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「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」改悪案の成立強行弾劾
(1332号1面)

 安倍政府は、12月4日、公立学校の教師に「1年単位の変形労働時間制」を適用することなどを含む「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」改悪案を参院本会議で強行成立させた。「給特法」改悪案は、10月18日に閣議決定し、11月7日には衆院で審議入りを強行し、そして、わずか12日後には衆院本会議で可決し、11月19日に参院に送っていたものだ。

 「給特法」改悪案は、現在、「労働基準法」によって公務員には適用が禁止されている「1年単位の変形労働時間制」を公立学校の教師に適用することと、「教師の時間外労働時間の上限」を新たに定めることなどを目的にしている。「1年単位の変形労働時間制」の実際の運用について、文部科学省は、4月などの「繁忙期」に勤務時間を週3時間増やし、夏休みがある8月などを「閑散期」と強弁し、5日の休日取得と5日の年休取得で「10日間の休日まとめどりが出来る」なぞと吹聴している。しかし、学校現場では、毎日のように夜の11時や12時まで勤務が続く教師が多く、夏休みも部活動の指導や研修、来学期の準備のために休暇も取れずに働く教師が多い。「繁忙期」や「閑散期」という言い方は、学校現場で教師に強制されている過酷な長時間労働を隠蔽するものであり、「1年単位の変形労働時間制」の導入を強行するための詭弁でしかない。

 今回の「給特法」改悪案は、中央教育審議会(中教審)が、今年1月に出した「教員の働き方改革に関する答申」に明記された法制度面の改革の中心に位置付けられている。答申では、「児童生徒の教育活動をつかさどる教師の勤務態様としては、児童生徒が学校に登校して授業をはじめとする教育活動を行なう期間と、児童生徒が登校しない長期休業期間とでは、その繁閑の差が実際に存在している。このことから,地方公務員のうち教師については、地方公共団体の条例やそれに基づく規則等に基づき1年単位の変形労働時間制を適用することができるよう法制度上措置すべきである」としている。要するに、所定労働時間を8時間から10時間に延長すれば、「時間外労働を減らした」と「成果」を強弁できるという、「学校版『働き方改革』」のアリバイ作りを目的とした法案が「給特法」改悪案なのだ。また、「給特法」改悪案は、教員の残業の上限を「月45時間、年360時間」以内とする文部科学省のガイドラインを法律に格上げするとしている。

 しかし、「給特法」改悪案は、「学校版『働き方改革』」のアリバイ作りだけでは終わらない。この新制度をめぐっては、文科相・萩生田自身が「これを導入すること自体が日々の教師の業務や勤務時間を縮減するものではありません」と述べている。それにも関わらず、改悪を強行するのは、「労働基準法」が定める「8時間労働制」を解体し、教育労働者の階級的闘いを解体し尽くすことが狙いだからだ。「給特法」は、1970年初頭、教師の時間外労働が社会的な問題となる中で、「教育が特に教員の自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きいこと等を踏まえ、一般の行政事務に従事する職員と同様な時間的管理を行なうことは必ずしも適当ではなく、とりわけ超過勤務手当制度は、教員になじまない」という、教師の超過勤務を「自発的、自主的な活動」とする「教師聖職論」の下、1971年に制定された。「給特法」は、4パーセントの「教職調整額」と引き換えに、「労働基準法」の「超過勤務手当条項」を適用除外にした。学校現場では、この「給特法」を盾にして教育労働者に「定額働かせ放題」が強制されている。「給特法」そのものが廃止すべきものである。

 また、変形労働時間制は、資本が労働者の時間外労働に対する残業代を払わずに済ませるために導入しようとするものだ。「労働基準法」は、「労働者保護」の観点から、変形労働時間制の導入に当たっては、労使協定の締結を義務付け、労働基準監督署への届け出を義務付けている。ところが、今回の「給特法」改悪案は、労使協定を必要としない自治体の条例で変形労働時間制の導入を容認するものとなっている。使用者=自治体当局が、一方的に教師に変形労働時間制を強制することになるのだ。また、「教師の時間外労働の上限規制」も、「月45時間、年360時間」という上限を設定してるが、特例として月間100時間という「過労死ライン」を容認している。つまり、「上限規制」と言っても、教師の時間外労働は、「自主的な活動」として残業代も出ず、1ヵ月100時間もの「タダ働き」を法律で容認するというものであり、しかも、罰則規定もない「規制」なぞとは言えないシロモノなのだ。

 「給特法」改悪案は、今でも「過労死」、「過労自殺」、「退職」を強制されている教師にさらなる長時間の過酷労働を強制するものであり、「教師聖職論」を基調とする「給特法」で、ますます教育労働者の労働者性を否定し、労使協定もないまま労働条件の不利益変更を強制し、安倍が「働き方改革」で狙う「8時間労働制」解体から「労働基準法」解体に突き進むものだ。日教組本部は、「1年単位の変形労働時間制の導入」を「長時間労働を是正していく上で一定寄与するものである」なぞと賛美し、「給特法改正案を今国会で成立させる」と言い、安倍政府の尻押しをした。全教本部は、「4パーセントの調整額が教育労働の特性に見合うものとして維持されることは当然」と言い、「教師聖職論」に基づく「給特法」維持という反階級的な主張を行なっている。絶対に許してはならない。2021年改悪「給特法」の施行を粉砕せよ。