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東北関東大震災被災労働者人民支援大運動を

7・12「狭山事件の再審を求める市民集会」に情宣決起
(983号3面)

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会場前で情宣を貫徹

 7月12日、午後6時30から総評会館において、「狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会」主催で「足利、布川につづけ!〜証拠開示、事実調べから再審へ!」と題した「狭山事件の再審を求める市民集会」が開催された。翌日に開催される第7回「三者協議」にあわせて設定されたものである。解放派と全国学生部落解放研究会連合の部隊は午後5時30分、会場前に到着し同時にゼッケン・青ヘルメットを身にまとい、横断幕を掲げ、情宣を開始した。続々と集会に参加する部落大衆が会場前までバスで結集してくる。手渡しが間に合わないほど、多くの参加者がビラを受けとり会場へと吸い込まれていく。「狭山闘争の勝利を勝ちとろう」「石川氏とともに闘おう」「第三次再審棄却を阻止しよう」と呼びかけながらビラを手渡していく。ビラを受けとる部落大衆や参加者から「ご苦労さま」「ありがとう」と言葉がかけられた。地下鉄の入口前であり、また場所柄多くの学生や仕事帰りの労働者が行きかう。横断幕を見上げ行きかう通行人にもビラを手渡し呼びかける。すでに会場入りしている石川氏に早速ビラを手渡しにいく。会場に入ると石川氏がにこやかに「お久しぶりです」と迎えてくれた。入口で情宣を行なっていることを伝えビラを手渡す。「必ずや無実を勝ちとりましょう。私たちは勝利するまで石川さんと共に闘います」と決意を伝えると「ありがとう」と喜びの笑顔で応えてくれた。入口の情宣では、用意したビラが次々と受け取られあっという間になくなっていった。国家権力は歩道を挟んで何かあればすぐにでも弾圧を仕掛ける体制を組んでいたようだが、われわれはこれを一蹴し、開始時間ギリギリまで情宣を貫徹し、本集会へと合流していった。

石川氏が闘う決意

 狭い会場は既に満席状態になり、次々とイスが運び込まれ、通路も一杯の状態である。会場は熱気で包まれ開会の時間を待っている。司会があいさつに立ち、開始を告げる。最初に「狭山事件の再審を求める市民の会」代表である庭山英雄氏が開会あいさつを述べる。「本日、代表して30人が高等裁判所で3時に裁判所の代表3人と会って主張することを主張してきた。署名とダンボール箱一杯の署名ハガキを手渡し、そして代表全員が一言づつ必ず裁判長に伝えてくれと要望を述べました。その後、高等検察庁に向かい、高裁と同じように書名と署名ハガキを渡した。どこの地区から来たかを述べて、それぞれ要望を伝えました」と報告。そして「絶対に逃げてはならない、絶対にうしろに下がってはならない。必ずわれわれの勝利の日がくる。その一歩が踏み出されたのではないかと言うような感触を持ちました。皆さんがんばりましょう」と闘う決意を明らかにした。
 続いて1976年に公開された映画「造花の判決」で主人公の司法修習生を演じた入川保則氏からの特別アピールが行なわれた。自らの余命が45日であることを宣言し「石川さんが無実であることを国民の皆さんに分かってもらえるまで私は死ぬつもりはありません」と力強く訴えた。
 いよいよ石川氏の登場だ。会場からは割れんばかりの拍手がまきおこり石川氏の登場を迎えた。大きな拍手の中、石川氏が壇上に立つ。暑い中多くの人が集まってくれたことに感謝を述べたあと、「いよいよ大詰めを迎えた。今年中に決着をつけなければならない。この半世紀までに無罪を確定したい。そういう思いで立っている」「狭山事件はなかなか前に進まないことも事実。しかし皆さん方はこの石川一雄を見捨てることなく48年間厳しく見守っていただいた。何とか入川さんが元気な間に無罪を勝ち取るために私も元気で闘っていく。まだ72歳、まだこれから。私の人生はこれでおしまいじゃありません。無罪を勝ち取ってから本当の人生であるし、必ずいい人生を歩んでいけるんじゃないか、というように思っております。ぜひともこの三次で勝利できるよう皆さん方のより以上のご支援を賜りたく、この場を借りてお願いいたします」と狭山事件から48年を迎え、必ずや無実を勝ちとるという並々ならぬ不退転の決意を明らかにしわれわれに檄を飛ばした。石川氏のこの決意にわれわれは何としても応えきって行かなければならない。

中山主任弁護人弁護団報告

 中山主任弁護人は、明日第7回「三者協議」が開催されることを報告し、大切な段階に入っていることを明らかにした。そして裁判官が岡田から小川正持に代わったことをうけ、「三者協議」の流れをさらに前進させていく決意を述べた。小川正持の経歴を紹介した後、「私たちももちろん裁判官との面会など通じて狭山事件について証拠と事実の力で迫っていく。皆さんも一回ここで裁判長にきちっと審理をさせていくという体制を作っていただきたい」と訴えた。その後、明日に迫った第7回目の「三者協議」で前回の「三者協議」で開示を求めた「取り調べメモ」「スコップの指紋捜査報告書」を開示するかどうかが問題であり「開示してきたら、記者会見も考えている」と明らかにした。また5月18日に東京高裁に反論書を提出していることを報告し、前回の「三者協議」で「犯行現場のルミノール反応検査報告」について「探したが無い」「捜査をしていない可能性が高い」とされたが、当時の鑑識課の技師へ聞き取りを行なった際に、雑木林と芋穴を調査したと本人が言っていたことや、当時の担当検事が公判部長宛てに出した報告書でこの技師と面会し「検査したが陰性だった」「記憶がはっきりしている」と報告していることなどをあげて、ルミノール反応検査が行なわれたことは明らかであり、検察官の言い分がすでに通らないことを主張したとした。また、スコップについて、斉藤鑑定人に実際に裁判所まで行ってもらい、スコップの写真撮影をして、必ず捜査当局は指紋の捜査をしているという意見書と同種のスコップを鑑定人自ら実験し、必ず鑑定可能な指紋が検出されるという実験報告書をそえて補充書を提出していることを報告し、「このスコップは捜査ですごく大切。すなわち被差別部落に捜査を集中していって四人の部落民を逮捕し、アリバイのはっきりしなかった石川さんが犯人に仕立てあげられていった。寺尾裁判長は十数冊の部落関係の本を読んでいるといいながら判決では部落問題に一切触れず、そして部落への予断と偏見の捜査はないと言い切った。スコップは石川氏が働いていた養豚場からこのスコップが盗まれてそれが死体を埋めるのに使われた、だから部落に捜査が集中した、だから合理的だと。だからこそ逆に、このスコップは部落差別問題を立証していて大切。指紋は必ずしも検出されるとは限らない、と判決では言ってるが、今の裁判は指紋が検出できるのにされなかった場合は、自白の信用性が疑われるというところまできている。検出されるとは限らないでは通らない」と批判した。さらに、このスコップに付着していた土壌が一致していることを根拠に捜査が行なわれたが、土壌が一致していないという鑑定書を第三次再審ですでに提出していることも述べ、スコップの重要性を明らかにした。そして、最後に「今日は桜井さんが来ていますが、再審の闘い、司法の闘いは全部つながっている。私たちはいろいろな闘いと連携しながらさらに大きな闘いを作っていく。狭山事件は動き出した。この動きをさらに強めていくということで一緒にがんばろう」と訴えた。

中北弁護人弁護団報告

 中北弁護人は、「前回の三者協議では小野瀬さんの鑑定書を出した。第7回『三者協議』ではこれをもとに補充書を出す予定。小野瀬鑑定は5月23日付け上申書、取り調べ過程で作られた石川さんの図面、そこに書かれているひらがなの文字、拘置所、警察での手紙など全てトータルに分析して石川さんの書く技術は確実に発展していってるという分析をしている」とした上で、「これまでの最高裁の決定などは、警察で書いた手紙は相当の字を書く能力を示している、それは逮捕前から持っている能力であった、だから脅迫状は書けるといってきた。上申書が下手に見えるのは緊張して、諸事条件が違ったからだと。これに対し小野瀬鑑定は全面的に非科学性を暴いてる」とした。そして石川氏が小学校や中学校で部落差別によって教育を受ける場をいかに取りあげられてきたか、また、勤務先や拘置所での職員の証言などをとりあげて、これが石川氏の書くことに関する証言といかに一致しているかを明らかにした。さらに、カバンの捜査報告に関する捜査報告書について、隠されているものをさらに出せと要求していること、関巡査が石川氏にカバンの「自白」をさせた際、録音していたテープを削除していることについて、なぜ削除したのか、本当に削除したのかその点についても検察官に解説を求めていることを報告した。そして、「検察庁は前回の協議では、布川・足利両事件を経てこれまでの頑なな方針を組織として見直しを進めていると言明していました。従来の方針を変えてより広く証拠開示をするようにさせていくことができるかどうかは皆さん方のがんばりにかかってくると思う。一気に日本の証拠開示問題の新たな地平を開くことができる。皆さんの力でどんどん証拠開示をさせていってください。がんばりましょう」と訴えた。

基調報告と特別報告

 部落解放同盟の松岡書記長から基調報告がなされる。「冤罪事件が次々と無罪を勝ちとっている。なぜ冤罪が作られるのか、まさに権力がその権力維持のために国民を犠牲にしていく出来事として、権力は冤罪を作るために様々なことをしている、狭山は部落差別を使ってきた。冤罪は明らかな国家権力による人権侵害である。国家権力による人権侵害を糾し、糾弾していく闘いであるということをしっかりと私たちはおさえていかなければならない。そのために狭山はどうすれば勝てるのかということを私たちは考えなければならない」とし、そして、「私たちに今出来るのは証拠の開示を求める、そのことによって石川一雄の無実を満天下に明らかにして再審の重い扉を開かせる。冤罪を糾していく、司法の民主化を進めていく、冤罪をつくるその温床に部落差別を利用してきた権力を糾していく」とした。基調提起で行動提起がなされたが、「証拠開示の新署名を行ない、それを請願署名として国家に証拠開示の法律を作らせる、年内を目標に署名を集約する」と提起している。石川氏は何度も「狭山事件は権力犯罪」と言い切っている。しかし、部落解放同盟内社民・こえ派は、国家権力によって部落差別に貫かれている狭山事件を国家にすがって「法」で解決させようと言う。まさに部落解放同盟内社民・こえ派にとって「糾す」=「国家にすがる」なのだ。部落解放同盟内社民・こえ派による、狭山闘争の幕引き策動を許してはならない。
 続いて特別報告として「布川事件再審無罪判決の教訓と証拠開示」と題して布川事件の桜井昌司氏と布川事件弁護団・佐藤米生弁護士から報告が行なわれた。佐藤弁護士は自身の経験から、「証拠開示は名称が一字違っても出してこない。これまで報告書や証言調書など膨大な記録があると思う。しっかり読み込んでいけば必ずまだ出ていない証拠が出てくる。繰り返しあきらめないで新証拠を出してほしい」と訴えた。次に連帯アピールとして、足利事件の菅谷利和氏、袴田事件の再審請求人・袴田ひで子さんと山崎俊樹弁護士からアピールが行なわれた。そして、まとめと閉会あいさつが行なわれ、最後に会場全体の団結ガンバローで集会が締めくくられた。
 翌日、7月13日の「三者協議」でどんな協議がされたか、いまだ記者会見もされていない。弁護団が「開示されたら記者会見をする」と言っていたにもかかわらず、していないと言うことは開示がされていないということだろう。どんなに密室化されようが、新たな裁判長の下で、虎視眈々と第三次棄却策動が目論まれていることが透けて見える。
 石川氏の怒りと無念をこめた闘う決意に何としても応えきっていかなければならない。〈差別裁判糾弾、階級裁判粉砕、国家権力糾弾・打倒〉の旗幟をさらに強く押し出し、階級的共同闘争、大衆的実力闘争・武装闘争で闘い、部落解放同盟内社民・こえ派の狭山闘争幕引き策動の中で苦闘する石川氏を激励し第三次再審闘争勝利、狭山闘争の歴史的勝利へと進撃しよう。