2011年1月12日中日新聞掲載 世界フィギュア連覇へ。橋大輔

会場全部の気持ちつかむ

○バンクーバー五輪で銅、昨季の世界選手権で金メダルを獲得。それでも現役を続ける理由は。
  五輪を終えたら一度は引退する気持ちでした。
  それが2008年に手術した右膝が五輪のときに力を証明できるくらいまで戻ってきた。やっと自分の練習が出来て自分のジャンプになりつつあるので
  また戦ってみたいなって気持ちが出てきたんです。

○今季これまではどんなシーズンですか。
  試合で百パーセントが出せていないですし今思えば昨年末の全日本まで、試合に参加していないような感じがありました。
  第三者的に外から見すぎていたというか自分はやってするつもりだったんですけど、「つもり」だけだったのかなと。

○全日本では「久々に試合をすることを思い出した」と。
  ショートプログラムが4位でした。
  表彰台に乗らないと世界選手権の代表になれないだろうなと、フリーはかなり気合が入った。
  結果は完璧ではなかったけれど、終わった瞬間すごくすがすがしかった。
  世界選手権も、同じような気持ちで挑まないと勝てないなっていうのがわかりました。

○多くの若手選手に目標とされています。
  どういう存在でいようかとか、そういう考えはないですけど、むしろ4年後までって云われるとしんどいというか。
  自分の中で若い人に勝てるのかっていう不安がある。これから成長していけるのか。
  4年後までやるって云えない自分は嫌だなと思いますけど、ぎりぎりまでやっていきたいなとは思ってます。

○よく観客の盛り上がりを気にしていますが。
  もちろん正確な演技や技術は勝つために重要ですけど、それ以上にお客さんの心をつかむことは、自分の中で重要なポイントです。
  僕自身が何かを見て、どんなにうまくても心に響かないものは忘れてしまう。
  動きが汚くても、上手じゃなくても、心にくるものはずっと覚えている。
  そこら辺はある意味で、勝負以上に求めてる部分です。

○世界選手権までにはどんな準備を。
  3月までがむしゃらにかっこつけずにやりたい。一生懸命に恥を捨ててやった部分は伝わると思いますし。
  東京の会場に来るお客さん、ジャッジ、全部の気持ちをつかめるような演技をしたい。連覇は勿論意識しますが、
  それが出来れば正直、メダルが取れても取れなくてもいいというくらいの気持ちでやりたいなと思っています。

○男子フィギュアはどんなスポーツと考えていますか。
  ジャンプがアクロバティックで、踊りもいろんな表現がある。見せる力と正確にやる力と両方いる。
  難しくて面白い、やりがいのあるスポーツです。
  ただ同じ成績なら、注目は女子にいってしまう。男子を見てもらうために、常に成績を出し続けようという思いは持っています。
  僕の時代は織田君と2人ですけど、小塚君、羽生君、他の選手たちも、世界戦える選手が続いてくれていることが、人気にもつながるのかなと。
  女子に成績で負けると悔しい気持ちは、常にあります。