那覇市教育福祉会館で集会
9月4日、「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」が主催する「『八重山教科書採択問題』報告集会」が教育福祉会館(那覇市)において開催された。怒りに燃える沖縄労働者人民が、教育労働者を中心に460人結集した。
本集会は、石垣市、与那国町、竹富町で2012年度から使用する中学校教科書を選定する「教科用図書八重山採択地区協議会」(会長・玉津)が、8月23日に社会科について育鵬社版公民教科書を選定し、この答申を受けて26日に石垣市と与那国町の両教育委員会が同教科書を採択(竹富町教委は不採択)したことをふまえて開催されたものである。育鵬社とはフジ・サンケイグループ傘下の扶桑社の教科書出版部門であり、執筆は「教科書改善の会」である。「改善の会」は「新しい歴史教科書をつくる会」(自由社より教科書出版を継続)から分裂したグループであるが、思想内容は何も変わらぬ明確な反共・右翼ファシスト集団である。9月2日には育鵬社版公民教科書の不採択を求める市民集会が石垣市で開催された。本「報告集会」はそれへの連帯を表明し開催されたのだ。
午後2時過ぎ、「報告集会」が始まった。主催者より「今回の教科書採択はたんに沖縄の問題ではない。数年来の集大成の攻撃としてある」、「『沖縄が黙っていない』と行動で示し、全国へ発信しよう」と開会あいさつがなされた。
八重山からの報告
つづいて八重山からの報告を受けていく。はじめに「子どもの教科書を考える八重山地区住民の会」事務局長からの経過報告だ。「『八重山採択地区協議会』が規約を改定して役員会を通さずに教科書の調査員を任命し、玉津会長がこれまで行なわれてきた教科書の順位付けを廃止する方針を伝えていたことが明らかとなった時点(7月15日)で、すぐに『住民の会』を結成した」「7月25日に面談した玉津会長は『軍命のない集団自決もあった』と発言した」「8月23日に選定された育鵬社版公民は、調査員の推薦がなかったものだ。『協議会』では教科書の中身の議論はまったくない」「会長は事前に『協議会』委員に対し『歴史は他の出版社を選んだほうがいい』と依頼している。はじめから育鵬社版公民を通すことが目的だった」「今後は3市町教育委員全員による『教育委員協会』の場で協議されることになる」。次に教育労働者からの報告だ。「わたしは教科書の調査員を依頼されていたが、6月にはずされた」「7月に自衛隊の掃海艇が石垣に入港した。そのとき賛成派が初めて集会を行なった」「入港日に開かれていた教科書展示会は、マスコミ報道もほとんどされてないのに例年になくにぎわっていた。特定の政党が動員していた」。そのうえで育鵬社版公民のコピー資料を使って不当性を解説した。「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による『テポドン』発射と、『横田めぐみ』の写真をバックに『経済制裁』を主張する『家族会』の写真を並べて徹底的に反北朝鮮―反共・排外主義を煽動し、『日本固有の領土』として『領土問題』を取り上げ反共ナショナリズムを煽っている」「自衛隊を賛美する写真・記述を数多く盛り込み、本文では沖縄の基地問題についてまったく触れずに『戦後日本の平和は、自衛隊の存在とともにアメリカ軍の抑止力に負うところも大きいといえます』『(日米安保条約は)日本だけでなく東アジア地域の平和と安全の維持にも、大きな役割を果たしています』とする」「挙句の果てには、随所に天皇の写真をこれでもかとばかりに差し込み、天皇・天皇制を全面にうち出す。『国家と天皇のために殺し、死ねる思想』を生徒に注入する狙いは一目瞭然だ。即刻破り捨てたくなる代物だ」。会場から何度も憤りのこもったため息が漏れた。
教科書採択をめぐる全国状況の報告
その後、教科書採択をめぐる全国の状況も報告された。前回2009年の教科書採択では、歴史が扶桑社版採択率0・6パーセント、自由社版一・一パーセント、公民が扶桑社版0・4パーセントにすぎなかったが、今回は歴史が育鵬社版3・6パーセント(約4万6110冊)、公民が同3・8パーセント(約4万7070冊)となった。「今年3月の教科書検定で自由社版と育鵬社版の歴史・公民が合格したが、その報道はほとんどなされなかった」「教科書採択の意を汲む首長のもとで選ばれた教育長や教育委員が現場の意見を取り入れないよう制度を変更し、強引な手法で採択に持ちこむ沖縄の経過は全国の状況と同じである」。
すべての発言が終了し、集会アピール「八重山地区の子どもたちのために、学校現場の調査研究ならびに保護者、地域住民の意見を尊重した公民教科書採択を求めます」が読み上げられ、圧倒的な拍手が沸き起こった。団結ガンバローで集会を終えていった。
8月23日以降、会長・玉津らは八重山地区において育鵬社版公民で一本化をはかるために、不採択だった竹富町教委に圧力を加え、「答申に従え」「8月31日までに採択しないと教科書は有償になる。有償でももらえないという話もある」とわめきたてた。しかし沖縄労働者人民の怒りに包囲されるなかでゴリ押しすることができず、ついに9月8日、3市町の教育委員13人による協議の場で育鵬社版公民の不採択が決定された。沖縄労働者人民の圧倒的な怒りと闘いが、不当な採択を許さなかったのである。
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