2011年版「防衛白書」を批判する
今年8月に出された2011年版「防衛白書」は、日帝が「日米同盟の深化」「動的防衛力」を掲げ、国際反革命戦争への参戦を拡大していくための宣言の書である。とりわけ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「脅威」を叫び立て、朝鮮反革命戦争への最後の突撃を宣言するものである。「防衛白書」を許さず、革命的反戦闘争の大爆発をきりひらけ!
自衛隊の被災地制圧を特集
2011年版「防衛白書」は、「特集 東日本大震災への対応」「第一部 わが国を取り巻く安全保障環境」「第二部 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など」「第三部 わが国の防衛に関する諸施策」で構成されている。構成上で昨年と異なる点は、大々的な特集があることだ。
「特集 東日本大震災への対応」では、「陸・海・空自衛隊の統合運用のもと、即応予備自衛官や予備自衛官を招集し、米国をはじめとする各国とも協力」したことを、「特筆すべき内容」だと自画自賛し、また「自衛隊と米軍との大規模な共同対処は、これまでの日米間の訓練・演習・計画の成果を実証」したと豪語して、被災地への自衛隊と米軍の動員が戦闘訓練の延長であり、戦争のための共同作戦の一環に他ならないことを、明け透けに吐露している。
「特集」は、大震災の発生に際して自衛隊が真っ先に行なったのは、「不足した食糧・被服・装具類の緊急・大量調達を含む大規模な後方支援業務」であったとしている。全国からの部隊動員による被災地制圧のために、自衛隊の軍用物資をかき集めることが、第一の仕事だったというのである。その上で「全国の地方公共団体および民間から提供される救援物資を各地の駐屯地などに集積し…被災地に届けるスキームを初めて構築」したと、全国からの「救援物資」を自衛隊が管理・統制下に置いたことを成果として強調している。しかし、その「救援物資」が被災労働者人民には一向に届かず、震災後長期間にわたって、今日の燃料、明日の食料にも事欠く苛酷な窮状を労働者人民に強いたことへの言及は、何もない。また、物資の枯渇に苦しむ被災労働者人民を尻目に、日・米の「物品役務相互提供協定」(ACSA)に基づいて、米軍に燃料などを大量に提供したのである。大事故を起こした福島第一原発でも、3月20日の首相指示により、「放水、観測など」の「現場作業」を自衛隊が「一元管理」した。震災から数ヵ月間、まさに被災地は、自衛隊の制圧下におかれたのだ。
米軍は「トモダチ作戦」のもと、1万6000人を動員した。この米軍とともに自衛隊は、被災地に10万超を動員し、防衛省や横田基地、東北方面総監部に「日米調整所」を設置して、まさに実戦さながらに、日米共同作戦を展開したのである。
煽られる「北朝鮮の脅威」
「第一部 わが国を取り巻く安全保障環境」では、何よりもまず第1に、「北朝鮮脅威」の煽動に力点が置かれている。昨年11月の北朝鮮による延坪島砲撃や、「核・弾道ミサイルの開発」「拉致」を取り上げて、「重大な脅威」と決めつけている。また、「詳細については不明」としながら、北朝鮮の「生物・化学兵器の保持」なる憶測にまで言及している。米帝―帝国主義が、対イラク反革命戦争の開戦に際して、「大量破壊兵器の脅威」を叫び立てたのとまったく同じ構図だ。その上で、「金正日国防委員長の六九歳という年齢もあわせ考えると、…体制が不安定化する可能性も排除できない」として、北朝鮮の「体制崩壊」を促進しその兆しを捉えて、「核兵器の管理」をも口実に、一気に北朝鮮に侵攻するという、米・韓の「戦争シナリオ」の一つである「作戦計画5029」にぴったりと歩調を合わせて、朝鮮反革命戦争への突入を画策しているのである。
第2に、「サイバー攻撃、大量破壊兵器などの拡散、国際テロや統治機構の脆弱化など」が「脅威」だとし、「対テロ戦争」という名の国際反革命戦争へのさらなる参画を狙っている。「核セキュリティー・サミット」(昨年4月)での「すべての脆弱な核物質の管理を四年以内に徹底する」との採択に触れつつ、「核活動は平和目的であるとのイランの主張に確証が得られない」と言いなして、対イラン武力行使の衝動をむき出しにしている。チュニジアやエジプトで独裁政権を崩壊させたアラブ全域での労働者人民決起の広がりについては、「米軍のプレゼンスなどへの影響」「エネルギー供給に与える影響など」の観点から「引き続き注目していく」として、闘いへの恐怖と憎悪を露わにしている。また、北大西洋条約機構(NATO)が主導して強行したリビア内戦への軍事介入を称賛する一方で、湾岸諸国が労働者人民を弾圧するために軍隊を差し向けたバーレーンなどの動向には一言も触れていない。さらにパレスチナ解放闘争に対しては、「暴力の応酬」だと悪罵を投げつけているのである。アフガニスタン、イラクについては、米帝―帝国主義が総がかりで開始した戦争であるにもかかわらず、「地域紛争」の項目に組み込んでいる。米帝―帝国主義による中東支配の暴力的・反革命的再編という凶暴な意図を覆い隠し、日帝の積極的な軍事関与を肯定し推進しようという魂胆がミエミエだ。その他、「地域紛争」の項目にあるのは、ほとんどが現在、自衛隊が「国連平和維持活動」(PKO)や「海賊対処」で展開している地域であり、すべては、自衛隊の海外派兵を正当化するという意図で書かれたものである。
第3に、各国の軍事動向分析は、そのすべてが、日米安保の強化を結論づけるためのものとなっている。米帝については、「国家安全保障戦略」(昨年5月)に書かれた「力強く、革新的で、成長する米国経済による繁栄」「米国内と世界中における普遍的な価値観の尊重」なる文言を紹介して、「米国の国益を増進するために軍事力を維持、使用する」という米帝の凶暴な反革命軍事戦略をひたすら賛美し、さらに米帝による「核抑止力」をも全面的に肯定している。その一方で中国に対しては、「近海などにおいて活動を活発化」「(国防費は)過去5年間で2倍以上」「国防政策の不透明性や軍事力の動向」などに「懸念」を表明し、ロシアに対しても、「(極東での)軍の活動の活発化」などと、疑いの目を向けている。さらに、アジア太平洋地域には「領土問題や統一問題が残されている」とし、「海賊の発生問題」「少数民族問題」や「分離・独立運動の存在」と併せて、「アジア太平洋地域には地域の安定のため、米軍のプレゼンス」が重要だと主張しているのである。
なお、「領土問題」については、「第一部」の「概観」でも、「わが国固有の領土である北方領土や竹島の領土問題が依然として未解決のまま存在」と記述している。「尖閣諸島」(中国名・「釣魚列島」)については、「領土問題は存在しない」との尊大な建前から、「白書」には一切触れられていないが、「領土」をめぐる日帝の目下の最大の関心事が「尖閣諸島」であることははっきりしている。
凶暴な「動的防衛力」構想
「第二部 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など」では、昨年12月に閣議決定された新「防衛大綱」と新「中期防」を踏襲して、「動的防衛力」を前面に押し出している。
「動的防衛力」は、従来の「基盤的防衛力構想」を否定し、「国家の意思や高い防衛能力を示すなど防衛力の運用に着眼した『動的な抑止力』が重要」だとして、新「防衛大綱」で打ち出された。「我が国自身の努力」「同盟国との協力」「国際社会における多層的な安全保障協力」を「統合的」に組み合わせて「防衛力の運用」を行い、「わが国に脅威が及ぶことの防止・排除」「アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善による脅威の発生の予防」などの目的を達成する、というものである。それは、新「防衛大綱」の叩き台となった昨年八月の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の最終報告(「新安防懇報告書」)で、「受動的な平和国家から能動的な『平和創造国家』へと成長する」「国際平和協力活動を通じて、日本のプレゼンスを世界に示す」などと、より露骨に表現されていた。その意味するところは、日帝が全世界に武威を示すということであり、「防衛」「抑止」なる言葉で飾りながら、積極的・攻勢的に自衛隊を海外に派兵し、武力行使を行なうということである。
その上に立って「防衛白書」の「第二部」は、まず第1に、自衛隊の海外派兵の拡大、恒常化を打ち出している。「資源や食糧の海外依存度が高く、自由貿易に発展と繁栄の基盤を置く」日帝にとって、「国際社会の平和と協調の維持が極めて重要」だとし、「国際平和協力活動」に「より積極的に取り組む」と主張しているのだ。また、「PKO参加五原則などわが国の参加のあり方を検討」するとしている。「他国の要員の警護や他国部隊への後方支援」(「新安防懇報告書」)、すなわち「集団的自衛権の行使」を可能にしようとしているのである。
第2に、「島嶼部への攻撃」「弾道ミサイル攻撃」などの「さまざまな事態に的確に対応する防衛力は必要不可欠」とし、自衛隊の実戦部隊化を画策している。陸自では、「各地に迅速に展開することが可能」な部隊を「地域の特性」に応じて配備するとし、南西諸島への「沿岸監視部隊」配置や「初動を担任する部隊」の新設、また、「即応性・機動性の強化」のために師団・旅団を改編するとしている。さらには、「一般道路や航空機を有効に活用して展開できる機動戦闘車」の2018年導入をも狙っている。海自は、護衛艦を計四八隻、イージス艦を計6隻保有するとし、潜水艦を16隻から22隻に増強するとしており、空自は、那覇基地の戦闘機部隊を一個飛行隊から二個飛行隊にし、在日米軍・横田基地への航空総隊司令部の移転を行なうとしている。
第3に、「後方業務および情報通信ネットワークなどの一元化・最適化」、「ミサイル防衛」(MD)システム強化や軍事衛星の調査・研究などを推進するとしている。
そして、第4に、「経済や教育などの分野」などを通して「国を守るという国民の気概」を作り上げるとして、国家総動員体制の形成を狙っているのだ。
朝鮮反革命戦争突撃の激化
「第三部 わが国の防衛に関する諸施策」は、「第一章 自衛隊の運用」「第二章 日米安全保障体制の強化」「第三章 国際社会における多層的な安全保障協力」「第四章 国民と防衛省・自衛隊」で構成されている。「第一章」から「第三章」までは、「第二部」で触れられている「我が国自身の努力」「同盟国との協力」「国際社会における多層的な安全保障協力」にそれぞれ対応している。
まず「第一章」では、「各種事態」への対応策を描いている。「島嶼部に対する攻撃」については、「島嶼を占領された場合にはこれを奪回する」と宣言している。また、「海賊対処」では、「アフリカにおける自衛隊史上初の拠点」をジプチに整備したとはしゃぎ、海外でのさらなる軍事拠点の建設の野心を露わにしている。
「第二章」では、今年6月の「日米安全保障協議委員会(2プラス2)」を「成果」だとして、その合意内容の強硬な推進を唱えている。
「2プラス2」では、北朝鮮を主敵と定め、国連安保理の拡大―日帝の常任理事国入りなどが盛られた新たな「共通戦略目標」が打ち出され、今年度までに在日米軍司令部と空自航空総隊司令部(移転中)がある横田基地に「共同統合運用調整所」を設置すること、来年度までに陸自・「中央即応集団」司令部を在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間に移転すること、そして厚木基地から岩国基地に移駐する米空母艦載機部隊の「恒久的な(離発着訓練)施設」として、馬毛島(鹿児島)を検討することなどの合意が行なわれた。何より名護新基地建設について、「海面の埋立てを主要な工法とし、V字型に配置される2本の滑走路を有するもの」「2014年より後のできる限り早い段階に完了」なる内容の合意が強行された。「第二章」は、これらの「着実な実施」を宣言しているのである。
続く「第三章」では、自衛隊の野放図な海外派兵を可能とする「一般法が必要」だと叫び立てている。「国際社会の平和と安定のため積極的な協力を行なうに際し、どのような活動を行うべきかを含めさまざまな課題につき研究していく必要がある」として、制定への意欲を押し出している。とりわけ「各国との防衛協力・交流」の項目で注目すべきは、韓国に関してである。昨年7月の米韓合同演習に自衛隊がオブザーバー参加し、同年12月の日米共同統合演習には、韓国軍がオブザーバー参加しており、さらに今年6月には、日韓防衛相会談で、「ACSAや情報保護協定の早期締結」で一致している。朝鮮反革命戦争への突入を見すえて、こうした日韓軍事交流のさらなる強化を狙っているのだ。
最後の「第四章」は、自衛隊の「人的基盤」や「物的基盤」についてである。「人的基盤」では、「幹部および准曹の構成比率を引き下げ…若年の士を増強」するために、「早期退職制度」を導入するとしている。「物的基盤」では、「欧米諸国を中心とした各国で…優れた装備品を開発、生産する国際共同開発・生産が進展している」とし、「国際共同開発・生産への参加」や「武器輸出三原則等の見直し」などを叫び立てているのである。
革命的反戦闘争の爆発を
昨年11月の延坪島砲撃を受けた朝鮮半島をめぐる緊張はいまだ継続しており、朝鮮反革命戦争を想定した日・米、米・韓の演習も激化している。まさに一触即発の状況だ。今年8月16日から26日の間、指揮所演習である米韓合同軍事演習「乙支フリーダム・ガーディアン」が、計約53万人を動員して韓国各地で強行された。「作戦計画5027」に基づき、「北朝鮮の核兵器を確保する」ことも想定され、同時に「有事」における「国民避難訓練」も強行されたのである。さらに来年1月31日から2月5日にかけては、陸自・伊丹駐屯地(兵庫県)で、日米共同演習「ヤマサクラ61」も狙われている。「ヤマサクラ61」は、米陸軍と陸上自衛隊の共同図上演習で、朝鮮反革命戦争を露骨に想定し、「武力攻撃事態等」「島嶼部への攻撃」など「複合事態」への対応訓練として行なわれる。
新たに発足した日帝・野田政府は、朝鮮反革命戦争への最後の突撃を推進する政府である。野田は、日米安保を「基軸中の基軸」として最重視し、その強化に突き進んでいる。9月13日の所信表明演説では、名護新基地建設について、「日米合意」の履行を改めて宣言した。新閣僚や民主党幹部も、野田に負けてはいない。9月7日、ワシントンで講演した民主党政調会長・前原は、「武器輸出三原則の見直し」、「PKO参加五原則の見直し」を公言した。「PKO参加五原則の見直し」は、「自衛隊とともに行動する他国軍隊を急迫不正の侵害から防衛できるようにする」ためだとしている。この前原発言を「批判」した防衛相・一川もまた、12日の海外メディアのインタビューで、「武器輸出三原則の見直し」には意欲を示している。さらに、官房長官・藤村は九日、新設する「国家戦略会議」で、「集団的自衛権の行使の是非」や「武器輸出三原則の見直し」などを検討すると言い放った。そしてこれらの発言は、ほぼ「防衛白書」に描かれているものばかりなのである。
陸自の南西諸島への配備についても、「沿岸監視部隊」を与那国島に、また「有事」の際の「初動担任部隊」を宮古島や石垣島に配備するために、すでに調査・検討を開始している。また、下地島(沖縄)には、「災害復旧のため」と称して、海外に出撃するための拠点を作ろうとしているのだ。これらはすべて、朝鮮反革命戦争の準備に他ならない。
「防衛白書」が示している日帝軍事戦略の大転換、日米安保の強化、自衛隊の反革命的再編に、徹底対決していかねばならない。全世界労働者人民の闘いに連帯し、中東反革命戦争拡大粉砕、朝鮮反革命戦争突撃粉砕の革命的反戦闘争の大爆発かちとれ。闘う辺野古住民―沖縄労働者人民と連帯し、名護新基地建設実力阻止へ。「本土」―沖縄を貫き、反軍・反基地闘争を爆発させ、日米軍事基地解体、日米帝国主義軍隊解体へ。日米安保粉砕、野田政府打倒、日帝国家権力解体へ進撃せよ。
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