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11・4「討論集会 天皇代替わりと学校教育」が開催される
(1329号5面)

「1980年代以降、教育に対する国家統制が強まり、教職員組合の弱体化が進行している」



 11月4日午後1時から、日比谷図書文化館で、「都教委の暴走をとめよう!都教委包囲・首都圏ネット(包囲ネット)」が主催する「討論集会 11・4 天皇代替わりと学校教育」が60人の結集で開催された。この討論集会には、東京・山谷日雇労働組合や東京都地域連合労働組合が結集し、共に闘いぬいた。

 討論集会の冒頭、主催者からの「問題提起」として、「包囲ネット」の見城氏が、「現下の情勢の特徴の一つは、露骨な国益の衝突であり、そこから生まれるナショナリズムや排外主義、右翼の台頭、民主主義の危機、天皇制の復活・再生などについて認識を深めたい」「1980年代以降、教育に対する国家統制が強まり、教職員組合の弱体化が進行している。われわれは、今後どうあるべきか、何をすべきか、について考えていきたい」と討論集会の目的を提起した。

 次に、天皇代替わりをめぐった教育現場からの報告が行なわれた。

 「子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会」の伊賀氏は、「大阪市立泉尾北小での『天皇即位』児童朝礼」について報告した。大阪市立泉尾北小では、「日本会議」の副会長をなどをやった小田村四郎を父親に持つ小田村が、橋下や松井の「維新の会」が制度化した「民間人校長」に選考されて3年前に泉尾北小の校長に就いた。以降、小田村は、毎日生徒に「日の丸」の掲揚・後納をさせ、運動会では「君が代」を歌い、「日の丸」を生徒たちに掲揚させた。さらに、「伊勢神宮をのぞいては日本の歴史や文化、伝統を語れない」と、広島への修学旅行を伊勢神宮に変更している。連休明けの5月8日、小田村は、「天皇即位」児童朝礼で、即位するナルヒトを「126代目」と紹介した。さらに、「愛国の歌姫」なぞと呼ばれ、日本会議の「ありがとう自衛隊」キャンペーンに協力している山口采希を呼んだ。山口采希は、「森友学園問題」で注目された塚本幼稚園で、「教育勅語」の現代語訳を歌詞にした曲を歌った輩だ。泉尾北小の「天皇即位」児童朝礼では、オリジナル曲である「行くぞ!日の丸」、「令和の時代」、「神武天皇」、「仁徳天皇」などを歌い、教育勅語児童読本・「民のかまど」について語った。小田村は、「寺子屋だより」という雑誌で、「教師に『新元号記念朝礼』をやるからと前もって予告しておきました。本来であれば『天皇ご即位記念』と言うべきであったのでしょうが、事前に騒がれるとつぶされるので、そこは戦略であり、当然『山口采希』の来校のことも伏せておきました」なぞと自慢している。これに対して、伊賀氏たちが大阪市教委に対して抗議するが、大阪市教委は、「『第126代』は、宮内庁が公表している天皇系列図に記載されている」「文部科学省通知、学習指導要領に逸脱するものではない」と回答しており、伊賀氏たちは大阪市教委との再交渉を行なう予定であることを報告した。

「4月23日、天皇アキヒトが『武蔵陵昭和天皇陵(昭和天皇墓地)』に来た際に、浅川小、第二小、横山第二小の生徒を『奉迎』に動員した」

 「『天皇奉迎』に子どもを動員することに反対する八王子市民の会(八王子市民の会)」のMさんが、4月23日、天皇アキヒトが「武蔵陵昭和天皇陵(昭和天皇墓地)」に来た際に、浅川小、第二小、横山第二小の生徒を沿道に立たせ、「奉迎」に動員した問題について報告した。Mさんは、事態を知ったのが5月末であり、教職員組合の弱体化によって学校で何が起きているのかも掴みにくくなっている状況を明らかにした。Mさんたちの追及に対して八王子市教委は、「『奉迎』への生徒の参加は、学校の判断で決めた。市教委はあくまで情報提供をしただけ」「沿道に立つように市教委は言っていない」と回答したという。市教委が4月23日に甲州街道沿道の学校(第二小、横山第二小、陵南中)に送ったメールは、「天皇皇后両陛下 武蔵陵昭和天皇山陵に親謁の儀に伴う八王子奉迎(沿道お迎え)対応について」というタイトルで、本文では「学校用の旗が70本事前に準備されている」「沿道に出ると警察等の方から指示があるとのことですので、そちらに従ってくださいますようお願いします」と書かれ、各学校に参加の可否、参加の場合の人数、小旗の希望を回答するよう要求している。さらに、八王子の町会連合会を主体に結成された「八王子奉迎会実行委員会」は、9月の内閣改造で文部科学相に就任した萩生田が自分の地元・八王子で組織したことが明らかになっている。「『八王子市民の会』は、皇民化教育をやめさせるために、継続して行動を続ける」とMさんは報告を結んだ。

 「小学校現場からの報告」では、退職して非常勤で働いている佐藤さんが、「教育内容の問題」として、「教育が『スタンダード』という名のマニュアルによって、誰がやっても同じ画一化されたものになってきている」「例えば、あいさつの仕方、授業中の手の上げ方まで強制している」「文学よりも説明書(マニュアル)が読めるようにと言って、文学、芸術を軽視するようになっている」「教育現場に『○○教育』などと言って企業が入り込んでいる」「オリンピック・パラリンピック教育と『観戦チケット』が強制されている」ことが報告された。

「『日の丸』を揚げていない家は『非国民』と言われるようになる。教育勅語とオサラバすることが必要だ」

 次に、「教育制度の問題」として、「多摩教組」書記長であり「東京教組」副委員長である小田さんが、「1989年の『初任者研修』導入、2003年の『10・23通達』などの教員対策や、『道徳の公開授業』の強化、『学校運営協議会』の設置、『教員免許更新制』などによって、教員への締め付けが格段に強化され、特に若い教員への締め付けが強まっている。パワハラ問題が組合に報告されていて、組合の必要性が大きい」「改悪された制度がボディブローのように効いている。それが特別支援学校ではイジメとして出ている」と報告した。

 「高校現場からの報告」では、「包囲ネット」の伏見さんが、「40年前の『都高教』の組織率は、9割を超えていた。しかし、進学校では、組合で決定したストライキをやらずに『やった』と組合に報告していた。都教委は、1998年の『あり方検討会』以降、学校を徹底的に調べ、その総仕上げとして2003年の『10・23通達』を発令した」「今、職場では、『天皇の問題は触れずにおこう』という意識が強く、自衛隊が参加する防災訓練が強行されても、危機感は薄い。生徒の就職の掲示板には自衛隊のポスターが堂々と貼ってある。教職員の労働組合に頼っていてもダメだと思う」という報告が行なわれた。

 続いて、1925年生まれの北村小夜氏が、「教育勅語 大嘗祭の奥義 修身」と題する講演を行なった。北村氏は「とうとうここまで来たかと感じる。明治以前に生まれた父母は『天皇はこないだ始まったばかりだ』と言っていた」と講演を始め、「教育勅語体制はそのままで、おさらばはしていない」と語り、「教育勅語の跋扈」というタイトルがつけられた多数の資料をもとに、戦前行なわれていた様々のことを説明した。その中には、「大日本国旗協会関西支部」発行の「国旗尊重 日の丸精神高揚」と題する文章が、「一、国旗掲揚は午前7時家族揃って揚げませう」なぞと書かれていたことも紹介した。北村氏は、「そのうちこのような回覧板が回ってくるようになり、『日の丸』を揚げていない家は『非国民』と言われるようになる。教育勅語とオサラバすることが必要だ」と講演を締めくくった。

 その後、主催者の問題提起と報告を踏まえた質疑討論が行なわれた。

 最後に主催者として見城氏が、「情勢は私たちにとって厳しいが、それは私たちの側の力が弱い結果である。私たちの力はどうすれば強くすることが出来るのかを、考えていくことが重要な課題だ。その中で、教育現場が権力や支配階級の攻撃を一番受けていて、また、日教組が闘わない状態なので、組合を強化し、職場から闘いを作りだせるように組合内部の闘いと、外部からの支援を結合した取り組みが必要だ」と討論集会のまとめを行ない、集会を終了していった。