不当な使用裁決徹底弾劾
9月8日、「県」収用委員会は、沖縄防衛局が「使用の裁決申請及び明渡裁決の申立て」をしていた米軍基地の強制使用を認める裁決を下した。対象となった土地は、普天間基地、嘉手納基地、那覇軍港など10ヵ所の米軍基地にかかる一部土地で、普天間基地と那覇軍港は2010年1月1日以降、その他の基地は2011年1月1日以降、前回裁決の使用期限が切れたため米軍用地特措法に基づいて「暫定使用」されていた。
裁決は地主側の訴えをことごとく否定した。「地主の立会なしに土地調書などが作成されたことは違法である」との訴えには、「作成手続に瑕疵は認められない」とした。「一坪反戦地主であることを理由に事前交渉もなく一方的に強制使用手続を行なっていることは違憲である」という訴えには、「任意交渉を行なわない場合は原則的には却下事由に該当するものと考える」が「例外的に、土地所有者等の言動その他の事情からみて任意取得が不可能であることが客観的に明らかな場合にはこの限りではない」から、本件は「客観的にみて各共有者と任意交渉をしなかったからといって、直ちに本裁決申請を違法とする瑕疵があるとはいえない」とした。「地籍不明地」については、これまで地主側が土地の位置・形状が正しくないと主張してきたにもかかわらず、「使用対象土地として特定している」、「土地所有者も特定している」と決めつけた。
使用期間については普天間基地と那覇軍港が「4年」(2012年3月1日〜2016年2月29日)、嘉手納基地など他の基地は「5年」(2012年3月1日〜2017年2月28日)とした。防衛局は普天間基地について「2014年までの代替施設完成が目標とされており、同飛行場の返還後の物件撤去等の期間も考慮」したとして、使用期間を「8年」と申請していた。収用委は日・米両政府が「2014年完成」を撤回したことを踏まえて「4年」と裁決したが、「SACO最終報告で『今後5年ないし7年以内』とした返還期限は過ぎているから即時撤去、返還すべき」という地主側の主張については何ひとつ答えたことになっていない。
8回にわたる公開審理闘争を闘いぬく
反戦地主・一坪反戦地主が訴えた「裁決申請の違法性」について切り捨て、防衛局側の要求をほぼ全面的に受け入れた強制使用裁決を徹底弾劾し、土地を強奪し強制使用し続ける政府―沖縄防衛局に怒りを叩きつけよう。
「県」収用委員会による公開審理は、計八回開催された。第一回公開審理は2009年6月30日に開催されている。同年12月1日の第2回公開審理よりキャンプ・ハンセン、キャンプ・シールズ、トリイ通信施設、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)、陸軍貯油施設、嘉手納弾薬庫地区、キャンプ瑞慶覧の審理が併合された。同年3月26日の第3回公開審理より伊江島補助飛行場が併合され、同年7月28日、第四回公開審理より嘉手納基地も併合された。2011年3月17日、第8回公開審理で結審したが、最後は収用委が地主側の「求釈明」を読み上げ、防衛局側が回答するという形で一方的に打ち切られている。
毎回の公開審理闘争には数十人が結集し、反戦地主・一坪反戦地主を先頭に沖縄労働者人民が攻勢的に闘いぬいた。防衛局は「日米安全保障体制は、我が国を含むアジア太平洋地域の平和と安定のために必要不可欠な枠組みとして機能しており、我が国への駐留軍の駐留は、我が国の安全と極東における国際の平和と安全の維持に今後とも寄与する」から「駐留軍の活動の基盤となる施設及び区域を円滑かつ安定的に提供することは、我が国の条約上の義務」とし、「土地所有者の方々との合意により使用権原を取得することが基本と考えており、土地所有者との合意に努めて」いるが、合意が得られなかったため「やむを得ず駐留軍用地特措法に基づき使用権原を取得」しているとしている。地主側はこの裁決申請理由を徹底的に追及したのだ。
第一に「契約交渉」問題について。一坪反戦地主との交渉をまったく行なっていなかったことを追及された防衛局は「『宜野湾市大謝名東原九九四番二』に土地を所有する共有地主は全員契約の意思がないので契約交渉をしていない」と認めた。つまり、一坪反戦地主会の会員をはじめから契約交渉の対象からはずすだけでなく、会員ではない「共有地主」の意図も恣意的に判断して契約交渉しなかったのだ。「共有地主」は、前回裁決より一一三人増えているが、それはすべて防衛局が職権で相続登記したものである。勝手に登記し、意志確認すらせずに問答無用に土地を取り上げていたのだ。
第二に申請理由の「アジア太平洋地域」について。安保条約第六条では「極東」とされる適用範囲が「アジア太平洋地域」へ拡大していることへの追及だ。防衛局は「合衆国軍隊が運用上の都合により我が国に駐留する部隊を他の地域に移動させることについては、同条約上問題ない」という政府見解を明らかにした。何の制限もなく、世界中どこへでも出撃していくことができるということだ。
第三に基地の使用実態について。とりわけ普天間基地と伊江島補助飛行場について具体的に追及した。普天間基地の滑走路両端の延長線上900メートルの範囲は、米軍の安全基準では建造物などを建ててはいけない「クリアゾーン」とされている。しかし実際には約3600人の市民が生活している。「安全基準を守り、基地を閉鎖すべきではないか」と迫ったのに対し、防衛局は「米国内の実態のためのものであり、海外の航空施設には適用されない」(だから問題はない!)と言い切った。オスプレイ配備については「現時点で具体的には決まっているわけではない」と隠蔽に終始した。返還後の跡地利用への懸念から問いただした「薬剤、化学物質の使用実態」については、はぐらかし続けた。伊江島については反戦地主より、「運用支援分遣隊」の移転計画や、基地の半分以上が黙認関係(黙認耕作地が32パーセント、黙認住宅地25パーセント)であること、基地被害の詳細な実態などが明らかにされた。事実上使用していない広大な土地を長年にわたって強制使用しながら、命と生活を脅かす訓練実態は「米軍の運用上の問題」だから「承知していない」とくり返す防衛局の不当性があぶり出された。
日米安保粉砕、基地解体・帝軍解体を闘おう
審理の過程で防衛局は「審理になじまない」をくり返し、「求釈明の申立書」で明白なことまで「あらためて文書で出せば答える」と回答を引き延ばした。公開審理が数回で終了することを見込んで地主側の「求釈明」に答えることすらしようとしない防衛局に対し、沖縄労働者人民は厳しく抗議し頑強に闘いぬいた。
普天間基地解体・名護新基地建設阻止の闘いが高揚するなかで、軍用地の契約拒否が拡大している。2012年5月14日で使用期限が切れる17ヵ所の基地で契約を拒否する地主が174人も生み出されている。このうち奥間レスト・センター、キャンプ・シュワブ、金武ブルー・ビーチ訓練場、キャンプ・コートニー、キャンプ・マクトリアス、ホワイト・ビーチ地区の6ヵ所については、前回の契約交渉では契約拒否地主はいなかった。防衛局は8月29日に使用認定の手続きに入っている。
「戦争のためには一坪の土地も提供しない」を根底にすえた反戦地主・一坪反戦地主の闘いは、沖縄の反戦・反基地闘争の原点である。土地強奪―強制使用の不当性を徹底的に暴き出し、日米安保と真正面から対決する闘いである。この闘いの地平である「戦争のための軍事基地は、沖縄にもどこにもいらない」を鮮明にうち出し闘いぬくことが問われている。新たな契約拒否地主を闘いの戦列へ組織し、反戦・反基地・反安保闘争の飛躍をかちとる。沖縄―日本「本土」貫く団結をうち固め、普天間基地解体・名護新基地建設阻止、高江ヘリパッド建設阻止、先島諸島への自衛隊配備阻止を闘いぬく。オスプレイ配備を阻止する。
(写真は5・14 キャンプ・キンザー包囲デモ)
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