらいで書き上げたものです。
うわー、こんなに早く書き上げられたの初めて。
'08.10.27