歴史小説作品のご紹介

歴史小説ラインナップ

 

 

飛鳥残照 2000年

 この小説は1995~1998年ころに私が初めて書いた歴史小説で、飛鳥時代の政変である大化の改新の主要人物、中臣鎌足を主人公にした物語です。
 中堅氏族に生まれた鎌足は、唐から帰国した旻法師の塾で学びつつ、有力氏族の子弟である蘇我入鹿をあこがれの目を持って見ていました。学問でなら入鹿と肩を並べることができると勉学に励みますが、入鹿は鎌足を気にもかけず有力者への道を上っていきます。
 大臣の蘇我蝦夷は天皇家をしのぐほどの権勢をふるうようになり、危機感を感じた中大兄皇子は鎌足を協力させて策を練り、蝦夷、入鹿の親子を滅ぼしました。
 実権を握った中大兄皇子は兄の古人大兄皇子を殺害し、政変に協力した蘇我石川麻呂も謀殺、さらには叔父の孝徳天皇とその息子の有間皇子も次々と滅ぼしていきます。葛藤を抱えながらも鎌足は抗うこともできず、中大兄皇子の政権を支え続けます。
 そうした苦悩の半生を、臨終の床で見舞いに訪れた大海人皇子に語るという形式になっています。

 この作品は2000年に第一回飛鳥ロマン文学賞を受賞しましたが、紙の本としては出版できませんでした。2011年に電子書籍になりましたので、2作目の『赤き奔河の如く』の前時代の話として読んでいただければ、時代の流れが俯瞰して理解できるかと思います。
RAKUTENブックスにて。

 

赤き奔河の如く 2011年

 前作『飛鳥残照』と時代は重なりますが、天智天皇の時代の後半から壬申の乱までを、村国男依という若者を主人公に描いています。
 天智天皇との確執から、朝廷を離れた弟の大海人皇子は吉野へ隠遁。兄の死後に天皇となった大友皇子と重臣らが近江朝廷を担いますが、次第に大海人皇子との間に緊張が高まり壬申の乱が起こります。
 このとき大海人皇子に従う数少ない舎人の中に村国男依という若者がいて、彼は美濃から都へ出て何も判らぬまま大海人皇子に仕えますが、数々の経験を経て、やがては壬申の乱を指揮する将軍に成長していきます。
 圧倒的に兵数の違う朝廷軍に対し尾張美濃など東国の兵を集め、約一カ月にわたる戦いを勝ち抜いて近江朝廷を陥落させました。男依をはじめとした若い舎人達の活躍が時代を大きく動かした、古代の天下分け目の戦いです。
 あまり知られていない村国男依の功績を知っていただくとともに、戦場の兵士の目線から見た壬申の乱を描きたいという趣旨で書いた作品です。

 

卍曼陀羅 2015年

 戦国時代初期の尾張北部を舞台に、主人公の蜂須賀小六正勝と、義兄弟の前野長康らの活躍を描いた作品です。
 海東郡で生まれた正勝一家は、勝幡の織田信秀の勢力拡大に圧迫されて、故郷を離れて尾張北部の丹羽郡へ移住。そこで知り合った前野長康や生駒家長らと成長し、尾張川の運送を担う川並衆の棟梁となっていきます。
 織田信秀に従うことに抵抗して、美濃の斎藤道三に仕えたり、岩倉の織田家に加勢したりしますが、織田信長が清洲を攻略し、岩倉織田家も滅ぼして、いよいよ蜂須賀党とも刃を交える寸前に、木下藤吉郎に協力することで衝突を回避。
 桶狭間の戦いや犬山城攻めなどで信長に協力するも、完全な配下ではないために十分な報酬はもらえず両者の緊張は続きます。尾張を統一した信長は美濃攻めへと兵を進め、藤吉郎に墨俣築城を命令。正勝や長康は川並衆の力を合わせて尾張川の流れで資材を運び込み、美濃勢の攻撃をしのぎながら墨俣の築城を成功させます。これにより信長の美濃攻略は進み、稲葉山城が陥落。蜂須賀党も正式に織田家中に加わり、信長の全国統一の戦いへと巻き込まれていくことになります。
 正勝、長康のほか織田信秀、信長、秀吉、斎藤道三、今川義元、明智光秀、前田利家、山内一豊など様々な人物が曼陀羅のように登場し、天下統一へ乗り出すまでの信長時代が楽しめます。

 

乱雁 2018年

 蜂須賀正勝とともに秀吉を支えることになった、前野長康とその兄弟の物語。前野家は岩倉織田氏の奉行の家柄で、兄の雄吉は信秀、信長、信雄の三代に仕え、弟の勝長は佐々成政の重臣になっていきます。
長康は信長に仕えるもののすぐに出奔して、蜂須賀正勝とともに気ままに生きますが、やがて秀吉の重臣に。信長の死後、織田家臣同士の戦いが始まり、小牧長久手の戦いでは織田信雄と秀吉が争い、雄吉と長康が敵対することに。また秀吉の佐々攻めでは長康と勝長が対峙。
秀吉が天下を制すると、長康も但馬国の領主となり九州、小田原、朝鮮と粉骨砕身のはたらきを見せますが、引退直前に豊臣秀次の後見役となったために謀反に加担した罪を受け、息子とともに自刃することに。
時代の波に翻弄された三兄弟の生涯を知っていただけたらと思います。

 

天狼の爪牙 2022年

 『飛鳥残照』『赤き奔河の如く』に続く三部作で、壬申の乱のあと、村国男依ら壬申の功臣が次々と死を遂げる謎を、県犬養大伴ら舎人の仲間が追究していく歴史ミステリー。
 謎の死を調べるうちに壬申の乱で恨みを持つ者たちの存在が浮かび上がり、大伴らは北陸、関東へと真相究明の旅に出ます。探し求めた相手の死で解決したと思ったところが、その怨念を受け継ぐ者が新たに朝廷に入り込むことに。
 大伴たちは役行者の力を借りて、怨念との戦いを繰り広げ、天武天皇が作り上げようとした新たな国家を守ります。見えない敵との戦いとともに、日本という国や、天皇という概念が出来上がっていく過程もお楽しみいただけます。
 そして県犬養氏は藤原氏と縁を結ぶことで、次の時代への流れを作っていくことになります。

 


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