Kamuymosir 聞きかじりアイヌ語講座
カムイモシリ(=神の住むところ)
「アイヌ」という言葉は、もともと「自分たち、人間」を指す言葉であって民族名ではなかったそうだ。
「和人」に対する言葉として、民族の名前として定着していったらしい。
「アイヌモシリ」とは元来「人間の住むところ」即ち「この世」の意味で、
その対義語として「カムイモシリ(神の国)」である。
「あの世」という意味もあるが、正確にはちょっと違う。
アイヌの考えの根本は、この世に存在する全てのものには魂がある、という概念であった。
全てのものは、カムイモシリで人間と同じ姿をして暮らしている、
カムイモシリでは、人間に幸をもたらし、感謝されることによって地位が上がり、
人間に災いをもたらすことで地位が下がるという。
完全実力主義である。出来高払いともいう。
さてさて、人間に肉と毛皮を与えてやるか、と思った神は、クマの姿をしてアイヌモシリに赴く。
人間は猟をしてクマを受け取り、肉と毛皮を得、神に感謝する。
つまり、クマを「殺す」ということは、「神を元の世界に送り返す」、という意味を持つ。
やや分かりにくいが、肉体という手土産を置いて、魂がカムイモシリに帰るということか。
十分に贈り物をし、儀式を行って送り返すと、クマが神の国に戻った時、大変な贈り物に喜び、
再び人間に恵みを与えてくれる(またクマが獲れる)。
しかし、もし不手際があると、神としての地位が落ちてしまうのでクマは怒ってしまい、不猟になってしまう。
神といえども無報酬では働いてくれないのである。
クマだけではなく、植物、道具、火や伝染病まで、形のあるものないもの、全てについて同様に考えられていた。
イオマンテに代表される祭りだけでなく、もっと小規模な祈りや祭りは日常的に行われていたらしい。
意外と理にかなったというか、結構シビアな価値観である。
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かつて神であった野生動物たちを称える意味を込め、このサイトをKamuymosirと名づけました。
しかし、ここまで読んでいただければ分かるように、カムイモシリはあの世であって、
しかもそこで動物は人間の姿をしているのである。
だからこの名前はちょっと・・・おかしい・・・なんだけれども、勘弁して。
*Reference:
アイヌ神謡集 岩波文庫 1978
アイヌ文化の基礎知識 草風館 1993
CDエクスプレス アイヌ語 CDエクスプレス 白水社 2004